2008年9月11日木曜日

正当な東京料理

「ホテルで食事」というと、値段が凄く高いとか最先端の料理とか、ちょっと特別なイメージが少なからずある。

近年増殖中の外資系高級ホテルのレストランは、確かに値段設定が「?」なところが多い。間違ってもお気軽感はない。

昔ながらのシティホテルには、いまだに適度な高級感とお気軽感が同居するレストランもあるが、世の中を飛び交っている情報は、最新のものばかりなので、この手の情報は少ない。

前振りが長くなった。今日取り上げるのは、九段下にあるホテル「グランドパレス」。
昔は、プロ野球のドラフト会議の会場として使われるなどそれなりに元気があったが、最近は、“置いてけぼり感”が否定できない存在だ。

私は、ここの1階にあるカフェレストランに時々出かける。特製ピラフが無性に食べたくなってわざわざ出かける。

幼い頃から通い続けた学校が、このホテルのそばだったため、私にとっての“ホテルめし”はここが原点。小学校の謝恩会なんかも会場はグランドパレス。親がかりの行事でよく利用した。

親が用事で学校に来たときは、帰りにここの特製ピラフを食べるのが何よりの楽しみだった。ここのピラフのファン歴は、かれこれ30年以上になる。

ピラフの種類は、チキンか貝柱か小海老。
今では、確か貝柱か小海老だけになったようだが、具材はさほど問題ではない。特筆すべきポイントはソースだ。ピラフに特製ソースをかけて食べるパターンはあまり一般的ではないが、ここのピラフにかけるソースが絶品。

表現力不足でお恥ずかしいが、味については、うまく例えが見つからない。私にとって「グランドパレスのピラフソース」は、何にも似ていない味なので、その美味しさが伝えられない。

醤油系でもない、トマト系でもない、クリーム系でもない。肉系、魚系、野菜系という分類も違う。多分それらすべてのエキスが混ざり合ったソースなんだと思う。

スッキリしながらもコッテリ感もあり、複雑な味わいでパラッと炒めたピラフに絶妙に合う。わざわざ食べに行っても後悔しない味。年月とともにほんの少しソースの味が大味になった気がするが、こればかりは、こちらの味覚の変化かも知れない。

多分、ここの特製ピラフだったら、真面目に米一升分でも食べられると思う。

先日行ったときは昼時で、ランチバイキングの時間帯。やたらと空腹だったので、バイキングの客として、アレコレ食べながら、別注でピラフをオーダーした。

ここのバイキングは、今どきのホテルがやたらと強気な価格設定をして、旨くもない食材を種類ばかり並べて、見た目勝負に終始しているのに対し、品数は少ないものの、普通に美味しい(これが難しい)。

ホテルのバイキングというイメージで出かけると拍子抜け、もしくは落胆するかも知れない食べ物のラインナップだが、それぞれ味は間違いない。

「古き良き時代のホテル洋食」がまっとうに継承されているように思う。

ちなみに系列の丸の内パレスホテルでも、1階のカフェレストランのローストビーフが名物。気取った今風のレストランのローストビーフよりはるかに美味しい。

ここで紹介したピラフにしてもローストビーフにしても、それこそ昭和の日本人が感激した洋食の味だ。

天ぷら、ウナギ、寿司・・・。東京の名物料理は数あれど、グランドパレスのピラフも極めて正当な“東京料理”のひとつだと思う。

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