近所のキックボクシングジムに通い始めたのは昨年2月のこと。一念発起して身体をイジめたおかげで体調は良くなった。当初は週に2回も通っていたが、さすがに昨年の秋ごろからは週に1回のペースになった。でも行けば行ったでありえないぐらいの発汗時間を過ごしてきた。
ところが、いろんな事情で7月中旬からサボりはじめ体重もぶくぶくと増加してきた。2ヶ月サボることはやめちゃうサインだと誰かに言われて、先日久しぶりに足を運んだ。
2か月近くサボっていると最初のウォーミングアップが既にキツい。ケガ防止のために家を出る直前にストレッチを30分ほどやってからジムに行くのが私のパターンなのだが、家でのストレッチすら妙にきつかった。
加えてジムでのウォーミングアップである。ほんの5,6分の基礎的な動きをするのだが、これが終わった時点で疲れちゃって帰ろうかと思った。さすがにそれはアホなので久しぶりにサンドバックに向き合う。殴る蹴るの動きを自分なりに負荷をかけて頑張る。ゼエゼエである。
この日は途中から一種のランナーズハイ状態になり、今まで以上にサンドバックとミット打ちに時間を費やした。2か月近くサボったのに過去最長の頑張りは身体に良いはずがない。
終了後、バテバテになったのでいつもならさっさと更衣室に引っ込んでとっとと着替えて帰るのに、練習場の端の休憩椅子に座ったまましばし放心状態だった。
私としてはシンドかったものの心地良い疲れでダラダラしていただけだったのだが、しばらくしたらスタッフが二人で心配そうに声をかけてきた。
死んでる?…。おそらくそう思われたのだろう。私が元気に反応したら心底ホッとした表情に戻った。私はジムの会員の中では上から3番目の高齢者らしい。若いスタッフからすれば要注意対象である。何だか哀しい。
でも休憩椅子に座って脱力状態でビクともせずに座っていた私は「あしたのジョー」のラストシーンそのものだったのだろう。こんなにスリムではないが…。
さてさて、キックジムもウチから徒歩3分だが、ちょっといい感じのお寿司屋さんを徒歩2分30秒の距離に見つけた。今のマンションに住んで3年以上たつが、至近距離の店を案外見落としているケースは多い。このお寿司屋さんもその一つ。
存在は知っていたのだが、ネットのクチコミがコース料理の体験談ばかりだったせいで敬遠していた。自分の好みで食べられないイマドキ系?の店はエセ寿司屋だと思っている私の信条が邪魔して覗いたことがなかった。
とある日、やはりわが家からさほど遠くない別なお寿司屋さんを開拓しようと暖簾をくぐったら運悪く満席。仕方なく近くにあるその店に行き意を決して改めて「こちらはコースだけですか?」と尋ねてみた。
すると「お好きなものをなんなりとどうぞ」という正しい返答があったので初トライすることに。やはり、ネット情報を鵜呑みにせず自分の耳で聞くべきだと痛感。
家族経営の居心地の酔いお店だった。いい感じの大将とその弟、そして銀座の名店で修業していたという若い息子さん、おまけに大将のお母さんらしきマダム?もお運びを手伝っている。皆さん人当たりも良い、キチンと手を入れた真っ当なネタが揃っているうえにエラそうな態度はゼロ。おまけに場所柄もあってか、煮ハマグリのような江戸前の仕事ネタもいくつもある。穴子も上等だった。
思えば界隈に引っ越してきた際に何軒かのお寿司屋さんを開拓してみた。日本橋の三越側のエリアを中心になかなか良いお店がいくつかあった。場所柄、単なる生魚中心ではなく仕事系のネタを出す名店がいくつもあった。
スットコドッコイみたいな寿司屋が多い銀座と違って日本橋周辺のお寿司屋さんは極端に表現するなら「真っ当」だった印象が強い。上等なネタ、丁寧な仕事ぶり、店の雰囲気ともに高水準なのに値段については納得できるレベルに収まっているお店が多かった印象がある。
銀座の7丁目8丁目ともなると夜の蝶がヒラヒラと舞う特殊な街だ。お寿司屋さんの“ノリ”もやはり他の街とはいろんな意味で異なる。その点、日本橋あたりだと質実剛健というか、道理をわきまえているようなお店が多いのだろう。客層の点にもそうした違いは出るのだと思う。
ここ数年、新富町にある某お寿司屋さんがお気に入りになり、他の店を新規開拓する気持ちがまったく無くなっていた。それはそれで悪いことではないが、隠居の身でもあるまいし、時には好奇心を満たすことも必要だ。
かつては毎月毎月何軒も道場破りかのようにお寿司屋さんの新規開拓に励んだ私だ。あの頃ほどのエネルギーはないものの、あの頃に身につけた私なりの“新規店でとっとと上客になるマル秘マニュアル”はまだまだ有効だ。時には冒険するのも一興だと感じた。




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