2012年5月25日金曜日

バリ島が呼んでいる

「本当の故郷とは生まれ育った場所とは限らない。本当の故郷を見つけられた人は幸せだ」。

開高健の言葉だ。

カッチョ良く書いてみたが、先日、Facebookで母校の後輩から教わった言葉の受け売りだ。

生まれ育った場所以外に、私が心を揺さぶられるのはバリ島だ。かれこれ10回以上出かけただろうか。とにかく惹かれる。身体の奥底にある根っこのような魂が呼び寄せられる感じだ。


ゴールデンウィークが終わったあたりから、どうもバリ島が私を呼んでいる。また行かねばなるまい。そう遠くないうちに「渡バリ」する予定だ。

ざっと数えただけで、ちょろっと寄ったところを含めればこれまでの人生のうちに40ぐらいの国や地域に出かけてきた。

その中でどこが一番好きかと言われたら迷わずバリ島を選ぶ。理屈抜きに好きなんだからしょうがない。

初めて行ったのは20年近く前になる。インドネシアのメナドへの潜水旅行の際、トランジットでバリに立ち寄った。1泊しかない日程の中で、伝統舞踊を見たり工芸の村を訪ねて、文化の奥深さ、芸術的感性の高さに感動した。

その後、頻繁にバリ各地に潜りに出かけるようになったのだが、旅の後半の1~2日は海とは無縁の観光に励むようになった。

最近では、日程の半分ぐらいを潜水以外に費やすようになった。島中至るところにある古い寺院を訪ねたり、ライステラスの景色をボーと眺めたり、小洒落たリゾートのバレブンゴン(東屋)でホゲホゲしたり、陸の風景をカメラに収めて喜んでいる。今日の画像は2年前に行った時に撮影したもの。クリックすると大きなサイズで見られます。


あちらの言葉で散歩のことを「ジャランジャラン」と言う。カメラ片手にジャランジャランしている時間がとても好きだ。絵になる光景にすぐに出会える。

香りというか、匂いがまた良い。プルメリアのさりげなく甘い香り、そこここに置かれた神様へのお供え物に添えられたコメの匂い、ふっと漂ってくるお香の匂いなどなど。どこかから聞こえてくるガムランの音色と混ざり合って、心地よいバリ・トランスに陥る。

ホテル選びの楽しさもバリの魅力だ。ブルガリリゾートとかセントレジスを筆頭に世界最高レベルのリゾートが点在する一方で、プライベートプールが付いた隠れ家ヴィラや、地元様式に則った妖怪が出て来そうなディープな宿もゴロゴロある。選びきれないほどだ。

数十年単位の歴史を持つ老舗リゾートであれば、いい感じに苔むした庭が何とも言えないバリ情緒を醸し出す。

リソートの見本市みたいな場所だと思う。


バリ島南部のメインリゾートエリアで充分に楽しめるが、少し移動すれば違った魅力に溢れている。郊外に行けば行くほど自然は濃密になり、バリっぽさも濃厚になる。

郊外で過ごす夜の時間は、夜空に浮かぶ星の群れに圧倒される。綺麗と言うよりグチャグチャと表現する方が的確なぐらいだ。

以前、空港から3時間近くクルマで移動したリゾートで、施設の灯りを一時的にすべて消してゲスト全員で星空ウォッチングをしたことがある。

周辺に民家なども無く、そのリゾートが灯りを消せば正真正銘の夜の闇に包まれる。地べたに寝ころんで空を見上げていたら、天空に吸い寄せられそうな幽体離脱みたいな不思議な感じを味わえた。

星空だけでなく、私が心惹かれるのはバリの月だ。バリムーンなどと言うと、怪しいインドネシア料理屋のまずそうなカクテルみたいだが、夜の散策では必ず月を探す。

砂浜に腰をおろして、ボーッと波の音を聞きながら海を照らす月を見ていると、それだけで「解脱」だ。水面に揺れる月の明かりが日常の煩わしさを束の間消してくれる。月光浴によって自分の五感がリフレッシュされ、すべての感度が上がる気がする。


一般的にイメージされる南国リゾート特有の底抜けに明るい穏やかな空気とは微妙に違う「気」に満ちている点がバリの特徴だ。そこに惹かれた人は徹底的にはまることになる。

神々の島と呼ばれる場所だけのことはある。月の明かりも夕焼けの輝き具合もどこかスピリチュアルな雰囲気を漂わす。

夕陽鑑賞スポットにしてもバリの場合は、寺院が背景に欠かせないから独特な情緒を伴う。南部のウルワツ、中西部のタナロットが2大スポットだが、それぞれ素晴らしいサンセットショーを目に焼き付けることが出来る。

いずれも夕陽の中に神を見た大昔の高僧が造った寺院だ。どこか神秘的で荘厳な感じに包まれる。


今度行く時は、潜水は2,3日にして、その後は、山側のウブドでディープな宿にこもったり、隠れ家ヴィラでしっぽりする時間も確保する予定だ。

行くたびに刺激をくれる神々の島、次はどんな啓示を与えてくれるのだろうか。

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