何年か前から「徳川慶喜」を身近に感じるようになった。別に縁もゆかりも思い入れもないのだが、今の住まいに近い日本橋を通るたびに橋の揮毫を眺めて彼の達筆ぶりに感心する。
それだけでなく、最後の将軍・慶喜さんの大好物が豚肉だったと知ったことで妙に親しみを覚えている。一橋家出身の彼のことを「豚いち様」と呼ぶ人もいたらしい。
幕末期には薩摩藩の家老が頻繁に慶喜さんから地元の豚肉を所望されて困っていたという話も史実として残っている。鹿児島の黒豚をそんな頃から愛していた点が何だか素敵である。豚肉が大好物の私としてはそれだけで身近に感じる。
我が家の冷凍庫に常備している肉類はほぼ豚肉である。いつの頃からか牛肉より断然豚肉派になった。ただただウマいとしかその理由を説明できないのがシャクである。
外食する際も肉の気分だったら基本は豚肉を食べたくなる。最高峰?はトンカツだがそれ以外でも何でも好きだ。締まった肉質の食感、脂身の甘みは牛肉よりも軽やかなのが良い。
ウナギ気分で老舗の鰻屋さんに行っても、白焼きや鰻重の前に角煮を注文して嬉々として食べてしまう。この画像は日本橋本町にある「大江戸」での一枚。
この店の一品料理は何を頼んでも味付けが江戸っぽく濃い。角煮もしかりだ。甘じょっぱい味付けに悶絶できる。鰻屋さんの一品にしては実に攻めた料理だと思う。
薩摩が豚肉文化を広めるきっかけになった琉球王国のソーキも豚肉料理の中ではトップランカーだと思う。骨付き肉の野趣あふれる味付けはそのまま食べても良し、沖縄そばに乗っけても良しである。
有楽町の交通会館地下にある沖縄そば専門店に時々行く。沖縄そばが食べたいというよりソーキをグワシっとカジりつきたい気分の時に出かける。
ソーキそばに別注でソーキの単品も頼むのが私のお決まりだ。これだと2千円ぐらいになってしまうが、1000円のラーメンを2杯食べるより満足感は遥かに大きい。
鹿児島の芋焼酎や沖縄の泡盛に抜群の相性なのが豚肉料理だろう。それぞれトンコツ煮やソーキ煮を作る際には芋焼酎や泡盛も味付けに使うことがあるそうだから組み合わせて楽しめばハッピーになることは間違いない。
大衆料理のエース・モツ焼きも豚肉ラバーには欠かせない食べ物だ。昔と違って今は鮮度の悪いモツ焼きを出す店が激減したからハヤっている店ならまず外さないのも嬉しい。ホッピー片手にガッツリ食べると日頃のウサ晴らしになる。
先日、同級生3人で人形町の小洒落た居酒屋「竹とんぼ」を訪ねた。界隈のお店の中ではちょっと上品系?のお店だからモツ焼き盛り合わせも綺麗に盛られて出てきた。わざわざ串を抜いて並べてくれている。3人飲みの席に合わせてこういう配慮をしてくれるのは名店だと思う。
煙モーモーのガサツな雰囲気の中でモツ焼きをがっつくのもオツだが、これはこれで私のような上品が服を着て歩いているようなオジサマには悪くない。上品な顔をして上品に食べ尽くした。
思えば最後の将軍・徳川慶喜さんの生きていた頃は肉食の黎明期である。そんな時代に豚肉をこよなく愛した人が今の時代にタイムスリップしたら狂喜乱舞するのは確実だろう。
年末や正月はナゼか時代劇を見たくなる季節だ。将軍様がタイムマシンに乗って現代社会にやってきて極上の豚肉料理を毎食毎食食べて悶絶するような奇天烈な時代劇を制作してほしいものだ。主演は松重豊で決まりだ。
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