今日のタイトルは、売れっ子のミュージシャンのことではない。ボクシングの話でもない。なんのことはない。また食べ物の話だ。
「スペシャルな揚げ物」をスーパーフライと勝手に呼ぶことにした。
揚げ物。なんて素晴らしい響きなんだろう。体重とかコレステロールとかいう厄介な問題がこの世に存在しなければ、24時間むさぼっていたい。
トンカツ、串揚げ、カニクリームコロッケ、鶏の唐揚げ、カキフライ、エビフライ、ササミチーズフライ、ハムカツ・・。
書いているだけでヨダレがべろべろと出てしまう。
人生後半戦に突入しているくせに相変わらず揚げ物に寄せる思いは、美しい女性を口説きたいという欲求と同じぐらい大きく深い。
でも食べない。いや、なるべく食べないようにしている。いや、結構食べている気がする。
先日のスーパーフライ体験を書いてみる。
高田馬場の鮨源をぶらっと訪ねた某日。席に着くなり「今日は和食の気分じゃない」という無礼極まりないセリフを放った。お寿司屋さんに対して実にトンチンカンなことを言ったものだ。
それはそれ。さすがに気の利いた板前さん達が揃っていらっしゃる。府抜けた私にアレコレと提案してくれる。
「ソースと揚げ物」「タルタルソース」というキーワードが浮上した。生食用の素材が売るほどおいてあるわけだから揚げ物の環境としては最高だ。
小骨一本無いスペシャルアジフライとピンピン生きている車海老を使ったスペシャルエビフライが真っ先に決定する。
その他にタイラ貝のフライが食感も良くオススメだというのでそれも注文。
そしてここからが今日の本題だ。
「クリームコロッケとかはお好きですか?」。徒然私の答えは「YES、WE CAN」だ。すると禁断のメニューを勧められた。
その名も「白子フライ」だ。ありそうで無いメニューだろう。旬の白子を天ぷらにするのは珍しくないが、フライは初体験だし、気付かなかった。クリームコロッケを凌駕するほどの美味だという。
ニコニコとヨダレを垂らしながら注文する。
揚げ物の準備と併行してタルタルソース作りが始まった。タマネギ、卵その他が威勢良く板前さんのプロのワザであっと言う間にみじん切りにされていく。
ワクワクする。タルタルソースが今まさに私のためだけに生まれようとしている。市販のタルタルソースをチューブごと大量にすすったこともある私だ。興奮する。勃○するかと思ったほどだ。
完成したタルタルソースは、もちろん最高にフレッシュで、人目がなければ速攻で全部ぺろっと食べたいほどだ。でもフライ連中に寄り添わせてあげねばなるまい。じっとガマンだ。
アジフライやエビフライがやってきた。タルタルソースにウスターソースを混ぜて食べる。まさに「口福」。幸せバンザイって感じだ。
ハイボールをグビグビ、サクサクのフライにタルタルソースをムシャムシャ。ワンダフルな時間が過ぎる。
そして真打ちがやってきた。白子フライ様の登場だ。フライだから見た目はただの揚げ物。しかし、その実力、その存在価値は圧倒的だ。ブランパンとかパネライの腕時計みたいにこれみよがしではないところが格好いい。パッと見ただけでは「別に~」って雰囲気だ。
まずはソースもタルタルもなしで味わってみる。
箸を入れる。中味がのぞく。ジュワリンと熱くなっている白子が恥ずかしそうに私を見ている。
やさしく口をつけてみた。彼女はいやがりながらも本能には勝てずに身をよじりながらその身を預けてくる。
バカウマ。この一言に尽きる。クリームコロッケという表現は確かに的確だが、もっと濃厚。脳と舌、そして全身にズキューんと旨味が広がる。
タルタルソース、ウスターソースもトッピングして食べてみる。ウマさ大爆発だ。まさに禁断の味だろう。知らなかった味に出会った嬉しさも加わってしばし興奮する。
ウヒャウヒャ喜ぶ私。でも禁断の味を勧めてくれたベテランの板前さんが私のスーパーフライにダメ出し。「もっとカラッと揚げないと」と言い残し、揚場に移動。
しばし待つと、色合いが濃くなったスーパーフライレジェンドが登場。衣がしっかりサクサクで中のジュンワリンぴゅるぴゅると絶妙なコラボレーションだ。
中味の素材が固さのないものだと、やはりガッツリ揚がって出てくると食感のコントラストも楽しめる。
でも白子食べ過ぎ。ちょっとヤバい。
数日後、銀座の「おかやす」でダラダラと呑んでいた。純和風シッポリ系のカウンター中心の料理屋さんだ。
以前にも書いたが、正当派和食プラスちょっとジャンクな料理も食べられる得難い店。
皿うどんにビーフシチュー、スープカレーもある。こういう気の利いたメニューを見ていると、ついつい私のわがままが顔を出す。
「白子をフライにしてくれる?」。知ったかぶって注文してみた。
しばし痛飲後、それは登場した。「カキフライなんか頼んだっけ?」と言いそうになってスーパーフライの登場だと気付く。
ガッツリしっかり揚がっている。噛めば溢れる白子の熱い情熱に大満足。きっとホロ酔いも手伝って大黒様みたいな表情をしていたはずだ。
この冬、マイブームになりそうだ。
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