2025年12月19日金曜日

エビ様


海老、蛯。エビを漢字で書くと「老」がくっついてくる。エビの姿形を腰が曲がった老人に見立てたことがルーツだ。何だか哀しいような印象もあるがその逆である。長寿のめでたさを表す意味合いが強い。

 



わが国の食材においてはエビは縁起物である。正月の鏡餅にも欠かせない。今みたいに長寿社会じゃなかった昔の人にとっては腰が曲がるほどのお年寄りはそれだけでおめでたい存在だった。

 

おめでたいといえば、海老の目が出っ張っていることも「めでたい」に通じるから縁起物としての意味合いを強めている。おまけに脱皮を繰り返す生態も「再生」を表すとして尊ばれてきた。

 

私は以前からエビが大好きだ。寿司ネタの中で一番好きなのもエビだ。洋食屋さんに行ってもエビフライを頼みたくなる。肉系レストランに行っても上の画像のようなエビカクテル的メニューがあればついつい注文する。

 

さすがにまだ腰は曲がっていないが、還暦を迎えた私としてはメデタイ存在であるエビのことは縁起をかつぐ意味でも一層愛し続けたい。歳をとったからこそエビとともに歩んでいくべきだろう。意味不明だ。

 

トンカツ屋のメニューにもエビフライはよく登場する。豚肉ガッツリ気分でそこにいるのに1本から注文できる店なら迷わずエビフライも追加してしまう。

 



 

エビフライの相棒であるタルタルソースをべっとりとトッピングしてソースも混ぜちゃうと最高だ。得も言われぬ幸せな気分になる。これを書いているだけでヨダレが出てくる。

 

めでたくも崇高な存在であるはずのエビ様だが、食材としての社会的地位はビミョーだ。一般的に高級食材ではあるもののシャバダバな安物の存在が足を引っ張っている。

 

謎エビとも呼べるペラッペラで風味も乏しいヤツらがエビ業界?全体に悪影響を及ぼしている。回転寿司屋で一番安いメニューに並んでいるようなダメエビや冷凍ピラフに混ざっているチンチクリンのヤツなどである。

 

ああいう謎エビのせいで「エビは苦手です」という人が増えてしまったのではなかろうか。アレルギーの人もいるが、そうじゃなくてもエビを嫌う人は案外多い。ヘンテコなダメエビが元凶じゃないかと睨んでいる。

 



繰り返しになるが私が好きな寿司ネタはエビが筆頭である。生きているエビの茹でタテを握ってもらうのは最高だし、作り置きでも上質なネタの旨味を引き出している“仕事系”のエビは他のネタとは一線を画す美味しさだ。

 

甘エビやボタンエビ、はたまたブドウエビなどナマのエビの握りもウマいが、茹でたクルマエビの握りのほうがシャリとの相性は良い。個人的な意見だが断固そう思う。

 

寿司全般に言えることだが、ナマのほうが上みたいな思い込みは正しくない。職人のワザを感じられるだけでなくお店ごとの特徴も知ることが出来る。茹でエビの握りがウマい店なら何を頼んでもハズレは無いといっても大げさではないだろう。

 



冷蔵庫が無かった時代の寿司といえば、ヅケや昆布締めなどが基本で色味の点ではどんよりしがちだった。そんな中で鮮やかで明るい色のエビがスーパースター扱いされていたのも当然だろう。メデタイというオマケもついてくるわけだから今の時代の感覚とは随分違ったようだ。

 

お寿司屋さんにはよく行く。週に一度は通っていた頃よりは減ったが、それでも月に23度は出かける。エビを頼まなかったことがあったか考えてみたのだが、おそらくこの10年で一度も無いはずだ。

 



甲殻類はアレルギーの原因になることも多い。「コップの水理論」で一定量を超えるとそれまで平気だったのにダメになっちゃうらしい。エビだけでなくカニも大好きな私だが、アレルギーを恐れて一時期よりはカニを食べる機会を減らした。

 

カニは減らしたがエビは減らす気にならなかった。カニはあきらめられてもエビとオサラバするのは耐えられない。“お年寄りにとっての縁起物”だと考えたらこれから先も末永く付き合っていきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

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