2020年2月5日水曜日

大箱店の意味 築地すし好




自分で言ってしまうが、私は寿司に関してはイッパシである。若い頃からB型気質を活かして「分かっている客」になろうと努力してきた。

客修行?も随分と頑張ってきた。恥もかいてきた。お金も使ってきた。普通のオジサンというカテゴリーの中ではかなり詳しい方だと思う。



そんな自負が邪魔になることも多い。一方的な思い込みが強くなってしまう。そのこだわりも大筋間違っていないとは思うが、柔軟性に欠けるようになる。

大箱のチェーン店のようなお寿司屋さんを闇雲に敬遠している点もその一つだ。

「すしざんまい」なんてどこの店舗も連日大賑わいである。マズかったら人気は保てないわけで「ああいう店はチョットね・・・」などと一刀両断に片付けてしまうのは問題だろう。

昨年、引っ越してから築地が徒歩圏になったので、いわゆる大箱チェーン系のお寿司屋さんが目に入る機会が増えた。

なかでもやたらと目に付くのが「築地すし好」だ。都内にあちらこちらにあるが、築地銀座界隈ではやたらと見かける。

で、築地にある「総本店」に出かけてみた。感想は「さすが。なるほど」である。あれなら人気が出るのも当然だ。

いつの間にか、敷居が高くなってしまった寿司の世界を手軽にキチンと、かつ非常に分かりやすく楽しませてくれる。

凝りまくってワケが分からなくなった店だらけになったラーメンの世界と似ているかもしれない。

街中の昔ながらの中華料理屋で、オーソドックスなラーメンを食べる時には余計なウンチクは考えない。それが普通だ。

寿司屋にしても、身構えて職人さんと対峙するような空気の店と、築地すし好のような店では過ごし方や気分もまったく異なる。

やたらと多彩なメニューも写真たっぷりで客の立場としてはラクチンである。値段だって良心的だ。飲み物だってやたらと豊富だし、季節ごとにニクいツマミだって勢揃い。

頼み方が分からない、値段が分からない、大将が恐かったらイヤだ等々、世間で言われる寿司屋をめぐるネガティブな部分がすべて解決している。

店は綺麗だし、サービスもヘタな個人店より遙かに丁寧、カウンターに並ぶ職人さん達も紳士的だ。

言ってしまえば一つの完成形なんだと思う。もちろん、シャリの味、握りの加減、〆モノの加減、煮詰めやガリの味付けを始め、難癖つけようと思えば気付く点はいくつもある。

ただ、それを越えた総合力はさすがだと思う。おまかせ一辺倒のイマドキの得体の知れない寿司屋で、店の都合を一方的に食べさせられたあげくに3万も4万も取られるなら、断然、こういう路線の店でのびのび食べる方が正しい。

ヘタに寿司にこだわりを持って生きてきたせいで、いま私が出かけるお寿司屋さんは顔なじみになった小体なお店ばかりだ。

小ぶりなお店の場合、誰とも話をしたくない時や疲れている時、考えごとがある時は行きにくい。そういう時は、こういうキチンとした大箱系の店の隅っこでボケっと過ごすのはアリだと思う。




この日は、ふぐの薄造りや刺身類の他、カニの身もしっかり添えられていたカニミソなどをつまみ、握りも炙り系を頼んだりして、思った以上に満足できた。

思い込みだけで闇雲に大箱を避けちゃうような感覚は、かえって我が身を窮屈にするだけだと改めて感じた次第。

フラットで柔軟でノンポリ?ぐらいのほうが変化のない日常にチョットした楽しみを加えられるのかもしれない。


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