2024年6月17日月曜日

紫陽花と鰻

 


 アジサイの季節だ。なぜかウナギが食べたくなる季節でもある。本来は冬が旬の食べ物だが、いまは養殖が基本だから年柄年中が旬である。個人的には夏の訪れに恐怖を覚える季節になると防衛本能的にウナギを食べたくなる。

 

5月末にコロナになってしまい、復活した6月の前半は2週間で何とウナギを5回も食べてしまった。元気を回復させたい深層心理のせいだろう。5回はそれぞれ違う店で食べた。すべて夕飯である。初訪問の店が3軒。我ながら強欲?な気がする。

 

何年か前に日比谷にオープンして以来、やたらとネットを中心に評判になっていた店にも行ってみた。たまたま中途半端な時間だったので並ばずに入れた。店の名前は「うな富士」。元は名古屋の店だという。

 

今まで行ったことがなかった理由はただ一つ。蒸さないウナギだから。こちらの店ではウナギは蒸さずに直焼きで提供される。関西風である。地焼きとも呼ばれるが、そんなパターンの店が東京の都心で大人気になっているわけだ。

 

直焼きのウナギがマズいというつもりはない。あくまで地域性の問題であり味についても好みの世界である。しっかり蒸しの工程を入れた関東風が断然好きな私だが、過去に何度か直焼きのウナギもそれなりに美味しく感じたことはある。クセにはならないが。

 

で、うな富士である。広い店内を見回すと「ひつまぶし」を食べているお客さんが案外多かった。これまた関東人はさほど好まない食べ方である。私が注文したのは特上鰻重。その店の力量やレベルをみるには値が張っても上級ラインを頼むのが手っ取り早い。

 

回転が良い店なんだろう。割とすぐに鰻重登場。晩酌のアテにしようと思っていたうざくも一緒に出てきたのは残念。このあたりは老舗の渋い鰻屋さんの心配りとは違う。

 

 

特上はただウナギが多いだけだったようだ。テンコ盛りである。お重の蓋は横に立てかけられていた。こういう見た目は若者にはウケそうだ。私もちょっとワクワクした。

 

肝心のウナギは直焼き独特の食感。外側はパリっとしているわけではないがギュっと焼きしまった印象。身が厚いウナギだから中身のトロける感じはしっかり味わえた。

 



さすがに人気店だけあって私がこれまで食べた蒸さないウナギの中では美味しい鰻重だった。とはいえ、基本的に私は「蒸し派」だから満足したかといえば否である。

 

こちらの特徴は厚い身のウナギを強力な炭火で一気に焼き上げることらしい。そのせいかウナギの外側の焦げっぽい風味がどうにも鼻につく。「焦げ」の加減で味の印象は大きく変わっちゃうことを再認識した。

 

話は変わる。以前よく出かけた日本橋の常盤橋近くの「いづもや」。独自開発したウナギの魚醤を使った「いづも焼き」を肴に冷酒を飲むのが好きだったのだが、一人でふらっと入りにくいせいもあってかなりご無沙汰している。

 

その「いづもや」の“イートイン支店”の良い評判を聞いたので珍しく日本橋三越のデパ地下で夕飯を食べることにした。一人メシだったのでデパ地下のイートインだろうがお構いなしである。

 

この日は酒よりもメシの気分だったのでそういう気分の時はデパートのイートインは穴場かもしれない。実際、メニューに酒は小瓶のビールしかなかったし、ツマミになるような一品もごくわずかだった。当然ながら「いづも焼き」も無い。黙って鰻重をか食らうことを前提にしているみたいだ。

 



 

本店とデパ地下のイートインを比べちゃ悪いかと思ったが、出てきた鰻重はちゃんと美味しかった。これなら中途半端な専門店でもったいぶって出てくる鰻重を食べるのがバカみたいだ。充分満足した。気軽にサッサと鰻重だけを味わいたい人なら選択肢に入れるべきだと感じた。

 

続いては少しカジュアルな「登三松」という鰻屋さんだ。東銀座や新富町から近い位置にある。なんとなく敷居が高いような鰻屋が多い都心部にあってこちらは気軽な雰囲気。店内には橋幸夫や柳沢慎吾がこの店を雑誌で紹介した時の記事がベタベタ貼ってある。

 

この日は肝焼き、白焼き、鰻重を注文。肝焼きはやたらと肝が大量に刺さった串が出てきた。イヤな予感(笑)。今どきの鰻の肝焼きは店でさばいた鰻の肝ではなく輸入品の肝を使って間に合わせるのが珍しくない。

 


 

高級店だろうと夜の遅い時間に肝焼きが品切れになっていなければ、まずそっち系だろう。だからといって一概にマズいとも言い切れないのだが、中には怪しい味?に当たっちゃうこともある。この日食べた肝はちょっと残念系。半分残してしまった。

 


 

気を取り直して白焼きで燗酒を味わう。しかし、妙に小骨が多い。初めて入った店で小骨が多いと印象は悪くなる。たまたまかもしれないが、この日の白焼きは結構食べにくかった。

 



白焼きで気になり始めちゃうと肝心の鰻重の方でも意識がそっちに行ってしまう。やはりちょっと小骨が気になる。タレの味もコメの加減も悪くないのにもったいないことだと思う。

 

以前、食べログの評価が妙に高かった中央区某所の鰻屋さんを初訪問した際にもそんな経験をした。鰻の個体差、処理した職人の違い等々の理由でその時だけ運が悪かったのかもしれないが、そんな経験をすると再訪する気にはならない。

 

何度も通っているお気に入りの鰻屋さんならば、たまたま小骨が多い鰻に当たってもそれを機に行かなくなることはない。そんなものだろう。

 

なんだか長くなったので今日はこのへんで。

 

 

 

 

 

 

2 件のコメント:

  1. 田舎なんですが、鰻の本田っていう店がありました。今も有ります。秋刀魚みたいに長いうなぎか丼にどんと乗っかって蓋からはみ出して、お値段980円でした。昭和58年頃の話。

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  2. ゆうこ様

    コメントありがとうございます。確かに当時は2000円も出せばちゃんとしたウナギが食べられた記憶があります。980円はまた格安ですね!

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