2023年2月17日金曜日

普通の寿司屋


このところ「普通の寿司屋」を求めてさまよっている。いつの間にかバカ高い寿司屋がさも王道です!みたいな感じでブイブイと幅を利かせるようになってきた。何となくそんな風潮がイヤだ。


元々は江戸のファストフードだったのが寿司である。銀座や六本木あたりに増殖するバカ高い寿司屋とは違う「普通の寿司屋」を楽しんでこその寿司通?だと改めて思う。

 



このブログでも何度か書いたが、私は寿司修行を長年続けた。客としての修行である。全国津々浦々のお寿司屋さんで時に恥をかき時に叱られ諸々の知識を得た。

 

ひとり5万も6万も取るボッタクリまがいの店も何度も経験した。コースしか提供しないヘンテコな寿司屋も訪ねた。店ごとに多様性があるのは当然だが、値段に関してはいくら何でも常識的なラインはあるはずだと思う。

 

もちろん、一人5万の店でも客がそれを良しとすれば私がブツクサ言う話ではない。それでも日本人の国民食としての寿司を考えた場合、適価はそこではない。夜の寿司屋の場合、飲んでつまんで握ってもらって一人12万の範囲で収まってもらいたい。

 

あくまで普通に楽しく酒を飲み、それなりに気が利いたツマミをもらって握りをしっかり楽しむパターンを想定している。頼むネタによって随分お勘定は変わるが値の張るネタもちょこちょこ頼む前提だ。

 

もちろん、住宅街にあるような店によってはこんな“お好み”のパターンでも余裕で一人1万円を切ることは充分に可能だ。むしろそのぐらいが「普通の寿司」の水準だろう。

 

今日取り上げるのは都心部にある一見敷居が高そうなオジサマ好みの店である。家族連れよりもネクタイ族を顧客層に持つような店とでも言おうか。出前はやっていない路線の店である。

 

エンゲル係数破綻男である私はにその種の店で好き勝手に晩酌兼夕飯の時間を過ごすことが多い。外食だから安くはないがバカ高いのも困る。寡黙な大将が魔物と戦っているような顔で寿司と向き合っている凜とし過ぎた雰囲気の店も居心地が悪い。

 

普段の私は雰囲気も味も値段も納得の寿司屋に常連顔して通っているのだが、もともと寿司屋を新規開拓することを趣味みたいに面白がるクセがあるから他にも知らない店を探検したくなる。

 

最近も立て続けに34軒を探索してきた。どの店もさっき書いたような値段で収まる店ばかりだから特別高級な路線ではない。だからすべてが最高というわけではない。でもそれぞれに強みや個性があって面白かった。

 

 

こちらは銀座一丁目にある「鮨処まる伊」で出された蟹味噌の笹焼き。蟹味噌を普通に出さずにこうやって出すことで非日常感?につながって良かった。熱燗が進んでしまった。


冒頭の海老の握りもこちらで食べた。ヅケのような老舗っぽいネタもあるがサーモンも置いてあるカジュアルさが悪くない。

 


 

コハダをガリと一緒に和えてもらったツマミの画像は同じく銀座一丁目の「福助本店」での一コマ。こちらは大箱系チェーン店だが、少し高級感を出している店なので簡単な接待や簡単なデート?などに使い勝手が良さそうな雰囲気だ。

 


 

煮ハマグリ、煮ホタテ、穴子の握りである。煮ハマなんかを常備してあるあたりがニクい。チェーン展開している大箱系の回らない寿司屋にしては狙い目だと思う。

 



 

こういう形状の手巻き寿司の元祖を名乗るのが「築地玉寿司築地本店」だ。ここはカジュアルなチェーン店で家族連れなどにも人気の店だが、築地の目立たない場所に位置する本店には何度も出かけている。

 

コロナ禍の始めの頃のこと。多くの飲食店が閉まっている中、昼夜の通し営業をしていたこの店にある日の夕方にフラッと入ってみた。街に人の気配が無くなっていたようにこの店もガラガラだった。


悪評高きアルコール提供規制も早い時間なら関係なかったからノンビリ過ごした。あの頃は外食自体が悪いことみたいな変な同調圧力があったからこの店の存在が有難かった。

 

私にとってカジュアル系の大箱店も悪くない、というか、案外使い勝手が良いことを知るきっかけになった店だ。良い意味で職人さんとの距離があるから気兼ねせずにボーっと過ごせるし、居酒屋みたいな一品メニューが豊富なのも楽しい。

 


 

職人さんと対峙するような寿司屋も楽しいが、時には放っておいて欲しい日もある。そんな気分の時はこういう店の隅っこで贅沢にウニをツマミにダラダラ飲むことが多い。

 

続いては有楽町の交通会館地下にある「照鮨」。私は交通会館のレトロな感じが大好きで1階にある本屋に行ったついでに用も無いのにビルの中をウロウロしている。地下一階の古めかしい喫茶店でトマトジュースを飲むのが習慣みたいになっている。

 

照鮨の存在は知っていたが先日夜の早い時間に初めて覗いてみた。場所柄ランチで商売は成り立っているのか、夜は穴場なイメージだ。ベテラン店主がのっそり仕事をしているユルい感じが悪くない。テレビがついている店である。そういう普通っぽさ?も一人ノンビリ晩酌をする際には好都合だ。

 

ネタが少なかったのが残念だったが、そこは長年にわたる修行を経てきた私である。あるものの中から自分の好きなような組み立てを考えて楽しんだ。寿司屋の楽しみ方を自分なりに分かっている人には良い店だと思う。

 



 随所に昔ながらの寿司屋のこだわりが感じられるのが良かった。これも修行!の成果あってこそ気付けたのだと思う。茹でダコの絶妙な塩加減や火加減、赤身のヅケの加減、シャリのしっかりした酢飯感ともに老舗の個性を感じた。ツマミでもらったイクラが塩イクラだったのも昔の寿司屋っぽくて嬉しかった。

 



ウダウダと書いてみたが、結局のところ寿司屋を楽しめるかどうかは客自身が自分なりのスタイルをしっかり確立できているかどうかに尽きると思う。

 

おまかせコース一辺倒の店を不思議に思わず、それをまた寿司をよく知らない若者ばかりが書き込むネットのクチコミを元に有り難がるようなタイプの人なら昔ながらの渋い寿司屋の良さは理解不能だと思う。

 

それをことさら悪く言っても始まらないが「普通の寿司屋」の中に自分好みの味や面白さを見つけるのはちょっとしたオトナの楽しみだと思う。

 

 

 

 

 

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