東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2016年5月9日月曜日
畳の部屋 い草の香り
ラベンダー、オレンジ、バニラ。どれも好きな香りである。しょっちゅうではないが、それらのアロマエッセンスやその時の気分に応じたお香などを買ってきては部屋の中で陶然とする。
香りの効果はなかなか侮れない。ホゲ~っと心からリラックスできる。心地良い香りがする場所にいると立ち去りがたい。
色気のない話だが、鰻屋さんの前で鼻をひくひくさせながら佇んでいると、しばし動きたくなくなる。
雨上がりの緑が発する独特の香りや金木犀がフワッと香る瞬間なども時間を止めたくなる。
そんな香りの魔力を強く感じるものの一つが畳だろう。い草の香りである。癒やされる。
畳が身の回りに溢れていた頃はさほど意識しなかったが、今は暮らしの中に畳がないので、旅先の旅館であの香りに接すると一瞬でホゲ~とした気分になる。郷愁という言葉を実感する。
いま住んでいるマンションには和室がない。遺産分割、いや財産分与で手放した前の家にもアジアンモダン調に仕立てた板の間の部屋はあったが畳はなかった。かれこれもう20年近く畳とは無縁になってしまった。
時々は仏壇に線香を上げに行く実家も、15年ぐらい前にベルサイユ宮殿を模して(ウソです)建て直してしまったので今は和室がない。
今の世の中、ダイニングテーブルと椅子、ソファにベッドという暮らしだから、畳が無くても不便はない。それでも中高年になってくるとDNAのせいなのか、無性に畳の部屋の香りが恋しくなる。
若い頃にはピンとこなかった演歌が染みるようになってくるのと同じ感覚だ。お吸い物に入っている三つ葉をよけずに食べるようになったのとも同じ感覚だろう。
なんか違うような気もする・・・。
先日も、多くの旅館が使っているらしい「い草の芳香剤」をネットで購入した。畳替えした直後のような香りが楽しめる。枕元にシュッと吹きかければあの香りに包まれて眠りに落ちることが出来る。
ホームセンターに行っても、い草の香りが強い枕や座布団がすぐに欲しくなる。愛用しているスリッパもい草をベースにした畳っぽいやつである。
それより何より、今の住まいに引っ越してまだ1年も経たないのに、次に引っ越しする時は必ず和室がある物件にしようと決意している。
加齢とともに原点回帰みたいな傾向が強くなってくるのだろうか。
あと10年もしたら着物姿で純和風の家に暮らし、割烹着姿の後妻さんと畳の上で鍋をつついているかもしれない。
そもそも畳のエコ効果は大したものらしい。湿度が高ければ湿気を吸い、乾燥すれば湿気を放出するんだとか。防音性、断熱性にも優れているそうだ。
最近よく聞くようになった「フィトンチッド」という物質も畳文化の日本では昔から当たり前のように機能していたそうだ。
森林が持つ活性パワーみたいなものである。ストレス予防や免疫力向上に効果があるようで、人生後半戦の身としてはセッセと取り入れないといけないと思う。
ということで、畳の香りに身を置きたいという大義名分をタテに快適な旅館に出かけたくなってきた。
最近は、和風モダンとやらで板の間を多用してそこにローベッドを配置する宿も増えてきた。それはそれで悪くないが、畳スペースも適度に維持してもらわないと雰囲気が出ない。
温泉で身体をほぐして、ウマい酒、ウマい飯を味わい、い草の香りを吸い込みながら眠りに落ちる。これぞニッポン人としての喜びの基本だと思う。
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