2013年7月17日水曜日

仮面夫婦


最近、アチコチで仮面夫婦という言葉を耳にする。「仮面夫婦」。言い得て妙だ。とてもわかりやすい。「仮面恋人」が成り立たないように、夫婦だけの特権?だ。
いま日本では、毎年20万~25万組の夫婦が離婚するらしい。40万人から50万人の離婚経験者が毎年誕生するわけだ。

離婚者数がこれだけの水準なら、仮面夫婦の数はその10倍以上は確実だろう。

そんな数字遊びをしていると世の中の大半の夫婦が仮面になってしまう。でも、きっと物凄い数なんだと思う。

イヤミでも何でもなく、心から御苦労様と言いたい。

世間体、子供の問題が仮面夫婦を続けていられる大きな理由だろうが、「面倒くさい」という理由も離婚を思いとどまるポイントだろう。

はっきりいって、面倒くさいことを理由に夫婦関係を解消しない程度なら、せいぜいプチ仮面に過ぎないような気がする。

「堪えられない」と「面倒くさい」を比較して後者が勝る程度なら、要は堪えられるということ。こんなパターンなら頑張り続ければいいと思う。

堪えられなくなったら、無理して続けても死んでしまうだけだ。これは決して大げさでは無い。家庭のストレスは仕事のストレスとは異次元の重さがある。

暗闇に沈み込む感覚とでも言おうか。

私自身、周囲を見回すと離婚経験者がゴロゴロいる。再婚したいヤツ、もうコリゴリなヤツ、裁判がいつまでも終わらないヤツ、それぞれの思いは違うが、ほんの20年、30年前とは世の中の様相が変わってきた。

若者の間で流行の「シェアハウス」の概念も、あと10年もすれば独身高齢者の間で爆発的に広まると思う。なんだかヘンテコな世の中が始まっていることを実感する。

仮面夫婦といえでも、運が良ければ、仮面時代を過ぎ高齢になって同志的感情が出てくれば、なんとか添い遂げることもあるだろう。

社会の安定のためには「添い遂げる」という古くからの美徳というか、呪縛を軽視してはいけないのだろう。でもそれがなかなか難しい。

しょせんは他人だ。生まれ育ちも違う環境だし、現代社会のように「個」が幅を効かす時代だと、男も女も我慢のハードルが低くなりがちだ。

経済的な問題も大きい。共働きしなければ家計が厳しい状況なら、「主人」も「家内」も言葉通りの意味にはならない。役割が曖昧になり、そのうち、夫婦の関係に意味を見出せなくなる。

女性の地位向上は結構だが、それをはき違えられても困る。専業主婦でホゲホゲできてるクセに夫へのリスペクトがまるで欠如しているトンチキも多い。

先日、松本清張原作の「坂道の家」という古いドラマを見た。マジメ一筋に働いてきた男がキャバレーの女に入れあげる。仕事も放り出し、仮面状態に近かった古女房にも愛想をつかされていく。

ところが、女に若い恋人がいたことを知った男は次第に狂気を帯びてくる。異常な独占欲の犠牲になって命の危険を感じ始めた女は、事故に見せかけて男を殺してしまう―――。

なんとも恐ろしく切ないストーリーだった。過去に5回もテレビドラマ化されている名作らしい。実に味わい深い作品だった。

不思議なもので、殺された男を単なるアホバカだとは言い切れない妙な気分になった。

仮面のまま暮らし、人生の秋冬が迫ってきた男のアガキというか、ふとした心の隙が作家の描きたかった部分だと思う。押さえきれない本能的な熱情を愚かと断じるのは簡単だ。でも、仮面のまま悶々と生きながらえ、心をむしばみ、不本意な晩年を送る生き方と比べて、はたしてどちらが人間的か、答えは簡単ではない。

極端にいえば、仮面を被ったままウツウツと最期を迎えることは、アホバカな非業の死と比べてもおかしくないぐらい哀しむべき事態なんだと思う。

ちょっと極端な考え方かもしれないが、個人的にはそんな感傷に浸ってしまった。

もちろん、好き勝手に生きればいいなどと刹那的な極論を主張する気はない。我慢することは大事である。ある意味、人間が社会生活を営む上での必須条件が我慢だ。

問題は我慢の限界ラインをどこに設定するかだ。忍耐強い性格の人間でも、こと夫婦関係においては、自分の許容範囲を過剰に広げてしまっている人が多いようにも感じる。

相手のことに無関心な仮面夫婦の増加は気持ち悪い現象だと思う。夫婦喧嘩に明け暮れるような、ある意味、健全な夫婦が減ってしまえば社会全体の空気が淀むのも仕方がないと思う。

今日は何かシンキくさい話になってしまった。

3 件のコメント:

  1. 富豪記者さま

    不倫から人生が狂い始める松本清張ものって面白いですよね、と言うと語弊がありますが、個人的には「影の車」と「鬼畜」が大好きです。あの時代の岩下志麻は艶があって、最高に美しいです。「坂道の家」もDVDがあったら是非観たいですね!

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  2. 玉さま

    コメント有り難うございます。
    鬼畜は、確かビートたけしと黒木瞳でドラマ化されてましたよね。

    あのての人間の業が絡んだ話はドキドキもんですね!

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    1. 人間の業、すごくいい響きですね。なんだかシビれました。是非いつかこのお題でブログを書いてください。

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