秋の気配が深まると、ぷらっと入れなくなるのが「おぐ羅」。銀座・数寄屋通りのおでん屋だ。夏場なら、予約ナシでもポツンと空いた席を確保しやすい。秋の気配が近づいてきたので、今のうちに行っておこうとソッと覗いてみる。思惑通り、すんなり入れた。
お勘定の高さでも有名だが、一年中繁盛している。カウンター中央にデンと構える大将の迫力に圧倒されるのもこの店の特徴のひとつ。
それにしても、この店の店主の目配りと采配ぶりの巧みさは特筆すべきだろう。おでんだけを2,3品頼んで居座っている客はここにはいない。
大柄な店主は、物腰低く、かといって圧倒的存在感で、おすすめの一品料理の注文を次から次に取り付ける。不思議なオーラのせいで客側もあれこれ注文してしまう。
実際、一品料理はどれも美味しい。当たり前のものがどれも高水準。刺身類にしても焼き魚にしても、奇をてらったものはないのだが、どれも上等な味わい。だからなんとなく注文してしまっても、たいてい満足。
また、ここの店主は、カウンターとテーブル席、客の人数や注文するペースなどを吟味しながら、実に巧みに客の移動も促す。このへんの采配は、まさにプロの眼力だろう。
昼時のそば屋とか定食屋が、次々に来る客の配席を指図するおばちゃんの力量ひとつで、売上げに2倍以上の違いが出ると聞いたことがある。こういう采配の積み重ねが商売成功の秘訣なんだろう。
ただ美味いものを出すだけじゃなく、店の中の空気を完全に支配してコントロールする職人技が、繁盛店を繁盛させ続けるのだと思う。
一見なんの変哲もない店構え、座席だって丸椅子で特別高級な気配があるわけでなし、特別珍しいメニューがあるわけでもない。
強いて特徴をあげれば、客に若者がいない点だろうか。全然いないわけではないが、基本的に後期高齢者ならぬ、“後期オジサン”の占有率が高い気がする。地域特性から、ホステスさんの同伴も見かけるが、あまり若い女性を見かけたことがない。この落着き感が独特な空気を醸し出している。
この日も、カウンター後ろの小さなテーブル席を、初老というか、もっと年上の女性が二人で陣取っていた。“ただモンではないオーラ”を発射していたので、タダモノではないのだろう。
やたらと身なりも良く、「婦人画報」あたりが、女系三代とかいってグラビア特集に取り上げそうな一族の“一代目”の雰囲気(よく分からない例えでスイマセン)。
いずれにしても、地に足のついた余裕のあるお客さんが多いように見える。そしてそうした落ち着いた客層の人々が、この店の路線に納得、共感している感じが興味深い。
どんな仕事でも、独自の路線とカラーが必要なのは言うまでもない。ただ、それだけでなく、路線なりカラーを維持する矜持とか、共鳴者作りの大切さを痛感する。
何を書きたかったのか分からなくなってきたので、この辺で。
2008年9月4日木曜日
おでんを食べて思ったこと
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