2018年6月15日金曜日

お子ちゃま的な味覚


食べ物をウマいと感じるかどうかは「甘味」に左右される。個人的に強くそう思う。スイーツの甘さではない。普通の料理における甘味のことである。

グルメな評論などを読んでいると「野菜の甘味が溶け出して・・・」といった言い回しを見かける。

ハンバーグに混ざっているタマネギの甘味などがその典型だろうが、そういうまどろっこしい甘味とは別に、単純に「砂糖」の甘味はもっと評価されるべきだと思う。

時々訪ねる銀座の小料理屋さんのポテトサラダにいつも感激する。芋芋した固形感がまるで無いマッシュポテト状のポテサラなのだが、甘味が絶妙である。聞けば砂糖の甘味だとか。

とかくマヨネーズやコショウの加減ばかりに意識が向きがちなポテサラだが、砂糖という秘密兵器のせいで、類いまれな美味しさに仕上がっている。

ほぼすべての国民が愛してやまない焼鳥やウナギにしても、味の決め手であるタレには砂糖が不可欠だ。すき焼きの割下だって同じ。

昨年このブログで私のお気に入りレトルトカレーを紹介したことがあるが、味のキモみたいな部分は砂糖だった。

http://fugoh-kisya.blogspot.com/2017/08/100.html

根っからの東京人である私は卵焼きも甘い方が好きだ。う巻きしかり、お寿司屋さんでシメにもらう卵焼きも甘くないと嬉しくない。


考えてみれば、私が何より大好きな「ニッポンの洋食」にしても「甘味」が最大の魅力なのかもしれない。

調理の過程で砂糖を使っているかどうかは知らないが、クリームコロッケ、メンチカツ、グラタン、各種のシチューなどはどことなく甘味を感じる。

先日、銀座3丁目にある洋食の老舗「グリルスイス」に出かけた。ちょくちょく洋食大会を楽しむ「煉瓦亭」のすぐ近くにある。

「天皇の料理番」として有名なナントカさんの流れを汲むお店だ。カツカレー発祥の店としても知られる。長嶋茂雄の前にジャイアンツの背番号3を背負っていた千葉茂さんのリクエストからカツカレーは生まれたそうだ。


アマノジャッキーな私はカツカレーには興味がない。ミックスフライをアテに飲み始める。帆立フライ、エビフライ、クリームコロッケの盛り合わせである。何かと矜持のある洋食屋さんは総じてタルタルソースがウマいのが嬉しい。

帆立フライが妙に甘くてウマかった。さすがに砂糖ではなく帆立自身の甘味だ。お寿司屋さんでもいつも思うのだが、貝類は火を通した方が甘味が増す。これもその典型的な味だった。

ビールやハイボールでフライものを楽しむのは至上の喜びだ。ついでにいえば、フライに合わせるウスターソースも原料として砂糖が定番である。私が醬油派ではなくソースマンである理由も「甘味」に惹かれるからだろう。


フライの後はハヤシライスである。甘味を感じる官能的な味だった。変な酸味が目立つハヤシライスとは違い、この店の場合、深いコクのあるデミグラスソース系のまろやかな味。肉もゴロゴロ入っていて、甘味のあるビーフシチューって感じ。洋食ファンとしては納得の一品だった。

いま思えば、子どもの頃、家庭で食べていたものの多くが甘味を感じるものだった。麻婆豆腐なんて中華っぽい要素はまるで無く、挽き肉と豆腐と多少のとろみが砂糖ベースの味付けで出てきた。

まったくの創作料理とも言えるが、あれが妙にウマかった。魚の煮付けなんかも砂糖が多めだった。

お子ちゃま時代の味覚は中高年になっても厳然と身体の中に染みついていることを実感する。

糖尿の気配がまったくない家系だったおかげだ。今後も砂糖とは仲良く付き合いたい。

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