若い頃に戻りたいかと聞かれたら、悩まずにNoである。強がりではない。やはり若い頃は何事においても面倒だった気がする。
視野は狭いし、肩に力は入っているし、他人が気になって仕方なかった。気持ちに余裕はないし、ムダに疲れることが多かった。
もちろん、若さゆえのエネルギーのせいで、ハツラツと楽しいこともいっぱいあった。老眼鏡も必要なかったし、残尿感という言葉とも無縁だった。
今が快適である。これって幸せなことだろう。かといってあと10年経ったら今度は身体のアチコチにガタが来て、やっぱり若い頃は良かったなどと思うかも知れない。
若い人をうらやましく思うことは滅多にないが、あるとしたら「初めての喜び」がまだまだいっぱいあることだろう。
長く生きてくると、たいていのことは経験するから初々しい感動みたいな場面がなくなる。
初めて海外旅行に行ったときのワクワク感、初めて子供が生まれたときの感激、初めて家を持ったときの喜び等々、すべて初めてだからこその感動がある。
食い意地がはった私としては、初めて食べたウマいものの感激が二回目以降はどうしても弱くなっていくのが残念である。
子供の頃、初めて食べたビッグマックへの感激は当然ながら今は無い。最初の最初は「何じゃこりゃ~!」と叫びたいほど感激した。
初めて食べたババロア、初めて食べたラザニア、初めて食べたカルボナーラ。すべて目ん玉が飛び出るような感激があった。
歳を重ねて舌がおごってきただけでなく、量的にも無理が利かなくなってきたのも悲しい。
日本橋の老舗「大江戸」の極上鰻重である。何年か前に「ウナギとうなじ」と洒落てみた私の画像である。バカ丸出しだ。
その昔、初めてこんなテンコ盛り鰻重を食べた時の感激は今は無い。ここ1,2年こんなに食べられなくなってきた。半分ぐらいで充分だ。平気な顔をして余裕で食べきっていた頃が懐かしい。
その昔、初めてこんなテンコ盛り鰻重を食べた時の感激は今は無い。ここ1,2年こんなに食べられなくなってきた。半分ぐらいで充分だ。平気な顔をして余裕で食べきっていた頃が懐かしい。
20代、30代と旅先で現地のウマいものを食べるのが大好きだった。今ももちろん旅に出ればそういう観点でウロウロするが、上モノはみんな東京にあることを知ってしまってからは楽しみが半減した。
学生時代、貧乏旅行で北海道を周遊していた際、妙に安いウニ丼に遭遇した。こっちは財布にゆとりが無いから迷わず食べた。
一応、美味しかったような記憶はあるが、あくまで旅情によって美化された思い出である。
いま思えば変なウニだった。くすんだ黄土色で味もクセだらけ?だった。相当古いウニだったのか、得体の知れない品種だったのかもしれない。
でも、あれを感激しながら食べていたことはとても幸せだったと思う。年齢とともに段々と美味しいウニを知り、上等なモノを当たり前だと思うようになった。
もちろん、その頃より流通が格段に進歩して日本中の上モノが東京に集まるようになったという理由もある。それに比例してこちらの財布も若い頃よりはゆとりが出てきたから舌が贅沢になってしまったわけだ。
結果、分かったような顔をして食べ続けているうちに感激する心は無くなってしまい、最上級のモノを食べても黙ってうなずくだけになってしまった。
目ん玉が飛び出そうになっていた頃のほうが感激する喜びという点では勝っていたのだろう。
若い人にウマいものをご馳走すると、「目ん玉飛び出そう状態」で喜んでもらえることがある。喜んでもらえることは素直に嬉しいが、うらやましさも感じる。
人間にとって知らなかったウマいモノに遭遇した瞬間の感激は、大げさではなく人生の中でもトップクラスの喜びだと思う。全身が幸せに包まれる感覚である。
もしかしたら、あの感覚に浸りたくてウマいモノを求めて来たのかも知れない。美味追求というよりあの感覚に身を委ねたいという心理だ。
まあ、そんなことを分析したって始まらない。
グダグダ言わずにウニもウナギも素直に喜んで食べないとバチが当たる。
カップ麺やジャンクフードにも時々ではあるが、目ん玉が飛び出そうになるニクいやつがある。まだまだ老け込まずに頑張ろうと思う。
2 件のコメント:
確かに、感激する心はなくなって来るんでしょね。
私は、新しいもの、おいしいものを求める気がなくなってしまいました。
新しい店に行って、落胆する事が多くなって、昔から行っている気にいったおいしい店で、もう満足、という心境です。ですから、レパートリーも少なく、鰻だったここ、てんぷらだったらあそこ、寿司だったらここ、という30年来の店にしか行かなくなって、オヤジさんやおかみさんとおだあげながら飲み食いするのが一番です。その店が、だんだん店仕舞いし始めているのが残念ですが。
佃在住サマ
コメント有り難うございます。確かに開拓精神は年々薄らいでいきますよね。
引越ししてまだ半年程度ですから界隈を開拓する気持ちが何とか保てている感じです。
定期的に引越しすれば新店開拓に励めそうですが、そっちのほうがよっぽど面倒ですね。。
コメントを投稿