飲食店の評価って、結局は自分がいかに快適に過ごせるかで決まる。ミシュランに載ってたからって、突然行ってみて評価しようなどと思うのは正しくない。
一度行ったぐらいで、その店の評価をシタリ顔で語るのはスマートではない。よほどヒドい目に遭えば、一度きりでダメダメ評価を下すことはありえるが、そういう論外な店は、一定水準以上の店に限れば滅多にない。
自分が快適かどうかは、結局店側との相性も大きく影響する。要は何度も訪ねることで過ごしやすさは決まる。とくにカウンターを挟んで板前さんと対峙するお寿司屋さんの世界は、顔見知りになってからが本番。お店の良さを引き出せるかどうかは自分次第でもある。
前振りが長くなった。ある日のこと。高田馬場にある鮨源本店を訪ねた。割と寿司屋系珍味攻めが続いていたこともあって、この日は珍味系はお休み。
まずは冒頭の写真。メジマグロの腹の部分をおろし醤油で味わって、身がギッシリのタラバの脚を少しもらう。サバもつまんで冬の味を楽しむ。
珍味を頼まないと何か手持ちぶさた。でも、この日は邪道系の料理を食べたい気分だったので、しばし考える。
思いついたのが海老フライ。以前、外国人のお客さんに出されていたのを目撃して以来、注文したかった一品だ。ちゃんとソースも登場。タルタルソースは、さすがに前もって頼まないと用意していないようだが、正統な高級寿司店で揚げ物をソースで食べられるだけで何か嬉しい。でも、お子ちゃまみたいなので、周りの視線がちょっと恥ずかしくもある。
お味は言うまでもない。生きている上質な車海老を素材にするのだからマズイわけがない。海老の味が凝縮されて口の中が幸福になる。頭の部分も上手に揚がっており、殻の固さがまったく気にならない。素直に口の中に収まる。おまけに海老のミソの風味がバッチリ感じられて抜群。
クセになりそうだが、さすがに邪道なので、しょっちゅう頼むのはよそうと思う。次はホタテか牡蠣のフライにしよう(結局、邪道だ・・)。
この店では、以前から刺身で食べられるクジラを竜田揚げにしてもらったり、ウナギの三杯酢和えの「うざく」ならぬ「あなざく」を穴子で作ってもらったり、割と気軽にアレコレ食べさせてもらっている。何度も行くうちに自然と“邪道モノ”も頼めるようになった。
さすがの私でも初めて訪れたお寿司屋さんで、海老フライをくれとか言わない。突き出しがうまかったからといって、それを軍艦で握ってくれとは言えない。そんなもんだろう。
いわゆる馴染み客になって初めて、その店の居心地がいいかどうかが分かる。
この日、鮨源には、私が大好きな一品があった。ツナサラダのツナがそれ。本マグロを使った贅沢ツナだ。本マグロの端っこだか、色変わりしたものなのか分からないが、確か1か月に一度くらいは、この贅沢ツナが制作されている。
あくまで突き出し用に作られているのだが、なんてったって本マグロだ。そこらへんのツナとは大違い。単純明快に美味しい。
この日、酒疲れもあってガツンと握りを食べたい気分もあったので、「ツナ軍艦握り、山盛りで二貫・・」と小さい声で注文した。
ツナ軍艦、これぞ「邪道界のスーパースター」みたいな風情で出てきた。しばし感動。チョロッと醤油をたらすと味わいが深まる。お子ちゃまみたいで恥ずかしいなどと言っていられない。私はこれが大好きだ。
マグロの部位がどうだとか、包丁の角度がどうした、熟成日数がなんとか、といった本マグロをとりまくウンチク話を超越した一品が、このツナ軍艦である。
ひとつ食べたあとで、ツナ軍艦の横から見た姿も写真に納めてみた。なんとも素敵なこの盛り上がり方にバンザイだ。ヤケクソのように盛られている。
もはや、シャリとネタのバランスなどとアレコレ気取っている段階ではない。大口開けなければ食べられない高さだ。それがまた堪らない。
横から見た姿は、銀座あたりを飛び交う夜の蝶のとんがった髪型のようにも見える。そびえ立った感じがなんとなく似ている。
まあどちらも大好物には違いない・・・。
2008年12月25日木曜日
邪道は美味しい
ラベル: 中年グルメ
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