若い頃は焼肉屋が主戦場だったので、いつもレバ刺しをムホムホ言いながら食べていた。
焼肉屋さんから姿を消したレバ刺しだが、あの騒動は牛肉に限った話で、牛以外のレバ刺しはそこかしこで見かける。
牛レバとは違うが、あのエロティックな風味は鶏でも馬でも豚でも同様である。ごま油、ニンニク醬油、生姜醤油もいい。エロさを助長させる。
食べ物の味わいを表す上で「エロ」とか「官能的」という表現は最高級の褒め言葉である。
上等なレバ刺しは「エロ」の称号にふさわしい。一口頬張りゆっくりと噛みしめるとオッサン達の顔は必ずほころぶ。
先日、馬肉が食べたくなって銀座の「こじま屋」に出かけた。ジンギスカン風の鉄板で臭味のカケラもないウマい肉をジュージュー焼くのが基本の店だ。
すき焼き風の鍋料理がポピュラーな馬肉業界?では珍しい路線かもしれない。カルビ、ヒモ、タン、ホルモンが馬焼の基本メンバーだが、ヒモ肉が絶品で延々と食べ続けられる感じだ。
そんな話じゃなかった。レバ刺しの話だった。馬のレバ刺しと聞くと敬遠する人もいそうだが、素直に美味しい。臭味など感じない。牛のレバよりも軽いし爽やかな印象がある。
焼酎のロックとの相性も抜群である。目をしばたかせながら、「ウイッ~」とか「フジェ~イ」とか意味不明な感嘆詞が溢れる。
肉、魚、野菜、ありとあらゆる食材が満ちあふれ、世界各国の料理や調理法が数限りなく味わえる世の中で、わざわざ馬の肝臓をナマで食べるんだから物好きである。
でもウマいんだから仕方ない。
さてさて鶏のレバ刺しもタマランチンである。白レバ刺しなら昇天しちゃうほどウマいが、普通のレバ刺しだって最高である。
結構アチラコチラで食べられるのも魅力だ。写真はこれまた銀座にある「串銀座」での三点盛り。レバ刺しだけでいいのだが、そうもいかずに他の刺身もやってくる。
牛よりも馬よりも軽快感があるせいか、冷酒に合わせても悪くない。「いいね!」と叫びたくなる。
レバ刺しは痛風予備軍には天敵だが、このところ尿酸値が低値安定状態の私としては気にせずガツガツいけるのが嬉しい。
この画像は池袋のやきとん屋「木々屋」のメニューである。禁断の豚のレバ刺しが食べられる店だ。
豚の肝臓なんかナマで食べてはダメというのが一般的な常識だが、食べさせてくれるんだから楽しまないといけない。
と言いながら、やはりチョット恐い。「高齢者や子供は食べるな」という注意書きがあるから少しはビビる。
こういう場合の「高齢者」という表記は中年から見ればビミョーである。私だって江戸時代なら充分高齢者である。何歳からダメなのかハッキリしてもらいたい。
この店には誰かと連れだって行くようにしている。レバ刺しが6切れ出てきたら私は2切れで我慢して残りを同行者に食べてもらう。そうすれば死なない気がする。
いつだったか、友人から「豚のレバ刺しなんか食ったら脳ミソに虫が湧いて死んじまうぞ」と言われた。そんな話を信じているわけではないが、純情な私は豚のレバ刺しを見ると自分の脳ミソにウジが湧いているイメージを想像してしまう。
そんなヘタレっぷりでは無頼な男を目指す資格はない。ちょっと守りに入っている自分が残念である。
でも2切れは食べちゃうあたりが中途半端な私の生き様を象徴している気もする。
レバ刺しの食べ方ぐらいで自分の生き様を考えてしまうんだから私もヒマ人である。
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