2015年6月17日水曜日

隣に座る人


先日、のんびり一人酒を楽しもうと出かけた店で妙齢の女性と隣り合わせになった。一人でまったり燗酒を手酌していたその女性、年の頃は30代前半か中盤だろう。

細身の美人さんである。

私は元来、硬派な人間ではない。真っ当な男子として狩人精神に溢れている。いつも「隙あらば・・・」と世の中を見回している。

しかし、一人まったりウマい酒を楽しむつもりの時は、偶然素敵な女性と隣り合わせても一切無視することに決めている。

ウソです。

隣に妙齢の女性が一人で座っていれば気になる。さすがに落ち着かない。でも、大人が集う店で堂々と一人酒をかっ食らっている若い女性はたいてい厄介である。

決めつけちゃってゴメンナサイ。

その日の私の止まり木は銀座の寿司屋。夜の9時頃に訪問。同伴客がはけた後の空いている時間だ。

馴染みの大将は、お一人サマ状態のこちら側二人に同時に話を振ったりして、交流を図らせようとする。

有難いんだか迷惑なんだか判然としないうちに成り行き上、その女性とムダ話を交わし始める。

一般的には「慶事」と言えるのだろうが、コトはそう簡単ではない。

隣り合わせた女性が近隣のママさんやホステスさんだったら、お寿司屋さんとのサービス業つながりで私に対しても営業モードを兼ねた頃合いの距離感で接してくれる。それなら気楽である。

ところが、この日の女性は夜の仕事関係者ではない様子で、寿司屋の大将いわく「男にフラれてイジケている」状態だとか。

狩人精神が旺盛なら一気にあれこれと策略を立てるべきなのだろうが、こういうパターンはかなり面倒である。

だいたい、銀座の寿司屋で一人で酒を飲んでいること自体が若い女性として不自然である。バカ高い値段の店ではないが、手軽な店でもない。

これが普通のバーや手軽な小料理さんだったら、私の脳ミソの動き方も違ったはずだ。あれこれ策略を立てただろう。

敷居の低くない寿司屋のカウンターで臆することなく一人酒をグイグイ楽しめる若い女性って何なんだろう。女性蔑視みたいな言い方になってしまうがTPOの面でヘンテコである。

そういうノリの女性だから、その後も遠慮なくこちらにバンバン話しかけてくる。想像通り面倒なパターンになってしまった。

私と大将の会話にも普通に参加してくる。こちらのペースに構わずお酌をしてくる。

相手がオッサンならヤンワリ制するのだが、妙齢の女性だとついつい甘やかしてしまう私にも問題はある。

いつのまにやら私の楽しい一人酒の時間は完全にその女性に乗っ取られてしまった。

聞くところによると海外暮らしが長かったらしい。「前へ前へ」的に自己主張する生活習慣が影響しているのか。私が得意?とする「空気を察しろ」的なオーラなど全然通用しない。

しまいには「日本人の男性としか付き合ったことがないんです」とか「素敵なお住まいなんでしょうね」とかチト怪しげな発言まで繰り出してくる。さすがに私の思い過ごしかもしれないが。

誤解のないように補足するが、私がモテたという意味ではない。こちらが二人連れとかだったらそういう事態にはならない。モテたのではなく、酔っ払いに絡まれたようなものである。

適度にシメに入ろうとしたら、あちらもシメモードに移行する。時間は夜の11時ぐらいである。一緒に店を出るとヤヤコしい話にならないとも限らない。いや、これも私の思い過ごしだろう。でも何となくメンドーだ。

握りをしっかり食べるつもりでいたのだが予定を変更して切り上げることにした。

「おなかいっぱいになったから御勘定してくれる?」

「じゃあ、私も御勘定してください」。

おいおい!って感じである。「じゃあ」って何だよ!?と思わずツッコミそうになる。

お店の大将がうまい具合に清算のタイミングを差配してくれたので、一足先に脱出する。当然、大将からは丁寧に詫びメールが来た。

でも、男って悲しい生き物である。被害者ヅラしてアーダコーダ書いたが、席に座って最初の5分ぐらいは少し心が浮き立った気分になったのも確かである。それが切ない。

隣に座った人が、おっとりとして控えめで言葉数も少なく、さりげない感じの女性だったら私は間違いなく有頂天になっただろうし、その人の分まで支払ったはずだ。おまけに一緒に店を出られるように様子をうかがっただろう。

そんなものである。

でも、そんな魅力的な女性が銀座の寿司屋のカウンターで堂々と一人酒を楽しんでいること自体が500万パーセントありえないことではある。

規模の小さな店やカウンター中心の店に行った場合、隣に座った人と交流することは少なくない。

ここで問われるのは距離感だろう。ズケズケと乱入?されちゃうと悲劇である。イキか野暮かと言えば間違いなく野暮天である。

最近、「相席居酒屋」という体の良いナンパスポットが人気みたいだ。どんどん増殖して欲しい。誰かと絡みたいひとはその手の店に行けば良い。

そういいながら「相席居酒屋」に行ってみたくてしょうがない私である。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

人との距離感って難しいですね〜。その女性は楽しかったんでしょう。海外暮らしが長かったのなら日本人の本音と建前がわからなかったのかな?きっと気が合う人だわって思われたんですね(^◇^;)

富豪記者 さんのコメント...

コメントありがとうございます!

確かに人との距離感ほど難しいものはないですよね。正解はないですし…。

気が合ってるようなふりが出来ちゃうのも時と場合によって良し悪しだと思いました。