家庭料理には縁が無くなってしまった分、出来合いの簡単調理モノみたいな安直な食べ物には詳しくなった。ここ30年ぐらいでコンビニの惣菜や冷凍食品、レトルト食品は随分進化した。今の時代に中高年が一人生活になっても昔ほどは困らないはずだ。
10年ほど前、何度目かの独身になった際にレトルトカレーの研究に励んだことがある。全国各地からご当地カレーなども取り寄せて自分好みのカレーを探した。マズいレトルト食品を食べると独り者の侘しさが強まるから頑張ってウマいものを探した。
1個2千円といったヘンテコなカレーまで試したが、結局気にいったのは2~3種類に絞られた。私は欧風カレーが好きなのでレギュラーとして採用されたのはそんな路線の商品ばかりである。
わが家の米に合わせるにはインドカレーやタイカレーだと違うし激辛カレーは基本的に苦手。日本の正しいカレーだと芋やニンジンが邪魔だから欧風カレー一択になるわけだ。
そのあたりの研究成果は6年ぐらい前にも書いた。
https://fugoh-kisya.blogspot.com/2017/08/100.html
6年前にも紹介している「ガヴィアル」のレトルトカレーが今でも私のお気に入りだ。神田神保町にある人気店の味を再現した商品である。わが家には常に最低でも3個は常備している。
最近、パッケージが変わったが味は依然と同じ。肝になっているのは原材料表示にも書かれている「砂糖」ではないかと私はにらんでいる。カレーとしての辛さの裏にほんのり甘さが感じられる。
神保町にはわりとちょくちょく出かける。わがオジサマバンドの練習拠点である音楽スタジオがあるので時期によっては月に2度3度と出向くこともある。いつも
いつも頭に浮かぶのは「本物のガヴィアルの味はレトルトとどのぐらい違うのだろう」という好奇心だ。いつも思っているのにナゼか今の今まで神保町の実店舗を訪ねたことがない。
食べたいような食べたくないような…という心境である。もし本物がレトルトの10倍美味しかったら私が愛するレトルトのことを一気に嫌いになりそうだし、その逆にお店のほうがマズいと感じたら自分の味覚に自信が持てなくなるような気がする。そんな複雑な気分でお店の前を素通りしていた。
そんなウジウジした気持ちのまま歳月が過ぎた「ガヴィアル問題」だが、先日ひょんなことで終止符を打つ時が来た。日本橋のコレド室町の中にガヴィアルの支店を見つけふらふらと入って念願の本物を食べた。私にとっては事件である。
本店ではなく支店、それも職場や家の近所だったから身構えずに吸い込まれてしまった感じである。ここ数年の葛藤は何だったんだと一人つぶやきながら期間限定だかの和牛がゴロゴロ乗ったカレーを注文してみた。
念願のガヴィアルのカレーをスプーンですくい全神経を集中させて味わってみた。ふむふむ、愛するレトルトとほぼ一緒である。単純明快にウマい。妙な安堵感に包まれて幸せな気分でムホムホと食べ進んだ。
特別に乗っかった和牛の存在など記憶にない。カレールーの味が知りたかったからたとえ具材がイセエビだろうがアワビだろうがきっと覚えていないだろう。だったら普通のカレーを頼むべきだった。和牛のために何百円か損した気分だ。
食べ終わって達成感に包まれるとともに別な疑問が頭をよぎった。「それならレトルトでいいんじゃないか」という元も子もない真理?である。カレーマニアみたいな繊細な味覚があれば別だが、私には実店舗もレトルトも大きな違いはなかった。
レトルトは確か350円ぐらいである。お店だと1800円だ。富豪ならそんなことを気にしてはいけないのだろうがこの差は結構大きい。
でもお店だったら当然に上げ膳据え膳だし、レトルトとして商品化されていないポークカレーやチーズカレー、エビカレーなども楽しめる。悩ましい話だ。新たなガヴィアル問題の勃発である。
こんなことで脳ミソをフルに使っているわけだから私の日常は実に平和である。
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