久しぶりに一人で長々とドライブをした。もう10年以上もそんなことをした記憶がない。いろいろイライラしていたある日、日帰り温泉にでも行こうとハンドルを握った。温泉気分はどこへやら、なぜかカッ飛びモードになって高速に乗って走り続けた。
温泉にも行ったが、結局ドライブ中心の時間だった。クルマの運転がストレス解消法という人がいるが、分かる気がした。
20代の頃はよく一人でドライブしていた。暇人だったから昼寝のせいで夜更けに目が冴える。仕方なく朝焼けを見に出かけたり、目的もなく高速を走ったりしていた。
その後、年齢を重ねるに連れ、助手席に誰かを乗せないと退屈するようになった。いや、そんな理由ではなく、アルコール中心の生活になったことで運転する機会が減った。
この日のドライブは、午後から夜にかけて結構な時間を愛車で過ごした。思えば、昨年クルマを変えて以来、こんなに長く一人でこのクルマと向き合ったことがなかった。
ひとりでガンガン走ってみると、愛車の性能に萌え~って感じになった。全体の質感、エンジンの力強さ、加速、制動力、コーナーリングの安定感など、全体に大したもんだと今更ながら感じた。
とかいいながら、クルマの性能を噛みしめていたのは少しの時間で、あとは葉巻を吹かしながら大声で歌ってばかりだった。
さすがに葉巻の香りが染みついちゃうのはイヤなので、窓は全開。寒いし、うるさいし、カーオーディオに合わせて歌う声は大声になった。叫んでいたような状態だ。
スッキリした。
ハマショーを叫ぶのに飽きたので、永ちゃんの「アイ・ラブ・ユー,OK」をうなったり、加山雄三をスカして歌ったり、ブルーハーツを吠えたり、誰にも聞かれないのをいいことに熱唱。
そのうち、演歌モードに突入。五木ひろしの「待っている女」、細川たかしの「望郷じょんから」とか、高山巌の「心凍らせて」なんかを歌う。
それにしても「心凍らせて」は名曲だ。
♪心凍らせて 愛を凍らせて
今がどこへも行かないように♪
何度も熱唱した。どう見ても間抜けな姿だったと思う。
話がそれた。
この季節、日が暮れるのが早いから、あっという間にトワイライトタイム。昼が名残り惜しそうに、夜が待ちきれないように攻めぎあう時間だ。
日没後のわずかな時間。黄昏のひととき。こういう時間帯に人の精神性は研ぎ澄まされるのだろうか。様々な悩みや想いが浮かんでは消えていく。
結論なんて出ないから結局は、♪こころ、こおら~せて~~♪とか熱唱しながらアクセルを踏み続けた。
この日は、秋川渓谷・十里木にある日帰り温泉に行って、混雑ぶりに辟易として、埼玉・狭山近辺にある温泉施設に行き直した。
当たり前だが、クルマでの移動は臨機応変にスケジュールを組めるのが便利だ。
アルコール漬けの身体になる前までは、結構なクルマ好きだった私だ。もともと、ドライブは好きなほうだった。
大学生の時は、陸路、北海道まで丸一日ひとりきりで運転したこともある。夜遅く、青森側から青函連絡船にクルマごと乗り込み、運転席で爆睡して函館に到着した。
その後、クルマでも寝泊まりしながら1週間かけて北海道の外周を回ってきた。楽しい思い出だ。
ちなみに現在の愛車は英国車。英国好きでもなんでもないのにおかしな話だが、輸入車の個性、輸入車の哲学みたいな部分に惹かれる。
ドイツ車を中心にイタリア車にも乗ってきた。それぞれが哲学というか、確固としたアイデンティティを持っている点に惹かれる。
「走れば何でもいい」。それも道理だが、「何事にもこだわりを持った大人」を演じ続けたい私?にとっては、やはりミニバンとかプリウスは敬遠したい(ファンの人、スイマセン)。
あと20年ぐらいしたら、きっと喜んで軽のミニバンを愛用すると思うが、まだまだその世界には背を向けていようと思う。
上質な欧州車が持つ官能的な空気は、やはり、単なる道具と割り切って作られたクルマとは異なる。エロティックな喜びを与えてくれる。
いきなりデータを出して恐縮だが、輸入車の新規登録台数は1996年に40万台に達したが、その後は減少し、2000年代には25万台前後になり、2009年には17万台にまで急降下。ピーク時の半分以下だ。
このあたりにも不況の影響がくっきり出ているが、その分、この国のドライバーから「浪漫」が減っていったという見方も出来る。ちょっと寂しい話だ。
とかいいながら、私自身、めっきり運転する場面が減っているのも確かだ。箱根や熱海あたりですら、電車で行きたがる。もっとクルマでの移動を見直してみたい。
最近は、昔ほど渋滞にはまることもなくなった。せっかくエコとかハイブリッドに背を向けたようなクルマに乗っているのだから、バンバンかっ飛んでいこうと思う。
この秋は少し酒を我慢して、もっとドライブに励もうか。
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