本当は寿司が嫌いなのかも知れない。前からそう思っているのだが、週に一度は条件反射のようにお寿司屋さんのノレンをくぐる。
飲み屋として使っているように思われるのもシャクだし、それだと実際にヤボである。最近は以前よりも握りをしっかり食べるようになった。
それでも、せいぜい7,8貫で満足だ。酒も頼まず最初から握りだけでテンポ良く出されたら、きっと20貫近くは余裕でいけるはずだ。ちょっとだらしない。
最近つくづく感じるのがシャリの大切さだ。当たり前のことなのにこの部分がイマイチな店が多い。
握り方のウマいヘタの違いもあるが、それ以前にシャリ自体の差がかなり激しい。
別にグルメだの寿司通だのという次元ではなく、半世紀以上も生きてきた日本人なら誰だってシャリの格差は感じるはずだ。
ネタについては昔より格段に良くなった。流通が大幅に進歩したおかげだ。大昔の街場のお寿司屋さんで出てきたようなクサい魚はさすがに今は大衆寿司店でも出てこない。
ネタが良いわけだから尚更シャリは大事だ。世の中のマイルド化にともない、昔よりも存在感を全く感じないシャリが増えた。
もはや酢飯とは呼べないシロモノも出てくる。大箱店にはとくにその傾向が強い。万人受けを狙ったせいなのか、悪く言えば、どうでもいい味の“冷やご飯”みたいだ。
ネタの味とシャリの味がケンカしないためにマイルドになったのだと思うが、程度問題だ。やはり酢飯感は必要だと思う。
最近では昔ながらの赤酢を使ったシャリで握る店が人気を集めている。見た目から言えば赤酢のシャリより普通の白いシャリのほうが美味しそうである。
美的には赤酢の握りのほうが劣るようにも思うが、あえてそんな路線がもてはやされるのは、シャリにこだわりがある店という印象が強いからだろう。
裏返せば、美味しくないシャリに満足できない人が多いことを表している。私はとくに赤酢が一番だとは思っていないが、確かに赤酢を使う店は握りのレベルが高いのは確かだ。間違いなくベチャっとした“失格シャリ”が出てくる心配はない。
コメの炊き加減に好みがあるのは分かるが、寿司と鰻重に関しては絶対に硬く炊いたコメ、粒だったコメじゃないとダメだろう。
私が好きな握りはいろいろあるが、赤身のヅケや車海老、煮蛤といった古典的なものが中心だ。
私も若くて血気盛んな頃は、銀座のホステスさんのようにトロ、ウニ、イクラといったソッチ系?のネタを中心に食べていた。
ヅケやニハマなんて知ったかぶって格好つけながら注文していた感じだったが、歳とともに実際に大好きになった。今ではトロは苦手になってしまった。
コハダや白身の昆布締めなんかも大好きだ。年齢を重ねると四の五の言わずに保守的な路線になっていくのだろう。悪くいえばオジイサンみたいである。
今だってウニやイクラも大好きだが、主にツマミとして酒のお供にしている。
古典的?な握りの中でも海老の握りは私にとって絶対に外せない一品だ。回転寿司で出しているようなぺらぺらで味の無い謎の海老のせいで、なんとなく寿司業界ではスター級の扱いを受けていないように感じる。
甘エビ、ボタン海老など生エビが台頭したことも「ウマい茹で海老」が目立たない存在になってしまった理由かも知れない。
味が濃く旨味を感じるマトモな車海老の握りは寿司飯との相性が抜群だ。これが正しく美味しい店なら何を食べてもハズれは少ないと思う。
トロがスーパーヒーローみたいな地位を築く一方で、マグロのヅケはもはや知る人ぞ知るレベルの知名度になってしまった。
昔の保存食として生まれたものだから今の時代向きではないとも言えるが、“寿司っぽさ”という意味では私は妙にヅケに惹かれる。
煮きりをベースにした専用タレに15分ほど漬け込む即席のヅケも好きだが、もっと好きなのが油霜造りのヅケだ。
少しだけ湯通しして表面に膜を作る手法のことだが、美味しさが閉じ込められた感じがする。サッパリしながらも味にパンチがある。赤身の良さを再認識できる。
なんだかすっかり知ったかぶりグルメもどきみたいな書き方になってしまった。読み返してみると、やっぱりただのオジイサンみたいだ。
富豪様の寿司と鰻重と硬く炊いた米の関係に共感します。鰻重は、名店と言われている処でも米で残念な思いをしたような。好みの問題ではありますが。
返信削除コメントありがとうございます!
返信削除タレという液体が加わるわけですから、べちゃメシでは話にならないですよね。断然、硬いご飯が大前提です!