2011年1月31日月曜日

実は大ごと「相続税」

今日は少しマジメな話。仕事関係の知り合いと話をすると、最近は相続税が話題にのぼることが多い。今国会で成立予定の税制改正案では相続税がガツンと増税されたが、その影響度が意外に大きいという話だ。

表面的には基礎控除が3割引下げられたことがポイントで、一般紙などのメディア報道も深い部分までは掘り下げていない。

基礎控除の引下げだけでは、確かに大きな影響がないという見方も出来るが、実際には細かい優遇規程がアレコレと厳しく見直されたため、思いがけずに相続税の洗礼を受ける人が激増することは確実だ。

都内に豪邸とは言えないまでも、そこそこの自宅を構え、お年寄りの平均的な貯蓄があるぐらいで充分にターゲットになる。

このぐらいの階層の人だと、まさか自分には相続税はかからないだろうという先入観があるため、今回の大増税に関心が薄い。制度改正後、実際に資産家とはほど遠い人にも続々と相続税がかかる実態が明らかになって始めて慌てる人が増えそうだ。

そこそこの自宅については、「小規模宅地の評価減」という制度によって、大幅に資産価値を割り引いてくれるのが通例だ。

更地なら8千万円で評価される土地でも、居住用に使っていれば評価額を80%オフの1600万円の価値にみなしてくれるといった仕組みだ。

世の中の多くの人が同制度によって相続税の対象から外れていたのがこれまでの現実だが、今後は同特例の適用条件がグッと厳しくなる。

詳細は省くが、やれ息子が独立して自分の家を持っていたらダメだとか、息子と生計を一つにしていなければイカンだとか、随分と細かい制限がついた。8割引だったものが“定価”になっちゃったら、ものすごく遺産額がふくれあがる。この辺は一般メディアの報道からは気付かれないことが多い。

生命保険の保険金についても相続人一人につき無条件で500万円までは非課税枠があったが、これにも制限がついた。

基礎控除見直し以外の「枝葉」のような特例や優遇措置のシバリが広範囲に及んでいるため、トータルでは大増税と表現できる。にもかかわらず、世の中の危機感はまだまだ盛り上がっていないわけだから、政策立案当局である財務省としてはしてやったりといった感じかも知れない。

もともと自民党政権時代から、総論では「相続税がかかる人が少なすぎる。もっとターゲットを広めよう」という方向性は固まっており、民主党も野党・自民党が反対しない増税策である以上、この総論を躊躇無く引き継いだ。

こういう政治の流れがある以上、そりゃあ財務省はやりやすい。富裕層と呼べないような階層の人からも相続税をしっかり吸い上げる改正案を作って、スムーズに法案化にこぎ着けたわけだ。

官僚制社会主義と呼ばれるわが国の古い体質が、左寄りの民主党政権と混ざり合って今回の「小金持ちイジメ」につながった格好だ。

ひっそりドカンと相続税が大増税になることで、今後、どっと啓発本、解説本なんかが世の中に溢れるはずだ。ただ、ここまで書いてきた通り、専門家以外の人にはイマイチ実感が湧かない現実がある以上、一気に一大ムーブメントになっていくとも思えない。

税務関係のメディアを経営する立場としては、一連の流れで商売的に潤ってくれればいいのだが、そんなこんなでそうなりそうにないことが面白くない。

いやいや、そんな悲観せずに前向きにあれこれ考えないといけない。

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