2010年3月19日金曜日

治郎八に憧れて

前回は、歴史の中のパトロンを書こうとして話が逸れてしまった。龍馬伝のなかでも今後出てくる「大浦慶」がそういう役まわりだ。

大浦慶は茶の輸出で成功した女性の大富豪であり、幕末の志士たちを援助したことで知られる。龍馬との関係も濃かったようだが、今回の大河ドラマで誰が演じるかはまだ発表されていない。

「富豪記者」を名乗る以上、タニマチとかパトロンには興味がある。銀座あたりで有名人を引き連れて嬉しそうに呑んでいる御仁を見かけることがあるが、あれはあれで憧れる人も多いのだろう。

私の場合、芸能関係より芸術関係でスポンサーを気取れるようになってみたい。そう書くと何かスカしてるみたいだが、単純に陶芸家のタニマチになってみたい。

以前から器が好きなのだが、作るよりも集める方に関心がある。陶芸家が年齢を経るごとに作風が変わっていくのを追体験したり、作り手の人柄が滲み出るような作品を探すのが楽しい。

若い陶芸家を長年にわたって支援したらきっと面白いと思う。人間の定点観測みたいだ。作風の変化をあれこれ指摘しながら濃い付き合いをしてみたい。ときには珍味をぶら下げて工房を訪ねて、手捻りなんかを指導してもらう。いい感じだ。

ついでにカウンター割烹とかお寿司屋さんのスポンサーになって、店の器を仕切るのも楽しそうだ。料理あっての器だ。珍味用の小鉢とかに妙にこだわった店が出来そうだ。

ついでのついでに言えば、酒蔵のスポンサーにもなって、店の料理や器にバッチリの酒を仕込ませる。

ついでのついでのついでに言えば、和服姿の凛々しい艶っぽい女将のスポンサーになって店を切り盛りしてもらう。

もっとついでにいえば、無口で2枚目の板前と怪しい雰囲気になってしまう女将に嫉妬の炎を燃やしてイジイジしてみたい。

キリがない。おまけに実に陳腐な発想だ。我ながら情けない。文化・芸術に資するという高邁な思想がまるで欠落している。反省。

パトロン業界?のなかで鳴く子も黙る伝説の存在が「バロン薩摩」だろう。フランス社交界で爵位もないのにバロンと呼ばれたスーパー浪費家だ。

薩摩治郎八。20世紀前半に放蕩の限りをつくした御仁で、18歳の時のフランス留学時、1ヶ月の仕送りが現在の価値にして1億円だったというスケール。

その後、パリの豪邸を拠点に華々しく浪費活動を展開、ヨーロッパ社交界で勇名をとどろかす。

遊びまくる一方で、外務省が資金不足で出資しなかった留学生の宿泊研修施設をパリに自前で建設。元老・西園寺公望の要請に応えたというお大尽ぶり。

文化・芸術支援にはとくに莫大な資材をつぎ込み、画家の藤田嗣治のパトロンであったことは有名。その一方で気に入らない芸術家には一銭も出さないこだわりも徹底していたとか。

終戦後、没落するものの、豊富な人脈を活かしてひょうひょうと暮らしたらしい。

晩年がまたいい。見そめたストリッパーと徳島に阿波踊りを見に行って、脳溢血で倒れ、そのまま親子ほど年の離れた彼女と貧乏暮らし。

現在の価値で600億円ものカネを一代で使い切ったとも言われる。晩年に受けたマスコミ取材でも、大散財について実にあっけらかんとしていたらしい。

歴史上の人物のうち、誰になりたいかと聞かれれば、私は迷わず「薩摩治郎八」と応える。

信長や秀吉、家康あたりは気苦労が絶えないだろうし、明治維新の元勲も何かと大変そうだ。殺されちゃったりする。

やはり治郎八になりたい。

そんな考えでいいのだろうか・・・。

2 件のコメント:

  1. いつもおもしろいですね~。
    妄想がどんどん外れていくところが、富豪記者さんらしくてとても笑えました。
    1ヶ月に1億円。わたしならきっと50万くらい残して全部貯金すると思います。豪快に使えるのも一種の才能ですね。

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  2. 悶々さま

    お誉めいただき恐縮です!
    おっしゃる通り、けた違いの浪費は
    一種の才能だと真面目に思います。

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