2015年1月14日水曜日

銀座宮川 頃合いの良い店

ちょうどいい頃合いの店。これがなかなか難しい。シチュエーションにもよるが、大人の男がふらっと立ち寄ってリラックスしてくつろげる店を見つけるのは結構厄介である。

単に酒を飲むのであれば、小料理屋あたりでノンビリすれば済む。問題は酒がメインではない場合だ。

たとえば、インドカレーが食べたいけど酒もしっかり飲みたいとか、上等なトンカツを専門店で食べたいけど、アレコレ酒肴も頼んで酒も楽しみたいとか、そんなパターンだ。

メインはメインで本格的な一品を求めるくせに、それ以外のツマミでチビチビ飲むのも捨てがたいというワガママな状況である。

こういう願望に陥った時、それが御一人様状態だったら尚更ハードルは高くなる。インド料理屋で一人ダラダラ酒を飲みながら長っ尻になっている人など見たことない。

一人メシ、一人酒の機会が多い私は時々そんな困った事態に直面する。誰かを呼び出そうにもたいていは突発的だからコトはうまく運ばない。

私の大好物がウナギである。頻繁に食べたくなる。ウナギと言えば、上等な白焼きに冷酒を組み合わせてウットリしたい。

個人的に好きな鰻屋さんはいくつかある。でも、一人で気軽に入れるタイプの店ではない。

一人で気軽に入れるそこら辺の鰻屋さんの場合、酒のツマミが無かったり、あってもチューブから絞るニセモノワサビを平気で出してくるような居酒屋的なノリの店が多い。

その手の店でウマい白焼きを期待しても駄目である。

わかっているのに、ダメダメな鰻屋にも突撃してしまうのが私の悪いクセだ。「さすがにこの店は入っちゃ駄目だろう」と守護霊が囁いているにも関わらず、ウナギモードがマックスになると失敗する。

とある夜、新橋で会合を終えた後のこと。まっすぐ帰るはずもなく、どこに立ち寄るか考えていたら「ウナギが食いたい」一心になっていた。

新橋界隈では鰻屋さんに心当たりが無い。銀座に出ればいくつかあるが、御一人様がまったり出来る感じの店は京橋寄りの某店ぐらいしか思い浮かばない。

歩くにはチト遠い。仕方なくウナギを半分あきらめながら銀座に入る。寒いし、おでんでも食べようと歩いていたら、鰻屋さんを発見した。

しょっちゅう歩いていた通りなのに見落としていた。おでんの「やす幸」や蕎麦の「よし田」といったオッサンが喜ぶ店が集まっている通りである。

「銀座宮川」がその店。雑居ビルの地下にあった。ひっそり営業しているつもりは無いのだろうが、路面に出ている看板も小さめだから、今まで気付かなかった。

時間は9時半頃。案の定、座敷席にオッサングループが一組いるだけで空いていた。小ぶりな店である。妙に昭和っぽい雰囲気が漂う。

肩肘張らずに、かといって安っぽい感じとも違う。なんとも絵に描いたような「それっぽい店」である。

こういう偶然の発見が街をうろつく時の楽しみである。頃合いの良い店だと直感する。

この日は空いていたのでテーブル席に陣取ったが、カウンターもあるから、突然の一人ウナギ大会にも対応してくれそうだ。

酒のツマミはあまりない。でも、ウナギとともに焼鳥も看板メニューらしく、あれこれと1本から焼いてくれる。

レバ、ウズラ卵などをもらって、大根おろしもツマミ代わりに楽しんで燗酒をチビリ。酒の種類は少ないが、今どきめずらしく、ちろりに入れた酒が出てくるあたりがニクい。


そして白焼き登場。冷酒に切りかえる。さほど有名な店ではないようなので、過剰な期待はしていなかったが普通に正しく美味しい白焼きだった。

大満足である。こういう店を知ったことは偏執狂的ウナギラバーである私にとっては大いに価値がある。

おそらく家族経営だろう。ちょっとした目配りや気遣いがちゃんとしている。バイトの若造が気の利かない動きをする店より遙かに居心地が良い。

食べるペース、酒の減り具合などはさりげなく確認していたし、小皿やお茶を出すタイミングなど細かい点もきちんとしていた。

そういうソフトの部分を評価したくなる店が大人にとって快適な店だと思う。わざとらしくない適度な距離感で客をもてなしてくれるイキな感じが心地良かった。

最後に鰻重。これまた普通に美味しい。会社や自宅の近所のテキトーな鰻屋さんで討ち死にしたような気分を味わっている私にとってはオアシスみたいな店だ。

私の場合、ウナギを食べたい気分にも二通りある。片や高級専門店で、うざく、う巻きなどウナギ三昧の料理を人気銘柄の冷酒を飲み比べながらしっぽり味わうパターン、片や、もう少し力の抜けた店で夕刊紙でも眺めながら安い燗酒片手にノホホンと味わうパターンである。

年柄年中ウナギを食べたくなる私としては、当然後者のパターンのほうが多い。そういうノリの時に心強い店を見つけたことは新年早々ラッキーである。

問題は立地である。ウナギで上機嫌に酔った私にとって、腹ごなしの散歩をするには銀座は魔界である。要注意だ。

6 件のコメント:

  1. 千葉のゆう2015年1月14日 10:42

    こんにちわ 千葉のゆうです

    今回のブログ、共感できます
    私も50代後半になりますが
    うまい酒をのんで最後の締めに
    おいしい食事、というその店で
    完結するようなお店を好むようになりました

    しかしそのような店にめぐり合うのは
    かなり難しいですね

    でも偶然にもめぐり合ったときには
    うれしいものです



    返信削除
  2. あけましておめでとうございます

    おそらく富豪記者様より少し下の世代の女子!?です

    いつも楽しく、いや時に感慨深く読ませて頂いております

    旅行話、食の話等は大変参考になります

    富豪記者様にとって2015年が素晴らしい年になりますようお祈りしております

    返信削除
  3. 千葉のゆう様

    今年もよろしくお願いいたします。
    年々腰が重くなるので、じっくり馴染める店があると快適ですよね。

    今後もいろんな店を開拓していこうと思います!

    返信削除
  4. 少し下の世代の女子!?様

    コメント有り難うございます!
    雑文ばかりで恐縮ですが、そのように評価していただけて光栄です。今後ともよろしくお願いします!

    返信削除
  5. いやあ、いちいち納得です。ぼんやりと酒を飲みながら美味しいものを食べるというのは堪えられないですが、なかなかそういうお店がありません。口卑しいもので居酒屋に行くとつい色々なものを注文する事に気をとられてしまいますし、小料理屋なんかは常連が多くてアウェー感を感じる事がままあります。大人のたしなみとしてこういう店を僕も探していきたいですね。

    返信削除
  6. 道草人生さま

    東京って意外にこの手の店を探すのに苦労しますよね。機械的な対応しかできないチェーン店の居酒屋がワンサカある割には、大人が少人数でゆったり出来る場所は見つからない・・・。なんかシックリこないですよね。

    返信削除