最近、新しいお店の開拓を怠っている。やはり、顔なじみになった店の安心感は貴重だ。銀座方面にしても、毎晩のように出歩くわけではないし、やはり、せっかく行ったときは少しでも勝手が分かっている店を選びたくなる。
銀座の「鮨 池澤」。このブログでも何度か書いたが、2週続けてお邪魔した。平気で数ヶ月ご無沙汰してしまう私には珍しいのだが、改めて思ったのが、続けて訪ねればこそ、お店の良さが分かるということ。
8丁目の雑居ビルの2階にしっぽりたたずむ。この界隈の通りは、早めの時間だと出勤前のホステスさんや黒服が、戦闘モードに入る直前の独特の気配を漂わせている夜の銀座らしいエリア。
地味なビルの地味なエレベーターに乗って2階へ。地味ながらキリッとした引き戸を開けて店に入る。
隠れ家っぽい雰囲気が漂うものの、薄暗い感じではなく、明るく清潔感があって居心地がよい。
大将の立ち姿、二番手さんの様子それぞれがいい感じ。うまく表現できないが、“イメージ通りの感じ”とでも言おうか。
大箱でなく、ちょっと馴染みになれたら楽しそうな寿司屋を漠然と想像してみると、きっと「池澤」はイメージ通り。
肝心の食材は、銀座八丁目に店を構えるだけにたいていのものが間違いのない旨さ。
あえて変な表現をすると、特徴がないところが一種の魅力にも映る。特徴がないというと怒られそうだが、これが結構ポイント。
奇をてらったものがない、大げさな食材が威張って出てくるわけではない、やたらと種類ばかり揃えているわけでもない、食べ方を押しつけるわけでもない、メディアに露出しているわけでもない、その上で何を食べても笑顔になれる。
これって結構当たり前のようでいて難しいことだと思う。
純粋に寿司好きな人なら満足できると思う。やたらと小料理に走るタイプの店が好みなら物足りない人もいるだろうが、「池澤」のスタイルは、潔い感じがする。
誉めてばかりで、なんか回し者みたいだ。
最近食べたもので印象的だったのは、旬のカツオ。酢醤油とカラシで食べさせてもらった。カツオ大好きの私だが、この食べ方は初めて。
もちろん、大げさな話ではない。その場で酢と醤油を合わせてカラシを用意してもらっただけだから、単純といえば単純。でも、その一工夫が、客に美味しく食べさせようという店の姿勢を単純に表わしているのだと思う。
レギュラー的な存在の毛ガニも、つまみで頼むと半分にカットした甲羅にあらかじめ剥き身を詰め込んだミルフィーユ状態で供される。
剥き身と甲羅の境目、すわち剥き身を食べ終えるあたりにしっかりと芳醇なカニミソが登場するようになっている。
この仕込み、かなり厄介な作業だと思う。お店の誠実さだろう。
また回し者みたいになってしまった。
ボタンエビや茹でた車海老の質もバッチリ。穴子も丁寧、白身や貝類も間違いない。握りのシャリは赤酢でほんのり色づいており、素直に美味しい。
お酒も気のきいたラインナップが揃っていて、素直に酔っぱらえる。
素直に楽しく素直に美味しい。
だから素直に夜の街にパトロールに出かけてしまう。
パトロール隊の前線基地として実に魅力的なお店だ。
2008年9月29日月曜日
鮨 池澤 銀座
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