もう40年近く前、成人男性の喫煙率は80%近かった。今は確か20~30%だから違う世界の話のようである。
80%ってほぼ全員である。吸わない人が異質という物凄い状況だったわけである。
私がイタズラで煙草に手を出したのは、まさにそんな時代。大きな声では言えないが15歳の頃である。
いにしえの昭和50年代、本当にどこだってタバコは吸えた。副流煙という言葉も聞いたことがなかった。
飛行機だって離陸してベルトサインが消えると同時に喫煙OK表示になった。朝の駅のホームもモヤっていた。
初対面の目上の人の前でも吸えた。企業の応接室には仰々しい煙草ケースと大げさなライターが置かれているのが普通だった。
学校の職員室も空気が紫色だった。先生の中には生徒にタバコを買いに行かせる不届きな人もいた。
なんだか思い返すだけで胸がきゅんとするほど懐かしい。
新しい職場に移ってまもなく1か月。タバコが吸えない環境にオタオタする日々だ。
メインの職場の2軒隣のビルに分室があるのだが、コッソリそこで吸うことが多い。高校時代を思い出す。
困ったことに吸い放題の場所にいるより、数時間おきにようやく一服する時のタバコが美味しくて仕方がない。
トータルでの吸う本数は減ったが、一服タイムには必ず2本吸うパターンが確立してきた。
オタオタしているだけでは仕方ない。自衛策として電子タバコをうまく活用するようになった。
職場移転が決まった昨年末の段階で、来たるべきツラい日々に備えて、匂いの無い電子タバコ「プルームテック」を使い始めた。
ヘンテコな香りがするアイコスと違って無臭がウリである。電子タバコなどという得体の知れないものに手を出すのは愛煙家として忸怩たる思いだったが、背に腹は代えられない。
匂いが無いから、職場の私のスペースでスースーするぐらいなら誰にも迷惑はかからない。
でも、大きな問題は根本的な物足りなさである。私が30年以上一貫して吸っているラークマイルドはタールが9ミリというシロモノなのだが、プルームテックは1ミリのメビウスに準拠した造りである。
1ミリのタバコと9ミリのタバコではまったく次元が違う。普通の紙巻きタバコでも1ミリのヤツはちっとも吸った気がしない。
そんな1ミリバージョンの電子タバコが私を癒してくれるはずはない。死ぬほど空腹の時に焼鳥を1本だけ食べる程度の補給効果しかない。
無いよりはマシといった感じだったのだが、私が気付かぬうちにパワーアップしたプルームテックが発売されていた。
上がベーシックなプルームテック、下が追加投入されたプルームテックプラスである。
従来品とは異なり、タール5ミリ程度のタバコと同等の吸い心地を実現したそうだ。9ミリ派にはまだ不足だが、1ミリに比べれば5倍である。
焼鳥1本というシケた補充が焼鳥5本に進化したわけだ。バンザイである。
スターターキット、すなわち初期費用が5千円ぐらいかかる。その上で普通のタバコ代と同等のカートリッジを買わねばならない。初期費用プラス毎日のタバコ代ということになる。
スターターキットを一気に4セット購入した。それだけで2万円ぐらいもした。富豪である。
充電が切れたらストレスバリバリで頭がおかしくなりそうだから、まずは職場に2セット、自宅に1セット、後部座席に座る時のためにクルマにも1セットである。
私にとっては必要最低限だ。富豪である。でも、充電が必要だという製品特性上、どうしたって予備は必要だ。
切ないのが従来品を5セットほど持っていることだ。新作との互換性がまったく無いから、パワーアップバージョンを知ってしまった今では無用の長物だ。
だからポンポン人にあげている。富豪である。しつこいか・・・。
電子タバコの軍門に下ってしまったことはプロの愛煙家としてはシャクだ。でも、職場での心の平穏に少しでも役立つわけだからブツクサ言っても始まらない。
ついでに一つ。日頃から思っていることを書いてみる。
タバコを忌み嫌う人がいるのは仕方がない。迷惑な吸い方をされたら堪ったものではないだろう。
それは当然だ。嫌煙権をガンガン主張するのも大いにアリだろう。
でも、かつてはバンバン吸っていたのに禁煙した途端に、ことさら喫煙者をクソミソにディスる人は何だか気持ち悪い。
別れた後になって一度は愛し合った人をクソミソに言っちゃうような薄っぺらさと同じだ。
スマートだとはいえない。ヤボだと思う。
まあ、今どきタバコを吸い続けていることがヤボだから、心当たりのある方は、ヤボ同士ということでご容赦ください。
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