2015年1月26日月曜日

中井貴一 アゲイン


いきなりだが「中井貴一」はバツグンである。中年になってからの存在感というか、味わい深い感じは文化財級である。ちょっと大袈裟か。

いままで何の気なしに彼の出演作品を見続けていたが、先日見た映画で改めて「中井貴一びいき」になった。

上映中の「アゲイン 28年目の甲子園」という夢を追い続けるオッサン達の映画が実に良かった。ウルウルしてジンワリした。


元高校球児が「夢の続き」に熱くなるという内容である。

マスターズ甲子園というイベントをご存じだろうか。かつての高校球児が世代を超えてOBチームを作り、聖地である甲子園で秋に開催される本大会出場を目指すというもの。

それだけで中高年にとってシビれる話だが、それを素材にした重松清の原作を元にした映画だ。

重松清に中井貴一である。そりゃあ退屈な作品になるはずがない。ついでに主題歌は私にとって神であるハマショーが担当。

もともとハマショー絡みで、この映画が作られると知って興味を持った。実際にはハマショー師匠の書き下ろした主題歌は映画のエンドロールの際に流れるだけである。

だから私がこの映画をベタ褒めするのはハマショーびいきのせいではない。純粋に作品が面白かった。オススメです。

野球をかじったことがある人、重松清の小説を読んでジンワリした経験がある人、若い頃の夢を懐かしく思う人、ついでに言えば離婚経験がある人、娘がいる人など、どれかに当てはまれば素直に楽しめて感動できる映画だ。

さて「中井貴一」である。50代半ばで枯れかけているオヤジ役である。甲子園を目指した高校生の頃は野球部のキャプテンだった設定である。

まさにハマリ役。元エースで少しヤンチャだったキャラの男は柳葉敏郎である。ニクいキャスティングだ。

柳葉敏郎の投球フォームの素人まる出しな感じは興醒めだったが、野球シーンはさほど重要ではない。中井貴一も柳葉敏郎も「娘」とのかかわり方に苦悩があるところが良かった。

元球児とその子供を描くとなれば、男の子が出てきそうだが、この作品では主要な役は「娘」である。そこがまたグッとくる。

中井貴一のデビュー作は30年以上前の映画「連合艦隊」である。正月休みにたまたまBSでのテレビ放映を見たが、中井喜一青年の演技はまだまだ「残念」な感じだった。

その後、大ヒットドラマ「ふぞろいの林檎たち」で演じたような真面目な青年のイメージが一般的だった。無器用系とでも表現したくなるような立ち位置だったが、気付けば幅広い役をこなしている。

エリートの役、頼りないオッサンの役、シリアス、コミカル何でもこなす俳優である。

映画「亡国のイージス」では謎の国の対日工作員という悪役をしっかり演じきっていたし、「壬生義士伝」ではドンくさい田舎侍が義のために様変わりする姿を見事に表現していた。

時代劇の中井喜一も魅力的だ。変な言い方だが、ガッチリ系ではない線の細さが逆にしっくり来る。

昨年公開された「柘榴坂の仇討ち」は見そびれてしまった。原作が素晴らしかったから主演の中井喜一の演技が混ざり合って間違いなく面白かったはずだ。DVD発売が楽しみである。

50代の俳優といえば役所広司や佐藤浩市、渡辺謙など素晴らしい人材がゴロゴロいるが、中井喜一のポジションはちょっと独特かもしれない。

野性的な感じやヤサグレた感じ、屈折した感じが無い「極めてフツーな感じ」が最大の特徴だろう。妙なリアリティがあるから見ている人が共感しやすい。髪型もあんな感じだし。。。

何かのインタビューで読んだのだが、彼は「大人の映画をもっと作るべきだ」と強く語っていた。まったくその通りだと思う。

アナ雪とか妖怪とかロボットとか、いまどきのヒット映画は子供向けのものばかり。仕方がないのか幼稚なのか、大のオトナまでがそんなものを観て喜んでいる。

高齢化社会なんだから、若者に媚びへつらうような作品ばかりではなく、オッサン、オバハンがジンワリするような作品をどんどん作って欲しいものだ。

2 件のコメント:

  1. ちばのゆう2015年1月26日 12:04

    千葉のゆうです

    ーーーーー

    オッサン、オバハンがジンワリするような作品をどんどん作って欲しいものだ。

    ーーーーー

    まったくそのとおりです

    たまの休みの前日に、さて明日は映画でも
    とネットで翌日の映画館のっスケジュールを
    調べると、見たい、と思うものがないと
    いう日がけっこうあります

    貴兄の上のことば 大賛成です

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  2. 千葉のゆう様

    有り難うございます!
    確かに上映中の作品一覧を見てもそそられるものが少なくて疎外感すら感じますね。

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