用事が無くても止まり木に立ち寄ることは大事だろう。職場と家の単純往復から文化や芸術、ましてや色恋?は生まれない。
同僚や友とわいわいしたり、異性としっぽりも嬉しいが、時にはひとりポツンと日常の様々を逡巡するのも悪くない。
そんな時は寿司屋のカウンターだ。随分断定的だが、先日、寿司屋のカウンターでそう思ったのだから仕方ない。
ひとりでバーでチビチビも良いが、あまりに変化のない時間の流れのせいで、つい携帯メールをチェックしたり、Facebookをいじりだしたり、結局わさわさしてしまう。
あくまで私の場合の話だ。
先日、良く行く高田馬場・鮨源でボーっと飲み食いした。ちょっと気分が上がっていかない日だった。何となく止まり木みたいな感じで訪問。
私にとって基本パターンみたいな注文の仕方をした。正しく不健康な酒飲みのオーダーだ。不健康といっても、もっとヤバいシリーズに没頭する時もあるから、この日は大したことはない。
お燗酒を飲みたい気分の時には、この程度の不健康は健康的な範囲だろう。よく分かんない表現になってしまった。
極上の本マグロの赤身と軽く酢締めされたサバを肴にアルコールタイムスタート。
やはり、鉄分の香りが芳醇なしっとり赤身は刺身界のスーパースターだろう。長島よりも王って感じだ。ノーラン・ライアンではなくグレッグ・マダックスという感じだろうか。
サバにはバッテラに使うような甘めの昆布もトッピング?してもらった。
アンキモ様がくれば、どうしたってビールから燗酒に移行。日本の冬よ、ありがとうって言いたくなる味わいだ。
メジマグロのトロっとした部分を辛味大根とともに味わう。これまた燗酒と混ざり合って、早々に気分が良くなる。
熱めの燗酒が喉を通りすぎていく瞬間が大好きだ。まさに快感だろう。ウィーとかオォーとかその手の音を発声したくなる。
アンキモに飽きたらず、白子も頼んだ。ポン酢が優しい味だから、白子のクリーミーエロティックな味が引き立つ。
なんかグジュベロ系?の肴が続いたので、カキを注文する。この日は、吸い物風に仕上げてもらった。薬味無し。ただただカキの風味を堪能する。厚岸のカキだとか。味が濃くて嬉しい。風味の弱すぎるカキが最近は出回りすぎだと思う。
この日は空腹ではなかったので、つまみはこの程度でやめた。普段は、今まで書いたようなラインナップに加えて、岩塩をパラっと降ってもらった純粋な生ウニを頼んだり、馬刺しや穴子の白焼きをもらったり、串に刺したウナギを一本焼いてもらったり、揚げ物を頼んだりしてウダウダする。
そうなると飲みすぎる。この日は、なんとなくボーッとしていた日だったので、適当に握り方面に舵を切った。
あまりにも赤身がウマかったので、素直に鉄火巻にしてもらう。鉄火巻といえば、どうでもいいマグロの赤身を使うのが普通だから、日本全国の寿司業界でスターの座に座ることはない。下っぱのような位置付け。
とはいえ、それをあえて極上本マグロで作ってもらうと、さすがに別モノになる。正しい赤身には正しい酸味とか旨味がつまっている。だからフムフムうなってしまうような鉄火巻が出来る。
まもなくシーズンが終わる生のいくらも握りで食べた。握りといっても、軍艦にせずに、シャリの上にドッサリぶっかけてもらった。悦楽のひととき。
まっとうなツマミにまっとうな握りを食べて、正しく酔っぱらってきた私は、結局、邪道モノもついつい頼んでしまう。
上はツナ軍艦。回転寿司ではノーマルメニューだろうが、高級寿司の世界では異端児。この店でも、もともとそんなメニューは無かったのだが、突出し用に作られている本マグロベースの極上ツナが、時にシャリを伴って私を幸福にする。
本当に美味しいと思う。ここ1,2年、この店の客の間でツナ軍艦ファンが着実に増えているのは疑いようのない事実だ。
そして焼おにぎりだ。邪道というか、上質なネタを揃えている寿司屋に対して失礼な注文ではある。おまけに、シャリに少しおかかをまぶしてくれだの、ゴマを少々とか余計なお願いをしたりする。
酔ってないと頼めない食べ物かも知れない。でもこれがウマい。シメにふさわしい。べったら漬なんかをかじりながらモグモグするのが最高だ。きっとどんぶりサイズでもぺろっと食べられると思う。
この日、食べ過ぎず、飲みすぎず、快適な気分で過ごせた。ウマイものをしこたま食べようと意気込んで出かけた時よりも、止まり木に立ち寄るぐらいの感覚で訪ねた方が快適な時間が過ごせる。
のどかな時間だった。
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