2025年2月7日金曜日

大河ドラマと散歩


今年の大河ドラマは蔦屋重三郎の出世物語だ。吉原を舞台にノシ上がった人物だから、いま描かれている世界は吉原ばかりである。

 

吉原イコール色街。悪く言えば売春街である。そう書いちゃうとNHKも随分と思い切った作品を大河に選んだものだと思いがちだが、当時の吉原は一般にイメージする売春街とは一線を画す存在だったのも事実である。

 

当時の吉原は文化や情報の発信基地だった側面があることは知る人ぞ知る。そういう意味でかつての吉原を単なる色モノとして捉えずに文化芸術の観点で描こうとするNHKの意欲には敬意を表したい。

 

大河ドラマで描かれるように浮世絵や黄表紙などの軽めの出版物などは吉原の遊女や歌舞伎役者を描き始めたことで隆盛を迎え、男女を問わず着物の着こなしなども吉原が流行の発信源になっていた。いわば昭和の頃の六本木や原宿に近い感覚だったのかもしれない。

 

実際に吉原に足を踏み入れる客がすべて遊女と過ごしたわけではなく、いわゆる街ブラだけで済ますケースも多かったという。単なる売春街だと思い浮かべるとまるで別な世界だったことを見落としてしまうわけだ。

 

そんな話を現在の夜の街にも絡めて10年以上前にこのブログでも書いた。参照していただきたいと思う。https://fugoh-kisya.blogspot.com/2012/02/blog-post_27.html

  

学校教育の場面では文化面を細かく教わることは少ない。仕方ないことだが、ちょっともったいない話だと思う。英雄や権力闘争、事件事故が中心になるのは当然だが、背景にある一般人の暮らしや文化の醸成みたいな部分もきちんと後世に伝える必要がある。

 

各地にある歴史記念館みたいなところを覗いていると、ふむふむと感心することは多い。教科書では学べないような当時の社会情勢が垣間見れて面白い。

 

東京なら両国にある江戸東京博物館は何度訪ねても発見がある。ほんの200年ほど前の先人たちがどんな環境で何を楽しみに生きていたのか、どんな環境で何を大事にして何を口にして日々をどう過ごしていたかを想像するとなかなか楽しい。

 

いま吉原と聞くとソープ街の印象しかない。現在の特殊性だけでなく歴史の負の部分の影響もあってか、ドンヨリとした「気」を感じるような場所も多い。でもそんな場所が一時代を築いた場所なのは厳然たる事実だ。諸行無常を強く感じる場所だと言えよう。

 

さて、大河ドラマの話だ。主人公の蔦屋重三郎を演じるのは横浜流星である。売出し中の俳優というイメージだったから大抜擢だろう。江戸っ子の“イキでイナセ”を表現しようと奮闘している。

 


 

この俳優、個人的にはメジャーになる前からよく見ていた。私の息子がやたらとハマった「列車戦隊トッキュージャー」の主役じゃない俳優として下積み時代?を送っていた。トッキュー4号のヒカリくんである。

 

戦隊モノといえばいくつもあるのに、なぜか私の息子はトッキュージャーしか見ない偏屈者だ。いまだにウチに遊びに来るとアマプラを勝手にいじってトッキュージャーを熱心に見ている。

 

主演は志尊淳。横浜流星は脇役的にエイヤーと戦っていたのに今や大河ドラマの主役だ。感慨深いったらありゃしない。はたしてダウン症の息子は今の大河ドラマを見てトッキュー4号が主演を務めていることを分かっているのだろうか。おおいに気になる点だ。

 

そんなことよりちょっとアガったのが、蔦重重三郎が吉原から日本橋に進出して開いた書店「耕書堂」が私の今の住まいの近所にあったことである。

 

道端にある役所が設置した由緒書看板を読み込むことが私の散歩の楽しみなのだが、小伝馬町の近くをぶらぶらしている時に「耕書堂跡」を発見した。

 



いま自分が立っているまさにその場所で蔦屋重三郎が活躍していたのかと考えると歴史のロマンを感じる。およそ250年前のことである。

 

遠い遠い昔ではあるが、私だってこの世に生まれて既に60年があっという間に過ぎようとしている。そう考えると200年という時間などわりと最近だったのかとも思える。

 

中央区に引っ越してきて随分と経つ。散歩ついでに見かける由緒書きの数はさすがに都内でもかなり多いほうだ。人形町あたりなら地名通りに往時は人形浄瑠璃など見せ物小屋がたくさんあったそうで、そんな賑いを想像するのは楽しい。

 

小伝馬町あたりなら江戸時代にずっと置かれていた牢獄が有名だから吉田松陰先生終焉の地みたいな碑も目にする。いろんな歴史が重なっていた場所にいま自分が立っていると感じるだけでロマンに浸れる。

 

今年の大河ドラマもそのうち日本橋方面が主要な背景として描かれ始めるだろうからますますハマってしまいそうだ。

 

 

 

 

 

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