東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2010年11月15日月曜日
旅館の時間
旅先の宿選びにはいつも悩む。とくに温泉宿となると苦悩状態になる。大衆旅館でも壮大なスケールの露天風呂があれば行きたくなるし、極上の高級割烹旅館でも大浴場が小さいと魅力は半減する。
先日、伊香保温泉に行く機会があった。評判の高い老舗旅館「福一」にするか、大型の「ホテル木暮」にするかで悩む。その他にも良い宿はあるが、サウニストとしてはサウナがないとダメ。
福一は料理の水準も良く全体的にサービスも上等、木暮はとにかく大浴場のスケールが抜きんでている。
結局、ひんやりとした秋風のせいで、巨大露天風呂を目当てに木暮を選ぶ。
サウナも大きく、茶褐色のにごり湯が溢れる巨大露天風呂も快適。その他にも趣向を凝らした浴槽がいくつもあり弛緩するにはもってこいだ。
この旅館が一流になれない点は、何といってもサービス面だろう。“行きはよいよい、帰りはなんとやら”が大きなマイナス。
朝の大浴場は9時半にキッチリおしまい。大浴場行きのエレベーターさえスパッと止まる。大きな湯上がりフロアも朝は営業していない。電気まで消えている。
おまけにチェックアウト後にクルマまで荷物を運ぶ手伝いもいっさい無し。うやうやしく迎えておいて、帰る時はとっとと帰りやがれ的なダメダメぶりだ。
場所柄たいした料理はないが、味付けやメニューに趣向を凝らし、朝食も丁寧に作っている。何より風呂は最高で、館内の清潔感もOK。それでも最後の最後の肝心なところが失格。ピンボケだ。
俗に一流といわれる旅館を思い返してみると、朝起きてからチェックアウトするまでの流れにゆったりとした余裕がある。当たり前のことだが、これができていない宿が多い。
話を戻す。温泉宿の規模について。いわゆる隠れ家系がいいのか、大型旅館がいいのか、この点は大きな問題だ。
女性雑誌がこぞって取り上げるような旅館はたいていがシッポリお籠もり系の高級旅館。規模が小さいせいで手の込んだもてなしが受けられるが、どうもラブホテル代わりに使う不倫カップル用というイメージも少なからずあるように思える。
確かに熱い関係の二人ならジイサンバアサンの団体やうるさい小僧どもがいない宿を選ぶ。そういう宿に家族連れや一人旅で行くと実に落ち着かない。
大浴場も部屋数に比例して小さく、「さっさと部屋にこもって交尾でもしてろ」と諭されているような気がする。
巨大旅館のアホみたいにだだっ広い大浴場でサウナを使いながら2時間ぐらい平気でスッポンポンで喜んでいる私にとっては隠れ家系のあの感じは苦手だ。でも宿全体の凛とした空気や質感、料理の水準を考えるとついつい行きたくなる。
実例を出して恐縮だが、北海道・登別のスーパー巨大温泉「第一滝本館」あたりはその対極だろう。どうしてこうもマズく調理できるのかというレベルの大皿おざなりバイキングに遭遇する。ビックリする。宿の動線も滅茶苦茶だしセンスも物凄い。
誉める点がまるでないようだが、大浴場はスペシャルパラダイスだ。だからついつい行く気になってしまう。
結局、どっちにも行きたいわけだ。
テーマパークみたいな巨大浴場がある宿は必然的に大衆路線なので宿泊料は安い。ところが、団体様大歓迎体質なので、一人旅を受付けていない所も多い。部屋数が多いのにバカみたいだ。
そういう時にどうしたらいいか?答えは単純。「2名宿泊」で予約を入れれば済む。いざ宿泊当日、同行者が死んだとか病気になったといってチェックインすればよい。交渉次第で2名分の料金は取られず、1名分料金の5割増しぐらいで話がつくこともある。
そんな交渉がイヤなら、夕食抜きの宿泊プランとかで予約しておけば、2名分料金でもたかが知れている。
そんなセコびっちなことをしてでも、巨大風呂の楽しみは捨てがたい。ただ、まともな高級旅館で割高な料金を払って、ひとりしっぽり部屋にこもって一品一品運ばれる食事を味わうのもオツだ。ちょっとした富豪気分に浸れる。
何年か前になるが、いろいろなことが重なり思うところあって、家を出て数ヶ月だけ都内を転々としていたことがある。
夜逃げではない。
一応、職場にはちゃんと通ったが、週末はほとんどアチコチの温泉宿に居た。テンションが低かったせいで賑やかな大型旅館は敬遠し、シッポリ系の宿ばかり選んだ。
iPodと雑誌を相棒に片方の耳だけにイヤホンを差し込んで、部屋で黙々と食べて飲んで過ごした。客との距離感を上手に計るまっとうな仲居さんがいる旅館は実に有難かった。癒された気がした。お金もかかった。
そういうズンドコ、いやドンゾコぶっていた気持ちが吹っ切れ、普通の日常に戻ったあと、しばらくして大型旅館に遊びに行った。
ドヒャーとしたアホみたいな規模の大浴場につかり、これはこれで最高だとしみじみ感じた思い出がある。
結局、どういう路線の宿だろうと、それぞれの持ち味があり、同行者の有無、同行者との間柄など状況に応じて選択すればいい。
なんか当たり前の結論になってしまった。すいません。
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