私の職場は銀座の近くに位置している。最近は出勤しても夕方早めに切り上げることが多いので、薄暮の有楽町・銀座界隈をぶらぶら散歩する。
もちろん、ゴーストタウンみたいな状態である。どこも営業していない光景が今の時期だけで済むならまさに歴史的珍事でもある。
そんな光景を目に焼き付けておきたいという変な好奇心で歩き回っている。
有楽町の駅周辺は商業ビルやデパートが隣接して一つの都市空間を作っている。すべて閉まっているから歩いている人はほとんどいない。
異様な光景だ。夜じゃなくても女性が一人歩きをするのが不安になるほどの淋しい空気に満ちている。
銀座は7丁目、8丁目あたりの“夜エリア”の寂しさが際立つ。細い道路沿いの雑居ビルにひしめく店の看板は明かりだけをともしている。
少なからずこの街にお世話になった身としては実に淋しい。無性に切ない気持ちになる。
非常事態宣言が解除されても一気に元通りになるのは難しい世界である。不幸が連鎖しないことを願う。
オフィス街により近いせいか、銀座1丁目、2丁目あたりはポツポツと時短営業している店も見かける。
洋食の老舗「煉瓦亭」も早い時間からオープンしていたので、先日、まだ明るい時間にフラっと入ってみた。
最近、私が食べに行く店の多くがコロナ以前には行ったことがなかった店だ。選択の余地が少ないから開いている店に適当に入ることが増えた。いわばアウェーである。
煉瓦亭のように以前から利用していた店が営業していると妙に嬉しくなる。普通に戻ったかのような錯覚に浸れてハッピーな気分になる。
こういうちょっとした喜びを見つけないとコロナ鬱を招くから、わけもなく散歩に励むのも悪くない。
前菜にエビのカクテル、その後、エビのコキールを白ワインで堪能して、最後はチキンライスにしてみた。
「コロナ以前」にガツガツ食べていたものを久しぶりに味わうと美味しさよりも嬉しさが勝ったような気分になった。
「そうそう、これこれ!」って感じである。
ウーバーイーツであれこれ取り寄せるのもアリだし、テイクアウトでいろんな店の味を楽しむのアリだ。でもその店に行ってその店の空気に浸りながら味わう喜びは格別だ。
この日、私が過ごした時間帯は他に2組のお客さんがいた。かなり離れて座っていたから何も気にせず快適だった。
銀座界隈に限らず、いま営業している喫茶店は結構な数のお客さんで賑わっていることが多い。それに比べれば時短営業しているレストランのほうが人出は少ない気がする。
闇雲に外食は自粛という凝り固まった考えに囚われるのは馬鹿馬鹿しいと思う。空いているタイミングを見計らって外食することは何も問題ない。
いまさらそんなお節介な話を書いても仕方ないが、つくづくそんなことを感じた時間だった。
1 件のコメント:
銀座のデパートも、いかに集客するかに力を入れてきたのに、まさか真逆を求められるとは。経済的にも恐ろしいウイルスです。
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