2021年4月5日月曜日

さらば愛しき一皿

いよいよカウントダウンである。あと3ヶ月だ。オリンピックのことではない。わがソウルフードである「グラパレのピラフ」が食べられなくなる日が迫っている。

 

九段下のホテルグランドパレスは6月末で営業を終了する。かつては金大中が誘拐され、桑田清原の運命を決めたドラフト会議も行われていた老舗ホテルだ。

 

1階のカフェテラス「カトレア」は私にとって思い出の場所だ。幼稚園から高校まで近くの学校に通った関係で、参観日や保護者会などのたびに母親に連れてきてもらった。

 



 

幾度となく改装されてきたが、窓から見える滝は昔と変わらない。カッチョいい高級ホテルが林立する今となっては。チョッピリうらぶれた雰囲気もあるが、そのレトロ感も悪くない。

 

幼い頃は母親軍団のオシャベリ大会の横で待機していた記憶がある。そんな時、私の目の前にはいつもピラフがあった。

 

シャトーソースという魅惑の液体をかけて食べるピラフである。これが大好きになってから半世紀近く。今も大好物である。


先日も千鳥ヶ淵に桜を見にいったついでに愛しのピラフを大盛りで食べてきた。いや、ピラフのついでに花見をしたようなものだ。

 



 

あと3ヶ月でオサラバかと思うと心底淋しさを感じる。小中校の頃だけでなく大学生の頃も友人達と合流する際に頻繁にこのカフェテラスを使った。

 

大人になってからも思い出してはピラフを食べに出かけ、家庭人だった頃も子供を連れて何度も出かけた。

 

家族がビュッフェを楽しんでいる横で、単品注文したピラフを黙々と食べたことも何度もある。

 

昔は海老やチキンのピラフもメニューにあったが、いつの頃か貝柱のみになってしまった。それでも魅惑のシャトーソースは不変だから飽きずに食べ続けてきた。

 

まさに私のソウルフードである。ふるさとの味と呼んでも大袈裟ではない。オフクロの味ならぬオフクロに食べさせてもらった味である。

 



 

このブログでも以前から「ピラファー」だの「ピラフィスト」だのを自称してピラフのウンチクを何度も語ってきたが、その原点こそがこのグラパレのピラフである。

 

http://fugoh-kisya.blogspot.com/2012/03/blog-post_12.html

 

ここでピラフを食べるたびにウマかったことを書きたくなって何度も書いてきた。安定安心の美味しさである。

 

初めて書いたのはもう13年も前のことだ。その頃から既に思い出の味だったわけだ。

 

http://fugoh-kisya.blogspot.com/2008/09/blog-post_11.html

 

これを書いたときにグラパレのピラフについて「正統な東京料理」と表現したが、今もその通りだと思う。私にとって昭和の東京の郷土料理である。

 

系列のパレスホテルでもシャトースース付きのピラフはあるのだが、グランドパレスとは味わいが微妙に異なる。あくまで別物だ。

 

すべてのモノには寿命があるが、この別離は実にツラい。ここのシェフ経験者に喫茶店でもいいからシャトーソースピラフを引き継ぐ店を出して欲しいと切に願う。

 

クラウドファンディングにそんな話があったら喜んで多額の資金を出す。結構頑張って資金提供すると思う。

 

思えば、50年近くに渡って同じ店の同じモノを大好物として食べてきたことは幸せだ。

 

それだけの年齢になってしまったことも事実だが、そんな食べ物に遭遇できたことはラッキーだった。

 

あと3ヶ月、少なくとも5回は食べに行きたい。最後の最後にはきっと号泣しながら食べるのだろうか。

 

さすがにそれはないか。いや、歳とともに涙腺がゆるくなってきたから案外ポロポロと涙がこぼれるかも知れない。


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