2015年8月12日水曜日

ホッピーの立ち位置


ハイボールが人気を集める季節だ。本格的なバーの中にはキンキンに冷やしたウイスキーとソーダを使って氷抜きのハイボールにこだわる店もある。

氷が溶けて味が薄まらないようにというキザな、いや、素敵なこだわりである。寡黙なバーテンダーが手掛けると何だかオシャレ~である。

先日、そんなオシャレ~なこだわりをホッピーで体験した。その名も「シャリキンホッピー」である。


ホッピーで割るのに最適と言われるのが金宮焼酎である。それをシャーベッド上に凍らせているから「シャリキン」、そこにキンキンに冷やしたホッピーを注ぐことで氷無しバージョンが完成だ。

寡黙なバーテンダーとか、ムーディーなバーとか、そういう舞台装置とは無縁のガサツなモツ焼き屋で遭遇した。なかなかアッパレな取組みだと思う。


これだから大衆酒場はやめられない。富豪記者と名乗っている以上、もっと富豪っぽい?店をレポートすべきなのだが、結局はエセ富豪に留まっているのが現実である。

さて、ホッピーである。ビールが高価だった時代に代用品として誕生したのがホッピーである。焼酎で割って楽しむ。

今でこそプリン体ゼロといったヘルシーなイメージもあるが、基本的には「ディープな大衆酒場御用達」、「疲れたオッサンがモツ煮をツマミに飲む酒」といったイメージに支配されている。

代用品という出自のせいもあって、同じ割りモノである「酎ハイ」よりも何となく格下であるかのように見る人も多い。

レモンサワー、グレープフルーツサワーあたりだと、愛くるしい女子大生や上品な若妻でもグビグビ飲んでいる。

ヒアルロン酸入りアセロラサワーとかコラーゲン入りアロエサワーのような、おそらくウソ八百な飲み物は女性陣にウケるが、ホッピーは見向きもされない。

昔よりも一般化したホッピーだが、オシャレなネーミングのナンチャラサワーには勝てない。結局、愛くるしい女子大生や上品な若妻が手を出すことはない。

吉永小百合も黒木瞳も石原さとみもホッピーを飲むことはない。江角マキコや沢尻エリカは飲んでるかもしれないが、桐谷美玲や有村架純は絶対に飲まない。それがホッピーの現実だ。

ワインとは大違いである。ワインの場合、得体の知れない添加物だらけの安物だろうと「とりあえずワイングラスで飲んでいればオシャレ」というヘンテコな風潮がある。

「ホッピーはオッサン」というイメージと「とりあえずワイン」という風潮はある意味似たような感覚だ。

ついでに言えば「ダッチワイフを買う人はオタク」といった思い込みとも似ている。実際はそんなことはない。オタクではない私だって買いそうなのに硬直したイメージはなかなか崩れない。

世の中あらゆる分野で固定観念に支配されている証拠である。

話がそれた。

「ホッピーなんか飲むんですか?」。こういう言われ方がホッピーの悲しい現状である。どぶろくや密造酒でもないのに何だか特殊なモノみたいに言われかねない。

「ホッピー=大衆酒場」という固定観念は「カレーに福神漬け」と同じぐらい世の中に浸透している。

だから、やきとんやモツ煮をウリにするような居酒屋以外でお目にかかることは滅多にない。実に残念。

さすがに寿司屋に置いても需要は無いだろうが、串揚げ屋やトンカツ屋、焼肉屋などのメニューにあったら充分に客を喜ばせると思う。

オシャレ路線、高級路線の店、ミシュランに載るような店だろうと、料理内容によってはホッピーをメニューに加えたら案外ウケるのではないか。

ホッピーは油っぽい料理との相性が抜群だ。たとえばコッテリしたフカヒレの姿煮と合わせたって素直にウマいはずだ。

私自身、ナントカの一つ覚えで「フカヒレには紹興酒」と決めつけているが、そもそも紹興酒だって高級酒ではない。基本は大衆向けの酒である。それっぽい酒器に入れられて出てくるから有難く感じているだけだったりする。

上モノのフカヒレをホッピーで楽しむ。ぜひトライしたいものである。フカヒレが名物の赤坂維新號あたりで相談したらぶっ飛ばされるだろうか。

焼肉屋さんで最近普通に見かけるのがマッコリだ。あれだって素朴な大衆酒である。

安値路線の焼肉屋はもちろん、タン塩1人前が3千円もするような高級焼肉屋でも見かける。それならホッピーだって置いてもらいたい。個人的には脂っぽい肉にはマッコリよりホッピーだと思う。

ホッピーをディープな大衆酒場専属みたいなポジションに止めておくのは思考停止みたいな話かもしれない。

考えてみれば、芋焼酎なんかは30年ぐらい前までは現在のような存在ではなかった。

今では高級料理店でも当然のように数種類用意されている。その昔、「下級」なイメージで敬遠されることが多かったことを思えばビックリするほどの変わり様だ。

品質向上だけでなくイメージ戦略も功を奏したのだろう。プレミアム感を漂わす銘柄もゴロゴロある。変われば変わるものである。

そう考えたら、数十年後のホッピーの立ち位置も変化しているかもしれない。

まずは素敵な女性をホッピー酒場に連れて行かねばなるまい。

でも、大衆酒場で飲む時の私は、鼻をホジホジしながら巨大ゲップを連発するのが基本姿勢である。やはりデートに使うのは無理そうである。

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