コロッケと聞いて想像するのは芋のアレである。大衆的な食べ物の代表であり、ご馳走イメージの対極的な存在だ。
私はコロッケが好きではない。そもそも芋が好きではない私からみれば単なるイモフライだ。
コロッケは社会的地位も低い。高級なイメージはまるで無い。デヴィ夫人はきっと食べないはずだ。
コロッケ食べに連れて行ってください!などと女性から言われることもない。今日の晩ご飯はコロッケよとお母さんに言われて狂喜乱舞する子供も今の時代はごく少数だろう。
明治の文明開化で洋食が広まり始めた頃は、かなりの高級料理だったコロッケだが、今では「おやつ」程度の地位に甘んじている。
さて本題。そんなコロッケのおかげで迷惑を被っているのがクリームコロッケである。
私はクリームコロッケが物凄く好きだ。死ぬほど好きである。イモフライと同じ「コロッケ」というカテゴリーで一緒くたにされているのが気に入らない。
イモフライと区別するために、いちいち「クリームコロッケ」と正式名称を発声しなければならないのもイライラする。
上の画像は天下の資生堂パーラーのカニクリームコロッケだ。いや、正式名称はクラブクロケットである。
洋食屋さんの多くがイモフライによって広まってしまった大衆イメージ、おやつイメージを払拭するためフランス風に“クロケット”と呼称する。
注文する際、「クロケット」と発音するのがとても恥ずかしいのだが、そんな思いを我慢するのがクリームコロッケラバーの宿命である。
銀座の名店「みかわや」のカニクロケットである。こちらもコロッケとは呼ばない。コロッケと表記されていたら値段にビックリするが、クロケットだから妙に高価でも気にしないように心がけている。
高級洋食屋さんのベシャメルソースはさすがにウマい。うっとりする。ベシャメリスト?である私にとってはそういう店のクリームコロッケは最高だ。
「みかわや」ではこんなセクシーなタルタルソースもたっぷり用意されるからいつも悶絶してしまう。タルタルソースもついつい完食してしまう。
芋のコロッケと同じ枠組みで語られるにはあまりにも違いが大きいのがクリームコロッケだ。
明治大正の頃に別な呼び名を与えられていたら、きっともっと違う存在感を発揮していたように思う。
こちらは東京會舘のカフェレストラン「ロッシニ」で頼んだクリームコロッケ。東京會舘は私をうならせてくれるウマいピラフがあるように洋食ジャンルでは定評がある。
ところが、このクリームコロッケが誤算だった。クリームの中にパプリカだかピーマンだかクセのある野菜がまぶしてあった。個人的には全然ダメである。
没個性になりがちなクリームコロッケにどうにかして特色を出そうとした職人の矜恃は分かるが、野菜を混ぜ込むのは反則だと思う。悲しいの一言である。
聞くところによると、その昔、銀座の煉瓦亭がまかないで作ったのがクリームコロッケの発祥だとか。
煉瓦亭では必ずと言っていいほどコキールを頼むので、ベシャメル被りを気にしてクリームコロッケを注文しないことが多いが、近いうちに改めて元祖の味を堪能してこようと思う。
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