某月某日、某所で夜の8時半から暇になる。結構空腹。界隈の土地勘がないので途方にくれる。
気分はチキンライス。なぜか無性にチキンライスが食べたかったのでネットで近隣の店を調べてみるが、ピンとくる店が無い。
ふと、ジャンクなチキンライスを食べさせる焼鳥屋を思い出す。で、わざわざ銀座に向かう。クラブがひしめく7丁目の雑居ビル1階にその店はある。
高級焼鳥屋ばかりのこの界隈では珍しく「ごく普通の焼鳥屋」である。それはそれで貴重だ。ウマくないけどマズくもない。
わざわざその店を選ぶ時は、飲んだ後のシメにチキンライスが食べたい時だった。
3~4年ぶりに入ってみた。運良くカウンターは私一人。夜9時の銀座にありがちな光景だ。
まったりしながら生ビール、生レモンサワーをグビグビ。適当にツマミを食べたあとにチキンライス登場。久しぶりの対面だから期待に胸を膨らませたが、出てきたのは私の記憶とは違う一品だった。
マズいわけではない。かなり美味しい。でも、私が以前ガツガツ食べていたのは、もっと量も多くてジャンクな雰囲気が漂うヤツだった。
全体にマイルドになってしまった印象だ。以前はいつ食べても攻撃的な量のコショウが投入されていてヒホヒホ言いながら食べていた。
どちらかといえば、この日のチキンライスが正しくて、以前のほうが邪道である。にもかかわらずジャンク・チキンライスを求めていた私としては何となく寂しい。
人間の味覚がいかに気まぐれでワガママなのかを思い知る。
で、夜も更けてきた銀座である。部活をサボるわけにもいかない。久しぶりの店に顔を出す。
チキンライスの話題から洋食文化の話、北朝鮮情勢から国家戦略特区の話などをワケ知り顔で語る。でも、気づけばワイ談に発展。毎度のことである。
自慢じゃないが、ワイ談の引き出しはいっぱいある。オレは結構モテるんだぞとホラをふいて過ごす。最近の武勇伝?をモチーフにエロの道を高尚な口ぶりで力説。
気づけば日付が変わりそうな時間になっていた。相変わらず「馬車がカボチャに変わっちゃうから帰ります」とオヤジギャグにもならない決まり文句を口にして退散。
夜風が気持ちよかったから少し離れたタクシー乗り場を目指して歩く。通り沿いの長崎ちゃんぽんの店が目に入る。
「皿うどんにソースかけて食いたい」。悪魔のささやきが脳裏をよぎる。自制心と悪魔がせめぎ合う。
しばし立ち止まって店頭のメニューを凝視していたら、知り合いのオネエサンに肩を叩かれる。オネエサンも帰り道だとか。
夜食を食べる暇があるなら一杯おごれと言われて、成り行きで近くのバーに向かう。皿うどんなら600円で済んだはずだか、気づけば高そうなバーである。ビミョーだ。
そうはいっても、マッカラン片手にオネエサンとしっぽり盛り上がる。ついさっきまでの店ではガハハハオヤジとして過ごしていたのに、今度は二枚目路線を演じてみる。コロっと豹変した自分のゲスぶりに我ながら呆れる。「あわよくば精神」丸出しである。
ムーディー?な雰囲気の中、オネエサンは最近失恋して寂しいなどとグチをこぼす。こういう時は同調するのが一番である。私もマネする。
この頃は忙しくて色恋から遠ざかっている。一人の夜は寂しい。そんな趣旨の話を遠い目をしながら語ってみる。なんともセコい?言動である。
まあ、ウソを綺麗につくことがこの街のルールみないなものである。そんな日もあっていい。
なんだかんだ言って、そんなコスっからい偽装までしちゃうのは男の本性である。ゲスだろうと何だろうと、まだまだ男として現役でいようという情熱を失ったら終わりである。
などと、結局、自分に都合の良い解釈をしちゃうところがゲスなのかもしれない。
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