2015年3月18日水曜日

オトナの注文の仕方


「情報を食べる」という言い方があるらしい。安直なグルメブームを揶揄した言い方だ。

「雑誌に紹介されたから」「ミシュランの星がついたから」「食べログの評価が高いから」等々、結局は飛び交う「情報」に引き寄せられて嬉しそうに列に並ぶ。

味覚なんか二の次で、単に情報を確認しているという話である。評判の良い店に行ったという事実だけが喜びになっているらしい。

もちろん、判断材料としてそうした情報を参考にするのは普通のことなのだろうが、巷に飛び交う「情報」を盲目的に頼って自分の好みや自分の判断を引っ込めちゃうことがもったいないと思う。

お寿司屋さんやちょっとした料理屋での「おまかせ」というスタイルもビミョーである。

カウンターで食べる店だったら尚更である。板前さんと対峙する意味がまるでない。料理する側だって間違いなく張り合いがないと思う。

「何を頼んでいいか分からないから」。そういう気持ちも分かる。でもそれなら尋ねればいいだけの話だ。

自分はどんなものを食べたいのか、どんなイメージでその店に来たのか等々、いくらでも伝え方はあるだろう。

ロクに答えない店なら、ビール1本飲んで帰っちゃえばいいし、実際にはマトモなレベルの店ならそんな心配は不要だろう。

「常連でもないのに尋ねにくい」。そんな考えもある。それも気にしすぎだ。尋ねる行為に常連もヘチマもない。威張る必要はないが、こっちはお客様である。

「前に違う店で食った〇◎がウマかったから、それはあるか?」とか「この店には◎△産のマグロはあるか?」とか、知ったかぶって余計なことを言い出す野暮天は問題外だが、普通にオススメを聞いて自分の好みも伝えれば充分だろう。

「ネタや食材に詳しくないし・・・」。そんな理由で押し黙っちゃう必要はない。こっちは料理人じゃないんだから詳しくなくて当然である。

こってり系が欲しい、サッパリ系が欲しい等々、そんな程度の要求で充分だと思う。

お寿司屋さんを例に取るなら、せめて「ツマミを4、5品欲しい。温かいものも入れてくれ。その後で握りを5貫ぐらいもらえればいい」といった程度の希望を伝えるだけで、店側もやりやすくなる。

それだけの情報があれば店としても的確に段取ることができる。食材に詳しいかどうかなど関係ない。

当り前のことのようで、意外に難関に思っている人が多い。謙虚な日本人の特徴だろうか。いや、謙虚と萎縮は違う。最低限の自分の意見は伝えた方がいいと思う。

意見や希望を伝えることは我を通すことやワガママとは違う。大げさに言えば一期一会を大事にすることにだってつながる。

あくまで店が大忙しの時には遠慮する必要はあるが、たとえば、揚げ場や焼き場があるお寿司屋さんだったら、牡蠣をフライにしてもらったり、アジフライ、エビフライだってワガママというほどの注文ではないと思う。

刺身で食べられる上モノのサンマをあえて塩焼きにしてもらえば絶品だし、生牡蠣を焼き牡蠣にしてもらったり、その他の魚だって鮮度が良いのだから焼きモノにしてもウマい。

こういう注文をワガママとは言わない。タルタルソースまで作ってくれとか寿司飯で炒めご飯を作ってくれといった悪ノリはワガママだが、イクラの握りを海苔無しで食べたいから小鉢にシャリとイクラだけを入れてくれと言ったってワガママという程ではない。

なんかキリがなくなってきた。

ちょっと話を変える。

先日、護国寺近くのホテル椿山荘に出かけてきた。フォーシーズンズホテルが撤退して大家だった椿山荘が直営する形になってから初訪問である。

カフェレストランで腹ごなしをしたかったのだが、昔あったはずのオムライスがメニューから消えていた。

仕方なくカレーでも食べようかと思ったのだが、ボーイさんが「オムライス、お作りしますよ」と微笑んでくれた。


私の名誉?のために補足すると、ボーイさんには、かつてのオムライスが美味しかったことをちょこっと伝えただけである。断じて恐い顔で強要まがいの物言いをしたわけではない。

こういうのはワガママとは言わない。私の紳士的な?物腰と上等なサービスを会得している店側との呼吸が合ったという話である。

実に有難かった。近いうちにまたオムライスを食べに行きそうだが、その時もあくまでコッソリと「相談」という形でオーダーすることが大事だと思う。

冒頭からウジウジ書いてきたそれっぽい店のカウンターでの過ごし方だが、意見や希望、好みを伝えるという行為のキモは「相談」に尽きる。あくまで相談するという姿勢が大切だ。

お仕着せに満足するだけでなく、腕の立つプロの板前さんや職人さんを奮い立たせるような「相談」をどんどんするのがベストである。

2 件のコメント:

  1. いや〜、これは参考になりました。萎縮しているつもりはないのですが、かといってどういう頼み方をすれば今までうまく考えつかなかったですので。仰る通り天手古舞いの状況を外すような配慮しさえすれば、お店の方もそういう声を待っているのかもしれませんね。

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  2. 道草人生様

    お店の人も張り合いがある客の方が楽しいはずです。確かに「声を待っている」のは確かだと思います。

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