毎年、胃と大腸にカメラをぶち込まれる検査をしている。内視鏡検査だ。そんな書き方をするとオドロオドロしいが、今年ほどこの検査を待ちわびたことはない。先日、ワクワクしながら出かけてきた。
楽しみだった理由は強力鎮静剤でコテっと寝かされる気持ち良さのせいだ。麻酔ではない。強い鎮静剤だ。ウソかホントか安楽死にはこれを大量に使うとか。
クスリでホゲ~っと弛緩させられてストンと眠っちゃうわけだ。
ここ最近、メンドーな世の中だったせいで、自律神経が変になったのか、ずっと不眠気味だった。疲れているのに寝つけず悶々とする日が多かった。
安定剤を多めに飲んでも効かず、休日もゆっくり寝られない日が多かった。
というわけで、たとえ短い時間でも人工的だろうと、ドスンと寝落ちしたかったので、普通は毛嫌いされがちな内視鏡検査が待ち遠しかったわけだ。
私が通っているのは内視鏡専門のクリニックだ。もう長い付き合いだから緊張感はゼロだ。
横になって検査用の採血ついでにゆっくりと謎の鎮静剤が注入される段取りだ。横になった時点でウッキウキである。
ドクターに尋ねる。
「なんか気持ちよくなってきたけどもう入れてる?」
「まだ採血中だよ」
期待し過ぎているせいで、血を抜かれているだけなのに既にフワっとしたつもりになってしまうあたりが単純バカである。
採血が終われば注入開始だ。このクスリは少しづつ確実に吸い込まれるように眠りの世界に誘導してくれる。たまらなく気持ちよい。
徐々にふわふわクラクラ効いてくるのだが、毎回その段階で寝落ちしないようにムダに抵抗してみるのが私のクセだ。
「今日は落ちないぞ!」などと独り言をつぶやきながらドクターや看護師さんに苦笑されながらクスリが染み込んでいくのを体感するのが大好きだ。
抵抗したところで、わりとスグにコテっと落ちる。でも、そのムダに抵抗している過程が楽しい。М的な快感を味わえる。
今回はとにかく深く眠らせてほしかったので、いつものムダな抵抗はやめて「来た来た来た~」とつぶやきながらアッという間に寝落ちした。
毎年、検査終了後は気づけば狭い検査室にひとりで寝ている。目を覚ました時には誰もいない。本当に検査されたのかさえ分からないほどだ。
今回は、なぜか検査の後半に一瞬だけ目覚めてしまった。うつらうつらというレベルだが、尻のほうでモゾモゾ何かやっている感じはあった。
目覚めたとはいえ、とにかくフワ~っとしているから、痛くもかゆくも恥ずかしくもない。「どうして起きちゃったんだ、もっと寝てたいよ~」と独り言をかましたらしい。
すぐにまた寝落ちして気付いた時には一人で横たわっていた。無事終了していた。クスリ注入から起きるまでの時間はわずかに1時間ちょっとだ。
短い時間なのに深く深く眠ったような目覚め方である。おまけにクスリが少し残っているからちょっとフワっとして気持ちがよい。肩凝りもなくなっている。
結果は相変わらず優等生とはいえない状態だが、ガンが無ければまあ合格である。内視鏡でポリープも切除してもらったから医療保険から給付金ももらえる。
気持ちいい思いをして、かかったコスト以上にお金がもらえるなら実にハッピーである。
大腸の内視鏡検査は早起きして長い時間をかけて下剤を飲んで腸内を奇麗にしておく必要があるから面倒だ。
胃については朝飯を抜くだけでOKである。今後も不眠が続いたら、いや、胃が不調だったら、頻繁にクスリを打ちに、いや、内視鏡検査をしてもらおうと思う。