こう寒いと、やっぱり熱燗でキュ~っと一杯やりたくなる。夏場にキンキンに冷やした酒を飲むのもいいが、冬の燗酒には勝てない。
あくまで常温である「冷や」が基本という年輩の人も少なくないが、寒い季節は燗酒に無性に惹かれる。
燗上がり、燗栄えという言葉があるように、お燗することで、より旨さを感じる酒も多い。
一説によると日本人は300年ぐらい前から寒い冬には燗酒に親しんできたらしい。ここ2~30年で広まった冷酒(冷やではない)が幅をきかす今では、お燗酒の肩身が狭い感じもあるが、文化的側面から見れば、燗酒のほうが正当派。
大げさに言えば、燗酒を愛でるのはオトナのたしなみと言えよう。
燗酒に使う言葉がまた良い。常温である「冷や」を分岐点に冷たい方に向かっては、涼冷え、花冷え、雪冷えなどと、酒の温度ごとに呼び方がある。
温度が上昇するにつれ、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、飛び切り燗などと言い表す。
細かな定義までは知らないが、先人たちが酒の温度にこだわってアレコレと楽しんできたことがうかがえる。
今の時代、夏場でも冷房で冷え切った身体を癒す時は熱燗がオススメだ。私も夏場には冷房を浴びた1日のシメにおでん屋あたりで熱燗を楽しむ。
冬であれば尚更だ。わざわざ熱燗を楽しむためだけに行く店だってある。レンジでチンも結構だが、そこはやっぱり、燗の付け方にこだわった店が嬉しい。
銀座のおでん屋の有名処である「やす幸」、「おぐ羅」あたりでは、錫のヤカンにこだわり、注文の都度、お燗番の板さんが飲み頃の温度を自ら猪口に注いで確かめてからグラスに注いでくれる。
これが呆れるぐらいにウマい。酒自体は、確か白鹿が1種類だけだ。勇名轟く銘柄酒もぶっ飛ぶぐらいウマい。
おでんやツマミもウマいが、私の場合、こうした店では、燗酒が主役で、食べ物はあくまで従者のような感じに思える。
錫(だと思う)のやかんを使うだけで不思議と極上の酒になる。やかんではなくても、意識の高い店では錫の「ちろり」もよく見かける。
錫がどんな作用で燗酒を変身させるかは知らないが、器の効用は無視できない。陶器の器に入れた水が腐りにくいとか、古くから器をめぐっては、いろいろな通説がある。
私自身、備前焼の徳利に事前に割水をした焼酎を数日寝かせて飲んでみて、そのウマさにビックリしたことがある。
燗酒の場合は、錫がイチオシみたいだが、他にもオススメの器やオススメの燗の付け方をご存じの人は是非教えてください。
このブログで何度も書いているが、私の場合、冷酒に合うツマミコンテスト?では、昔からウナギの白焼きがナンバー1だと信じて疑わない。
さて、燗酒の場合には何だろう。油っぽいものは何となく違う気がする。ウナギの白焼きもその点で冷酒におまかせだ。
塩辛とかカラスミなんかが熱燗のお供に最高だ。「塩」がキーワードなんだろうか。イクラもいいけど、イマドキの醤油漬けより関東古来?の塩イクラが相性が良い。
上等なまぐろの正当な赤身とか、白身の昆布締めとか、サッパリ系の刺身も王道のツマミだ。刺身業界でもベトッとした脂を感じるものは、私の場合ついつい敬遠する。そっちは焼酎のアテとして活躍してもらう。
生ウニに塩をパラリと落としたのも燗酒向きかも知れない。ボタンエビの頭の味噌をチューチューしながら飲むのも燗酒がいい。
逆に燗酒にそぐわないものといえば、焼肉、お好み焼、チーズ系の食い物あたりだろう。あくまで主観なので、そういうのがお好みの人は気にしないでいただきたい。
でも、以前、ピザを食べながら燗酒を飲んでいる人と同席したが、見るからに合わない感じだった。
だんだん話に統一感や脈略がなくなってきた。
このわた、カニの内子、一般的なところではノリの佃煮とか、シラスおろし、ショウガたっぷりの冷や奴なんていうのも熱燗との相性抜群だろう。
塩っぽさで言えば、色が変わっちゃうぐらい漬け込まれたぬか漬けのキュウリとか茄子なんかも捨てがたい。
数の子、子持ち昆布、タラコの炙ったの・・・、
うーん、どうも単純に酒を飲みたくなっているだけみたいだ。
実は、これを書いているのは夕方だ。「梅干しを見るとツバが出る」みたいな条件反射で、日が暮れると肝臓が私に話しかけてくる。
「親分、今日は何を飲みますかい?熱燗がよござんすねえ」。
毎日、そんな感じだ。この肝臓、調子に乗ると、「この後は銀座に出ませんかい?」とか余計なことを囁いたりするから困りものだ。
日々、自制心とニラメッコしている。
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