2016年10月21日金曜日

銀座の夜の物語


このところ銀座のネタを書いていないとお叱りを受けたので今日は銀座の話である。6~8丁目界隈の夜の世界だ。

隠居の家相の家に住んでいるせいで?頻繁には出没しないが、相変わらず時々パトロール、いや、檀家まわりに出かける。

とはいえ、昔感じたワクワク感がどうも足りない。まあ、こちらが歳を重ねたから仕方ないことだろう。

夜のクラブ活動に関して30代の頃に感じた「アウェーな感じ」「神秘的な感じ」は若者にとってウキウキすることと同じ意味だった。


今では日本茶をすすりながら葉巻をふかす怪しい50代のオジサマになってしまった。気合いも入らないし、奮闘努力する機会もなくなってしまった。いかんいかん、もっと弾けないと老け込んでしまう。

若い頃、銀座で飲んでいる人々を観察するのが好きだった。人間ウォッチングである。カッチョいいオジサマを見れば憧れたし、ゲスなオヤジを見れば反面教師にした。

こちらが歳を重ねたせいもあるのだろうが、ここ数年、銀座のお客さん全体が若返ったように感じる。見習いたいようなシブいオジサマを見かけることが減った。

昔はやたらと雰囲気の濃い初老の面々が独特の存在感を放っていた。中年クラスは少数派だったような気がするが最近は薄い雰囲気?のオジサマ達が中心的な客層に見える。

昭和感がムンムンだった世界も様変わりしたのだろう。あの街独特の重厚感を感じさせる店も少なくなってきた。

夜の世界は時代を映す鏡だからそれも時流なんだろう。

なんだかシミったれた懐古調になってきたので軌道修正。

モテる。モテない。夜の世界の客も大きく二つに分かれる。当然、男だったらモテたい。ただ、モテたいのにモテない行動をとってしまうのも男の哀しいサガである。


私も一応「記者」を名乗っている以上、モテるオジサマの秘訣を長年にわたって取材?してきた。

秘訣といっても大したことはない。活字にしちゃえば簡単なことである。

威張らない
自慢しない
悪酔いしない
金払いが良い
触らない


実に単純である。でも、その単純なことがなかなか出来ないのが世の常である。

私の場合、威張るほどの凄い実績がないから威張らない。自慢するほどのネタがないから自慢もしない。酒が強くないから悪酔いもしない。ツケが嫌いで毎回カードを使うから支払いで揉めたこともない。そして根性がないから触らない。触れない。

ということはモテモテである!モテモテのはずだ!そう思い込むことにする・・・。

私のヘタレぶりはさておき、話を聞くにつれ、威張りちらすオッサンの多さに驚く。威張りちらしたあげく夜の蝶達にキツくあたりまくってグヘグヘ飲んでいる人が結構多い。

相手が強く出られない立場なのにエラそうに接するのはアホである。きっと昼の世界で誰かに威張りちらされてヘーコラしている反動なのだろう。

自慢タラタラもある意味侘びしい。「安倍晋三とメシ食ったことあるんだぞ」「オレの部下は2千人だぜ」「ファーストクラスしか乗ったことがないぞ」、はたまた「女房の妹の旦那の親戚が松本伊代だぞ」みたいな意味不明なモノまでさまざま。

あの心理は何なんだろう。「うわー凄いですね!」と言われたい一心なんだろうか。

昔、ある人から「銀座で飲んでるヤツの半分は自慢話を披露したいだけ」と聞いたことがある。あながちマト外れではない。

まあ、私の場合も「昔はモテたんだぞ」ぐらいの不毛な?話題を展開することがある。あれも自慢といえば自慢みたいなものだ。

中高年なら誰もが思い当たるだろうが、武勇伝にもならない程度の若い頃の話を“盛った”状態で得意になって語りたがる。あれも度が過ぎるとカッチョ悪い。

男ならたいてい虚勢を張りたい気持ち、自分を大きく見せたい心理があるものだが、いっぱしの年齢になってまでそんなことに躍起になるのは単なるヤボだ。

触る、触らないの話はごく当たり前の話だ。勇気と根性がない私だって、密室で二人きりなら触ろうと努力?する。あくまでTPOが大事である。

ちなみに、触る触らないとは別に口説く、口説かないとなると違った意味が出てくる。

ぐいぐい口説いてくる客。これって夜の蝶達にとっては案外ウケがいいらしい。そう書くと女性陣が口説かれたがっているようだが、そういう意味ではない。

要するに口説きモードになっている客ほど次につながりやすいという理屈である。

オネエサマ達からすれば扱いやすいという意味だ。思わせぶりな態度をされると舞い上がっちゃう男の習性を考えれば納得できる。

潤んだ瞳で見つめられて「社長さんのこと好きになっちゃいそうです!」とか言われたら、たいていの社長さんはハッスルしちゃう。

「好きになっちゃいそうです」という日本語は「今現在ちっとも好きではありません」という意味である。女性陣は決してウソはついていない。

それでも男は舞い上がる。「あのコ、オレに気があるんだな。グヘへ~」である。

そして夢見るオジサマ達は身だしなみを整え、加齢臭に気を配り、弱っていた気力を振り絞り、夜ごと夜の街に出ることでニッポン経済を支えているわけである。

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