「コレステローラー」。妙にカッコイイ響きだ。ロックンローラーみたいだ。永ちゃんとかハマショーみたいだ。
コレステロールの摂取過剰に注意しないといけない私だが、ついつい毎晩のように「コレステローラー」だ。
アマノジャクを美徳とする場面では、「アマノジャッキー」を名乗り、体重を減らしたいときは「ダイエッター」になる私だが、その正体は「コレステローラー」なのである。
血液検査の結果を見たドクターは「脳こうそくになって身体が自由に動かなくなっちゃいますよ」などと恐ろしいことを言う。仕方がないから、そのドクターを誘ってイクラを沢山食べてきた。
ドクター同行ならコレステロール摂取もきっと大丈夫だろう。二人でムシャムシャと食べる。この季節ならではの生のイクラだ。ドクターも満面の笑顔だ。これでコレステロールうんぬんはしばらく言われないで済みそうだ。
私の肝臓、すなわち、γ-GTPに関してもうるさく注意するドクターだ。仕方がないので二人ではしご酒。しこたま呑んだ。ドクター同行ならきっと問題ないだろう。お互いかなり酔う。
この日、1軒目の食事は銀座の「さ久ら」で寿司。その前の週にもお邪魔した。8丁目のビルの地下にシッポリ佇む穴場だ。
カウンターだけの小箱だが、窮屈感はない。まだ30代の若い大将が切り盛りする。そのせいか、どこかモダンな雰囲気があるが、モダンすぎて落ち着かない様子とは違う。いい塩梅だ。
画像はシラスを沖漬け風にしたツマミ。シラスさんもコレステローラーの敵なのだが、日本酒と合わせたら抜群。私のバッグに常備してある備前のマイぐい呑みと並べて眺めてみた。見ているだけで心が穏やかになる。幸福だ。
行くたびに「もっと頻繁に通おう」と決意するのだが、ついつい間隔が開いてしまう。お姉様方にニコニコしてもらえる店なら一晩で2~3軒は回れるが、食べる店となるとそうはいかない。どうしても1軒だけだ。
身体は一つ。食べたいものはアレコレある。銀座にばかり出るわけでもない。どうしてもご無沙汰状態が長くなってしまう。まあ、だからこそ訪ねるたびに新鮮な気分で楽しめるのかもしれない。
軽く火の入った甘鯛の握りに少し酸味のある温かいだし汁をかけた逸品が出てきた。刺身や珍味の合間にこういう一品料理は嬉しい。“日本料理!”という味わいだ。変に洋風にアレンジする創作系とは違って実に真っ当。
黙っていても美味しいものを出してくれるが、小さいお店だけにその日の食材を聞いてアーダのコーダのいいながら状況に応じてワガママなオーダーも可能だ。
「カキバター」などとジャンクな注文をしても、この店らしい味付けでアレンジしてくれる。カキの風味がバターに負けない程度の微妙な味付けで、素直に舌鼓。バターコッテリもウマいが、カキの旨味がバッチリ引き出されている。
結局、料理の決め手は丁寧さとセンスなんだろうとつくづく実感。
話がそれてしまった。今日のテーマは「コレステローラー」だった。
9月24日付のこのブログで書いたシッポリ系の料理屋さんにも、ちょこちょこ行き始めた。銀座7丁目、数寄屋通りにある「O」。割烹というジャンルか小料理屋と表現すべきか良く分からないが、気のきいたウマいものを食べさせてくれる素敵な店だ。
先日、自家製の塩辛を食べた。塩辛などとあなどってはいけない。私にとって、塩辛のウマい店はそれだけで貴重だ。
市販の塩辛はたいていマズい。港町の海産物屋で仰々しく並べてあっても納得できるのは10個に1個もない。
「O」で出された塩辛はワタの旨味が凝縮されていてバンザイ。持参していたマイぐい呑みに燗酒を注ぎ、めくるめく官能の世界に浸る。イカワタさまさまだ。
イカの塩辛もコレステロールの塊らしい。だからウマい。
モツのピリ辛炒めもコレステローラー向きの一品だった。自家製コロッケも食べた。鮎の一夜干しも食べた。健康そうなイメージがある干物も実はコレステロールやプリン体が多い食品だ。だからウマい。
結局、最後に特製皿うどんも食べた。ソースもじゃぶじゃぶ投入。「麺、揚げ物、ソース」うっとりする組み合わせだ。遠からずアンコウ鍋も始まるらしい。アンキモが私を呼んでいる。コレステロール注入のためちょくちょく行かねばなるまい。
結局、食べることが好きな人間なら誰もがコレステローラーだろう。そうじゃない人はベジタリアンか虚弱体質の人ぐらいだ。
秋も深まってきた。白子とか珍味系の活躍するシーズンだ。コレステローラーとして忙しくなりそうだ。
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