2016年2月3日水曜日

下町ロネッツ


2016年、「湯島」が私を呼んでいる。おそらく単なる思い込みだが、どうもそんな気がする。

先月、散歩の際にバッタリ会った旧友に連れられ『湯島のスナック』デビューを果たしたことは最近このブログでも書いた。


スナックでテレサテンを歌った後に中学高校の4つ上の先輩がやっているバーにも出かけた。「湯島のスナック」も魅力だが、「湯島のバー」も未知の世界だ。顔見知りの店が出来ただけで妙に嬉しい。

その後、このバーには何度かお邪魔したが、蛇の道は蛇である。どんどん湯島情報が入ってくる。私にとって湯島を攻略するための前線基地である。

先日も中学の野球部の先輩(2つ上の主将)に35年ぶりぐらいに偶然会った。悪ガキ時代の昔話で盛り上がった。

湯島のような古い街は、一種の村社会のように地域のつながりや関係がしっかり構築されているイメージが強い。そういう中にちょこっと混ぜてもらうのが楽しい。

どうやら私は昔から「アウェーな感じ」が好きみたいだ。若い頃に銀座のクラブで感じた「馴染めていない居心地の悪さ」を楽しむ趣味?があるみたいだ。

初めて入った料理屋や寿司屋のカウンターにポツンと一人で座って大将とお互いの様子を見合うような何ともいえない空気感に身を置くことも案外嫌いではない。

M的な喜びだ。収まりの良い場所にいるだけでは刺激が足りない気分になるのだろうか。

ビミョーに変態である。

でも、アウェーな感じに惹かれるのはそういう心理が働いているのだと思う。

で、湯島である。何となく昔ながらの東京の情緒をそこかしこに感じる。個人経営の飲食店が元気な街は個性があって楽しい。

上野とほとんど同じエリアなのに「湯島と上野は全然違う」と力みながら解説する人がいっぱいいるのも面白い。

上野は台東区で湯島は文京区である。文京区に住んでいる私としても湯島を贔屓しなければいけない。

で、あちこちで湯島のスナックに行ったことを得意になって話していたら、いろいろと情報も入ってきた。

おっパブのオススメはどこそこだ、どこぞのカフェは知り合いがオーナーだ等々。やはり情報は騒いでいる方面に流れてくる。

キャバクラとは違う、いわゆるクラブっぽい店の情報も入手したので、冷やかしついでに覗きに行ったし、一見さんお断りを徹底しているチョッピリ高級なスナックにも連れて行ってもらった。

一気に「湯島ワールド」が開けてきた。目指せ湯島の帝王!である。

イケイケっぽい?バーにもひょんなことから飛び込みで入ってみた。

とある日曜日、浅草で食べ過ぎた帰り、地下鉄を上野駅で降りて運動不足解消を兼ねて歩けるところまで歩いて帰ろうと企んでみた。

志は立派だったのだが、たかだか10分ぐらい歩いて寒さに負けそうになった頃、ネオンの消えた休日の湯島スナック街でポツンと灯るバーの看板が目に入った。

若者向けっぽい看板だったので素通りしかけたが「シーシャあります」の表示が目に入った。水タバコのことである。


湯島で水タバコが楽しめるというトピックスは湯島探検中の今の私の心を射抜くには充分である。「やっぱり湯島はオレを呼んでいたんだな」とつぶやき、突入することにした。

イケイケの若者が好みそうな雰囲気の店だった。普段はまず入らないジャンルの店である。完全なるアウェーである。

日曜だったせいで客はいなかった。ガタイの良い黒人のマスターが一人、掃除機片手に奮戦中だった。聞けばオーストリア国籍のナイジェリア人。45歳のオジサンだ。

さっそく水タバコを用意してもらう。炭もフレーバーも上等品を使っていると力説される。聞いてもいないのに自分は不良外人じゃないと語ってくる。気の良さそうなオッサンだ。

プカプカしながら世間話に花を咲かす。なかなか面白い。やかましいだけのクラブミュージックがガンガン流れていたので、音楽を変えろと注文する。

70年代、80年代のイーグルスとかドゥービーとかにしてくれと頼んだらオヤジもそっちのほうが断然好きだという。そりゃあ45歳だったらそれが普通である。

で、初対面のナイジェリア人のオッサンと二人、ホテルカリフォルニアを大音量で聞きながらラフロイグをロックであおって水タバコをプカプカ。なかなかヘンテコな光景だった。

葉巻も置いてあった。水タバコもバッチリ美味しかった。料金も安い。ここ半年ほど普通の紙巻きタバコを我慢しているせいで煙がやたらと恋しい私にとって物凄く居心地が良かった。

その後、ロネッツの「Be My Baby」、クリスタルズの「Then He Kissed Me」などの60年代のオールディーズをガンガン流してもらった。

「湯島でロネッツを聴きながら水タバコをプカプカ」。なんともまあ夢のような時間だった。“下町ロネッツ”である。

ついでに言うと、別な日の会社帰りにふらっと入った湯島の焼鳥屋のオネエサンが間違いなく私にホレている眼をしていたから近いうちに再訪しようと思っている。

そんなアホな日常である。

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