土用のウナギという言葉がある。平賀源内が編み出した広告コピーの元祖という説もある。夏の時期に鰻屋の客足が途絶えちゃった対策として縁起物、願掛けチックな話として広まった。
養殖モノがなかった江戸時代だから夏のウナギは当然痩せている。客足が減っちゃうのも無理はない。本来は冬が旬だから脂がのったウナギは夏には食べられなかったわけだ。
今の時代はヘタな天然モノより養殖モノのほうがウマい。安定的に上質なウナギが食べられるわけだから土用の丑の日にわざわざ大混雑かつ雑な仕事になっちゃう鰻屋さんに行く意味はない。老舗鰻店の中には土用の丑の日をあえて休業日にしているところもある。
さて、どうでもいいウンチクはここまで。私にとってちょっとした課題だったのが土用ならぬ土曜日のウナギだ。普段、ウナギで一献と洒落込むのは平日が中心だ。特に意味はないが仕事終わりにウナギとランデブーしていることが多い。
ところが、近隣で私がよく行く東銀座の「神田川」、築地の「宮川」は土曜が休業日だった。数寄屋橋に近い「野田岩」は土曜営業していたが正直好みではないので他を考える。複合ビルに入っている店だとワチャワチャしてそうでシッポリ気分には合わないような気がする。
日本橋まで行けば「大江戸」や「喜代川」が土曜営業していたはずだが、あまり移動したくない事情もあったのでパス。で、5~6年ぶりに東銀座、汐留側の「竹葉亭本店」を訪ねることにした。
私にとってウナギは鰻重をさっさとかっ込むというより、一品料理をつまんでだらだら酒を飲み白焼きでうなって最後に鰻重をもらう“ダラ飲み”の場だ。ヤボだけどそれが習慣になっている。
銀座4丁目角にも竹葉亭はあるのだが、そちらはダラ飲み路線とは違う“サクっと鰻重を食べて帰る”みたいなイメージがあるので長年覗いたことがない。不便な立地でもつい風情ある建物をウリにする本店のほうを選ぶ。
本店も座敷席を使うにはコース料理を選ばなきゃならないので、コースが苦手な私はカジュアルなテーブル席に陣取ることになる。
ウニのイカ和えみたいな一品メニューもあるのでダラ飲み派にも居心地が良い。この日はウナギづくし気分だったので、うざく、う巻き、白焼き、そして鰻丼という王道のメニューを選んだ。
何が有難かったかといえばう巻きのボリュームだ。卵焼きのワザを見せつけるため?か、たいていの専門店が2人前ぐらいの量で出してくる。一人や二人では注文しても食べきれないことが多い。
その点、こちらでは画像のサイズで提供してくれる。他にもあれこれ食べたいしシメの鰻丼の前に満腹になりたくないからこのサイズは嬉しい。おまけにキチンと甘い卵焼きである。
だし巻き卵で作るう巻きも悪くはない。なんなら美味しいな~ってつぶやいちゃう時もある。でも、やはり東京の老舗だったら“西からの攻勢”に負けずにあくまで甘い卵焼きをベースにすることにこだわって欲しいと思う。
で、シメの鰻丼だ。座敷席と差別化するためか、サイズは2種類だけで姿かたちも重箱ではなく丼である。丼は食べやすいから重箱に固執する気はないのだが、サイズの選択肢はもうちょっと頑張って欲しいところ。老舗の有名店なんだから3~4種類は揃えてくれたほうが楽しいと思う。
味のほうはバッチリだった。見事までの小骨の処理に改めて感心した。タレの味に頼るのではなく鰻本来の味を邪魔しない程度に味付けされている点はさすがだと感じた。
土曜のウナギ。銀座・新橋界隈ならここは立地的にお忍び感もあって悪くないと思いました。


