一気に冷え込んできたから熱燗を飲む機会が増えた。ぬる燗や人肌燗といった中途半端な温度よりもアッチッチ状態が好みだ。なんなら徳利が持てないぐらいが嬉しい。もともと猫舌のくせに燗酒だけは熱ければ熱いほど好きだ。
どうせ5分も置いておけば冷めてくるわけだから始めはチンチンが良い。ちびちびっと口に含んでも身体中に熱い酒が染み渡っていく感じが堪らない。これからの季節ならではの楽しみだと思う。
真っ当なお店なら湯煎で燗をつけるから注文から提供まで時間がかかるのが難点だ。おかわりをするタイミングにも神経を使う。そのせいかちょっと緊張感?を伴うのも個人的な熱燗あるあるである。
熱々の酒といえばヒレ酒が思い浮かぶ。数え切れないほど味わってきたのにいまだに謎なのが独自の儀式?である。客前でアルコールを飛ばすために火を付けるのはナゼだろう。味に違いはあるのか、酔い加減に差があるのか、サッパリ分からないままウン十年である。
ちょっと調べれば理由は分かるのだろうが、知りたいような知りたくないような気持ちで今に至る。思えば世の中には「そういうもんだ」と何も気にせず放置している謎の習慣は他にもあるはずだ。まあ、いいか。
さて、冬の訪れとともに食べたくなるものがいくつかある。白子、あん肝、カラスミといった珍味を始め、おでんもその代表だが、鍋物もやはり冬には欠かせない。
私は根っからの野菜嫌いなのだが鍋だとどさくさ紛れに少しは野菜も摂取する。でも白菜の芯と春菊だけは何があっても食べたくない。この習慣は死ぬまで変わらないのだろう。
春菊は他の具材の邪魔をする存在だと思う。色は出ちゃうし味はマズいし、個人的には親の仇ぐらい嫌いだ。すいません、舌が子供レベルなんだろう。
野菜が特に好きな人は別だが、アレをウマいなあと思って口にしている人はどのぐらいいるのだろうか。料理人も単純に彩りのためだけに春菊を最後にポンッと乗っけてるだけだと思うのだが違うのだろうか。
春菊ファンの皆様、ごめんなさい。
さて、鍋料理の中でもアマノジャクな私が冬になると食べるのがクエ鍋である。東京ではあまり見かけないのが好ましい。人様にご馳走する時に「へー」って言ってもらえるのも良い。
旨味の強いデカい白身魚だが、結構な時間煮込んでしまっても身がバサバサにならないのがクエの魅力の一つだ。たいていは熱燗でほろ酔いになっているから鍋から引き上げるのを忘れがちになる。慌てて鍋から回収してもちゃんと美味しい。
魚なのに身肉のコシの強さ?が特徴的だ。フグよりも野性味を感じて食べ応えがあるのが嬉しい。普通の白身魚を想像するとまったく別モノの力強さがある。
都内各地にある土佐料理の老舗「祢保希」が冬の名物として提供しているので、地の利のある銀座店で堪能することが多い。クエの刺し身や唐揚げ、カツオのタタキあたりを肴に熱燗を楽しみながら鍋を待つのがお決まりのスタイルだ。
いつも雑炊が出されるアイミングでは満腹になっているのが残念無念である。極上のダシで味わう雑炊なのに一口ぐらいで断念しちゃう。そのくせ数時間後にペヤングを食べたりするから、まさに愚の骨頂だろう。
鍋を美味しく味わいために大事なことは飲みすぎないこととと春菊を入れないように気をつけること。これに尽きると思う。