2008年3月18日火曜日

イルカの力

ニュージーランドで、浜辺に迷い込んで苦悶していたクジラの親子を、一頭のイルカが救出したニュースが世界を駆けめぐった。

このイルカ、海岸で地元の人と遊ぶことでも知られるバンドウイルカだそうで、地元の人がどうやっても沖に戻せなかったクジラを、わずかな水路に誘導して脱出させたという。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200803120023.html

イルカがおぼれている人を助けたりする話は、昔から世界中で知られている。高等な頭脳を持つ哺乳類だけに、彼らにとって、そんな作業は朝飯前なのだろう。

イルカが元来持っている、テレパシー的な能力、コミュニケーション能力は古くから人類の研究課題で、第二次大戦時には、爆弾を抱えさせて、敵艦に突撃させる訓練なども行われていた。

聞いた話によると、やはり先の大戦時に、イルカが使用する言語の解析が、かなりの所まで進んだものの、軍事利用を恐れた研究者が解析データを葬り去ったという話もあるそうだ。現在世界中で同様の研究が行われているが、当時のレベルにはまだまだ及ばない段階だとか。

結構、イルカにはこの手の逸話が多い。人間がうまく付き合えればいろいろな世界が広がりそうだ。実際に、フロリダあたりでは、自閉症などのセラピーとしてドルフィンプログラムが組まれているそうだ。イルカが発するパワーやテレパシー的なものが人間にとってヒーリング効果を発揮することは間違いないようだ。

私自身、以前、実際にイルカと水中で遊んでみたいと考え、比較的野生に近い状態のイルカと遊ばせてくれる場所を探して旅したことがある。

スノーケリング限定であれば、本物の野生のイルカ群と泳げることで有名なバハマ近郊・シルバーバンクへのクルーズが圧巻との評判だが、この時の私は、水中撮影にもじっくり取り組みたかったため、スキューバのタンクが使えて、カメラの持ち込みにも制限が無くて、おまけに限定的な水域ではなく、自然な海でランデブーできる場所を探した。

結果、はるばる訪ねたのが、中米・ホンジュラスのロアタン島。いろいろ乗り継いで最後は、あり得ないような軽飛行機で死ぬ思いで到着した。

後部座席横のタラップ兼出入口扉が飛行中に開かないよう、乗客に押さえさせておくというトンデモない飛行機だった。

ちなみに、俗に「天国に近い島」という表現をあちらこちらで聞くが、その意味は、異常に苦労してたどり着くというのが真相だと思っている。死にそうとか、死にかける思いでたどりつくから、天国に近いというわけだ。

さて、ロアタン島。周囲からほとんど隔絶されたエリアに、野性味タップリのリゾートがある。一見すると掘っ立て小屋のようなコテージが並んでおり、最低限のものしかない。とはいえ清潔感もそこそこあり、それなりに快適。コテージのベランダに出ると、美しい原色のハチドリが子育てしてたり、突然やってきたクジャクが羽を広げていたりと、ビックリもするが楽しい。

肝心のドルフィンダイブは、1日数回実施され、リゾートが保護・飼育しているイルカが、その日の調子によって、外洋に出てダイバーと遊んでくれる。

ここのイルカ達、自然の海のなかに広大なネットが張られたエリアで管理されている。
ネットは水面の高さ程度がてっぺんで、軽く跳ねれば、簡単に外洋に脱走可能。

たまに勝手に出て行くこともあるらしいが、結局お気に入りのわが家に戻ってくるらしく、飼育されているとはいっても、結構、野生の感覚も残されている感じ。

実際、ある日のドルフィンダイブの際に、ダイバーと遊ぶ場所まで来たイルカの前に、野生のイルカが表れ、飼われているイルカをさらっていってしまう一幕があった。さらわれたと言うより、飼われているイルカが興味を持っちゃったようで、半日ぐらい行方不明になっていた。

芸をするわけではないここのイルカ、あまり人間におもねっている感じはなく、水中で遊んでくれる際は、実に感情表現が分かりやすい。その様子ははっきりと大きな目の表情で察知できる。

楽しそうな目、うっとおしそうな目、嫌悪感を表わす目、それぞれがちゃんとこちらに伝わる。

水中カメラのストロボをダブルで頻繁に光らせていた私の前では、迷惑そうな目をするし、威嚇に近いような動作もされた。

カメラを水底に置いて、彼らをまねてドルフィンキックや変な回転動作をしてみると、柔和な目でしばらく間近で泳いでくれる。

触れてみれば、相当な重量感と筋肉に圧倒される。

イルカの機嫌にもよるが、イルカの動きに合わせて水深15メートルほどの浅地で30分程度のランデブーだ。滞在中、可能な限りドルフィンダイブに参加したが、終わったあとに、不思議な「ほっこり感」に包まれるのが常だった。

念願がかなった高揚感がもたらす気のせいかもしれないが、確かに不思議なパワーをもらったように思えた。

その後、メキシコなどでいわゆるプール状に閉鎖されたエリアでの、ドルフィンスイムを何度か経験した。イルカの鼻先で足を推してもらったり、背びれにつかまってブギーボードのように進んでもらうアトラクションだ。

それなりに楽しかったが、こういう場所で管理されているイルカは、ロアタン島のイルカに比べると、やはり水族館的というか、おおらかで気ままな感じが希薄だったのが印象的だった。

本物の野生のイルカと偶然水中で遭遇するのが私の夢だ。いまのところ、夢は夢のままだ。私の場合、割と頻繁に潜水中にイルカの鳴き声に遭遇することはあるが、姿形は見せてもらったことはない。

ピーピー、チーチーと響くイルカの甲高い鳴き声は、水中という特殊環境では、前後左右上下のどっち方向から聞こえてくるのか分からない。まるで鳴き声に包まれている感覚だ。

声がするといつもキョロキョロしてみるが、彼らは、水平透視度より遠く離れたところにいるか、物陰に隠れてこちらの様子を見ているのだろう。さすがに簡単に姿を見せない。

きっと、彼らが敬遠したくなる“気に入らない奴オーラ”を私が発しているのだろう。もっと修行して、彼らがこぞって会いに来たくなるような雰囲気を漂わす人間になりたい。

2 件のコメント:

  1. はっきり言ってプロ並み←写真!

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  2. お褒めいただき恐縮です。でも、この撮影は、イルカ潜水を5回ほどして、合計シャッター数は350回以上。気にいったカットは10数枚。効率は最悪だったのが実態です。

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