2012年6月4日月曜日

紫陽花のうた

6月だ。水無月のほかに、風待月、松風月といった風流な呼び方もあるらしい。

最近、月初めになると去年の今頃は何をしていたのだろうと振り返ることが多い。自分が少しは進歩したのか確かめたい気持ちがあるのだろう。

昨年の6月頃は、スカイツリー特需で騒々しくなる前の静かでシュールな浅草をぶらついたり、印象派の絵画展を見に行ったり、7月に出かけたフランス旅行の下調べに没頭したり、日々、幸福な時間を求めて過ごしていた。

今年の6月のことは、来年になったらどんな思い出になっているのだろうか。

さて、6月といえば紫陽花だろう。雨が香る季節には欠かせない存在だ。

季節を強く感じさせてくれる花といえば、初春の梅、盛春の桜、夏の向日葵、秋の金木犀などさまざまだが、梅雨時の紫陽花も魅力的だ。

小さな花の寄り集まりが絶妙な色彩のグラデーションとなって、淡い色合いの極めて日本的な美しさを見せる。

ひとつひとつの花は地味な存在だが、集まることで優雅な雰囲気を漂わす。

若い頃には見向きもしなかったが、大人になってからは切なげな美しさに惹かれる。

雨に打たれる姿があれほど似合う花は他に無い。雨に耐えながらも凛とした存在感を失わない。低い場所に咲いているけなげな感じもまたいい。

華やかなのに奥ゆかしい風情がある。女性だったら最高だ。そんな人には一生ついていきたい。いや、ついてこいと言ってみたい。

そうはいっても、なぜか紫陽花の花言葉は「移り気」とか「高慢」とか嬉しくないものばかり。そんな女性だったらイヤだ。

今日は風流に書き進もうと思ったのにどうしてそっちに行っちゃうんだろう・・・。

軌道修正。

紫陽花の名所といえば、鎌倉周辺だ。毎年のように行こう行こうと思っているのだが、実は一度も訪ねたことがない。

映画「寅さん」でいしだあゆみ演じる薄幸の美女とあじさい寺で待ち合わせをした寅さんが、照れ隠しに甥の満男を連れていってしまい、ムードをぶち壊すシーンがあった。やはり、あじさいの寺を訪ねるときは、太った女性より、痩せた女性と一緒の方が好ましい。

話が飛んだ。

風雅の人である私?としたことが鎌倉の紫陽花を見に行っていないのは実に情けない話だ。今年こそは、そぼ降る雨の中、人の少ない平日の夕方当たりに訪ねようと思う。

私が崇拝する浜田省吾に「紫陽花のうた」という名曲がある。もう15年ぐらい前に発表された曲だ。

当初は、さほど好きな楽曲ではなかったが、このところしょっちゅう口ずさんでいる。

はじめて聞いて以来、15回ほど紫陽花の季節がめぐってきた。それだけの時間が経てば自分の置かれた状況や思い、考え方も随分変化する。人生の中でもこの15年は特に大きな意味を持つ気がする。いろいろ凝縮されている。死期が迫った時に走馬灯のように思い出すのはこの15年の出来事が中心だろう。

「紫陽花のうた」に話を戻す。長い年月、特定の曲を聴き続けていると、ふとした時に身体に染みこむ時がある。歌の世界観にすぽっとはまる感覚とでも言おうか。

切ないメロディーライン、詩の世界が眼に浮かぶような情景描写それぞれが、6月の雨の日に聴くには最高だと思う。

もうすぐ還暦を迎えるハマショーには、年を重ねた男の切なさを歌った名曲がいくつもある。

「日はまた昇る」なんて、最晩年の男の歌にも聞こえるし、「花火」にいたっては、わずか数分の楽曲の中に、男の魂のくすぶりが完璧なまでに表現されている。

これらの曲が収録されているライブDVDを見ると涙腺が刺激されて困ってしまうほどだ。

ちなみについ最近、ハマショーの楽曲の中に三部作があるというトリビアみたいな話を聞いた。まったく路線も違うし、それぞれ関係無さそうな雰囲気の曲なのだが、ストーリーとしてつながっていたのだとか。

なかなかニクいことをする。

その話を聞いて、さきほど紹介した「男の切なさシリーズ」の曲も、実は他の曲と連作のような意味合いがあるのかもしれないと思い始めた。

だとしたら、その手の楽曲の大元にあるのが「紫陽花のうた」かもしれない。

http://www.youtube.com/watch?v=yDbSxosEcW8

紫陽花の話を書こうと思ったのだが、結局、ハマショー評論になってしまった。

ついでに歌詞も載せておきます。



紫陽花のうた

    六月の雨の雫
    紫陽花の花 北鎌倉
    横須賀線のプラットホームに
    君と・・・

    静かな静かな 雨の午後
    微かな微かな 木々の声

    何も奪わずに 何も求めずに
    君を愛したいと願う


    誰にも 話せない恋だから
    誰にも ゆずれない恋だから

    すべてを与えて 何も求めぬ
    君と暮らしたいと願う


    渋滞の海岸通 
    そぼ降る雨に煙る 江ノ島
    水平線に 頬杖つく君の 愛しい横顔


    I'll give you my heart
    I'll give you my soul
    Stay with me forever

    I'll give you my heart
    I'll give you my soul
    We can be together

    So close and far
    Every time when we touch each other

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