ウナギの価格高騰が深刻だ。先日訪ねた某老舗店では一番高い鰻重が9千円になっていた。9千円である。さすがに度を超している。
普通の専門店の「並」でも4千円ぐらいが珍しくなくなった。もはやハレの日といえども家族連れが食べに行くのは厳しいレベルだ。
一方で、スーパーやファストフード店では外国産の手ごろなウナギがバンバン売られている。先日のニュースでは、価格が高騰した国産ウナギは逆に余り気味だという話が紹介されていた。
言ってみれば、昔ながらの仕事をする真っ当な専門店が厳しい立場におかれているわけだ。大げさに言えばウナギ文化の危機である。
私はウナギが物凄く好きだ。ウナギ不足が深刻化する中、しょっちゅう食べていることにチョッピリ罪悪感があった。でも、専門店で食べることが文化を守ることになるなら今まで以上にモリモリ食べようと思う。
つい最近、3日連続でウナギを食べた。連休だった日の夜、二晩続けて出前のウナギを食べ、その翌日はとある店に出かけた。
変人みたいだ。夏バテ対策のつもりだったのだが単なる食べ過ぎである。
根っからの東京人である私にとってウナギといえば「蒸し」は当然である。関西風の蒸さないウナギはしっくり来ない。ウンチク以前に慣れ親しんだ味のほうがウマく感じる。
とはいえ、時々は気まぐれで蒸さないウナギを食べる。3日連続でウナギを食べた3日目がその日だった。出かけたのは池袋のお隣の大塚にある「三浦屋」。
渋い街・大塚には昔ながらのウナギ専門店もあるのだが、こちらの店は冬はふぐやアンコウがメインになる店。
いろんなモノを出す店にウマい店は少ないのが世の常?だが、ここはそれぞれの食べ物がキチンとしていて使い勝手が良い。一品料理も多く店内も綺麗でサービスもしっかりしているオトナ向きの店だ。
夏場はウナギ中心になるが、蒸さないウナギをウリにしている。白焼きも独特な食感だ。
サク、パリッとした食感の次にジュワッとウナギのウマ味が広がる。わさび醤油も良いが、塩で食べても美味しい。
前日、前々日と“フワ・トロ系”のウナギを食べていたから、これはこれで新鮮だ。
キモ焼も頼んでグビグビと酒を飲む。出前の鰻重を食べるのと、店で飲みながら食べるのとでは別次元の楽しさがある。
ウナギの風味は他の食べ物に比べても唯一無二のものだと思う。白焼きも蒲焼きもウナギならではの独特な香りやウマ味がある。
ゆっくりじっくり味わって口中をウナギ風味で満たし、飲み込んだ瞬間に酒を流し込む。二つの風味が一瞬混ざり合うことで得も言われぬ快感が押し寄せる。
書いているだけでウナギが食べたくなる。
鰻重も口に入れたとき、すなわち”ファーストアタック”はカリッとした食感だが、すぐにジュンワリとした鰻味が広がってくる。
蒸す、蒸さないに関係なくウナギはウマい。そう言っちゃうとオチも何もない感じである。好みの問題ということにしておこう。
でも、私は東京の人間だし、保守的なせいで老舗の仕事を闇雲に崇拝する傾向がある。だから断然「蒸し」のほうが好きだ。
蒸さないウナギは5回に1回ぐらいならいいかもしれない。いや、10回に1回ぐらいなら四の五の言わずに楽しく食べられると思う。
結局は「蒸し」が好きだという結論である。
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