東京出身。富豪になりたい中年男。幼稚園から高校まで私立一貫校に通い、大学卒業後、財務系マスコミ事業に従事。霞ヶ関担当記者、編集局長等を経て現在は副社長。適度に偏屈。スタイリッシュより地味で上質を求め、流行より伝統に心が動く。アマノジャクこそ美徳が信条。趣味は酒器集め、水中写真撮影、ひとり旅、葉巻、オヤジバンドではボーカル担当。ブログ更新は祭日以外の月曜、水曜、金曜。 ★★★スマホでご覧頂いている場合には画面下の「ウェブバージョンを表示」をクリックしてウェブ画面に飛ぶと下側右にカテゴリー別の過去掲載記事が表示されますので、そちらもご利用ください。
2018年2月21日水曜日
昭和歌謡
昭和歌謡が若者の間で人気らしい。親の影響や動画サイトで身近になっていることが原因みたいだ。イマドキの歌も聴く一方で昭和の歌を新鮮に感じているようだ。
ちなみにこの画像は、高校生の娘とカラオケボックに行った時のものだ。歌ったのは私ではない。娘だ。ビミョーである。
ゴールデンボンバーの曲だが、歌詞の世界観がシュールで結構気に入ってしまった。
話を戻す。
電子音などで懲りまくった今の歌とシンプルで歌詞の世界をじっくり聴かせた昔の歌とでは、うどんとそばぐらいの違いがあるのかもしれない。
昭和歌謡を若い世代が新鮮に感じるのは、歌の中にある物語性が突出しているからだと思う。
ちあきなおみの「喝采」、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」、「ルビーの指輪」や「5番街のマリー」あたりは、純粋に物語をメロディーに載せて聴かされている感じだ。
小説や映画を観た時のような余韻に浸れる。昭和の専業作詞家の構想力、創造力の凄さだろう。
背景の描写も巧みで、知らぬ間に物語の中に引き込まれる。まさにプロのワザだ。
♪いつものように 幕があき
恋の歌うたう私に 届いたしらせは
黒いふちどりが ありました
あれは三年前 止めるあなた駅に残し
動き始めた汽車に ひとり飛び乗った♪
「喝采」は最初の数十文字で一気に歌の世界が映像として頭に浮かんでくる。この導入は神ワザと言うしかない。
聴く人をその歌にどっぷり浸らせるには、やはり歌い出し部分がカギを握る。そのあたりの戦略が練りに練られた歌がいくつもあった。
石川さゆりの「津軽海峡冬景色」もその象徴だろう。♪上野発の夜行列車 おりた時から・・・。これだけで哀愁の世界にズッポリって感じだ。
♪五番街へ行ったならば
マリーの家へ行き
どんな暮らし しているのか
見て来てほしい♪
かの高橋真梨子がペドロ&カプリシャス時代に歌っていた「5番街のマリーへ」の導入部分だ。歌い出しを聴いただけで、マリーさんには幸せでいて欲しいと思う。
導入部分に限らず、わずかな言葉で情景がイメージできる名曲がたくさんあったのが昭和歌謡だと思う。
♪何も知らずに あなたは言ったわ
たまにはひとりの 旅もいいよと
雨の空港 デッキにたたずみ
手をふるあなた 見えなくなるわ
どうぞ帰って あの人のもとへ
私はひとり 去ってゆく♪
(テレサテン「空港」)
♪悲しいのでしょうと 夢の中
見知らぬ人の問いかけに
声も出せずにうなずいて
それはあなたがやっぱり好きだから
いじわるなあなたはいつでも坂の上から手招きだけをくりかえす
私の前には硝子坂
きらきら光る硝子坂♪
(高田みづえ「硝子坂」)
♪あのひとから 言われたのよ
午前五時に 駅で待てと
知らない街へ ふたりで行って
一からやり直すため
あのひとから 言われたのよ
友達にも 打ち明けるな
荷物をつめた トランクさげて
また空いた汽車を 空いた汽車を見送った
(麻生よう子「逃避行」)
♪あなたがかんだ 小指が痛い
昨日の夜の 小指が痛い
そっと唇 おしあてて
あなたのことを しのんでみるの
私をどうぞ ひとりにしてね
昨日の夜の 小指が痛い♪
(伊東ゆかり「小指の思い出」)
♪バスを待つ間に 泪を拭くわ
知ってる誰かに 見られたら
あなたが傷つく
何をとり上げても 私が悪い
過ちつぐなう その前に 別れが来たのねどうぞ 口を開かないで
甘い言葉 聞かせないで
独りで帰る道が とても辛いわ♪
(平浩二「バスストップ」)
なんだか私の好みを押しつけている感じだが、ここに羅列した歌が持つ妖艶な感じは、やはり昭和という時代ならではの空気感を感じる。
単なる懐古趣味ではない。アナログだった時代ならではの“メロウな情感”に充ち満ちていたのは確かだ。
アイドル歌謡だって実に上手に練られた歌詞で当時の若者を惹きつけた。私が思春期手前だった頃に胸を焦がしたのが「年下の男の子」である。
♪真赤なリンゴをほおばる
ネイビーブルーのTシャツ
あいつはあいつはかわいい 年下の男の子
淋しがりやで生意気で
憎らしいけど好きなの ♪
リンゴを見るたびにこの歌が頭の中で響いた。子どもだった私も当然のように自分に置き換えて、かなり年上の蘭ちゃんの歌う姿にドキドキしていた。
思えば、ピンクレディーの数々のヒット曲も、冷静に聴けば奇妙キテレツな歌ばかりである。「UFO」「透明人間」「モンスター」等々、ある意味でハチャメチャだが、そんな異次元感?が、その他のアイドルと一線を画す戦略だったのだろう。
昭和歌謡の衰退とともに台頭したニューミュージックやそこから派生した和製ロックの世界は、作詞者を当事者とした主観や主張が特徴だ。
いわば、内面から滲み出る葛藤みたいなものを描く世界である。創作された物語としての要素が強い昭和歌謡とは様相が異なる。
善し悪しではなく、歌を作る上でのアプローチが違うわけだ。イマドキの歌詞の世界がツイートや日記だとしたら、昭和歌謡の歌詞は短編小説みたいな路線だったのだろう。
ダラダラと書いてしまったが、とくにオチはない。昭和歌謡の世界観を今更ながらしみじみ噛みしめたい今日この頃である。
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