つくづく野球が好きでよかった。WBCの東京ラウンドは日本が強かっただけでなく、多くの白熱した試合を見ることが出来て大満足である。
日韓戦にはシビれたし、台湾対韓国の熱戦はアジアの野球史に残る名勝負だった。オーストラリア対韓国の試合も絶対的不利の条件をギリギリでクリアした韓国の戦いぶりが見応えあった。
変な話、アメリカでの次のステージで日本が敗退したとしても充分に野球の面白さを堪能できた大会だったと言える。さすがに勝ち続けてほしいが一発勝負だけにここから先は時の運が明暗を左右するはずだ。
それにしてもネットフリックスの独占配信という形になった今回の大会はテレビ中継が無いために全国の高齢者が生で視聴できない。これって悲惨な事態だと思う。
日本人にとって野球といえば一種独特の存在だ。戦後復興の希望だったし、甲子園が今でも夏の一大行事として定着している。おまけに世界的規模で野球界の歴史的人物である大谷翔平という宝がその才能のピークを迎えている時期でもある。
私の母も日本が初戦を迎えたまさに当日に「新聞のテレビ欄を見てもどこで中継するか分からない」と連絡をしてきた。アチコチで似たような話を聞いた。
テレビ中継が無いことを知っていたのはネット配信という視聴形式を理解している人であって、そもそもそういう視聴概念を知らない高齢者は当日になるまで残酷な事態を知ることすらなかったわけだ。
人ごとながら物凄く気の毒だと思う。今回の大会は日本がドル箱だとふんだアメリカの運営側が150億円という放映権を設定、前回大会は20億ぐらいだったらしいから物凄くふっかけられたわけだ。
結果、NHKはじめ放送各社が手を出せない事態になった。月額料金がたいした金額じゃないからネットフリックスの契約をすれば済む話じゃないかとの声もある。ただ、そこが思った以上に高齢者にはハードルが高い。
NHKは国営放送みたいなものだからナゼ放映権を取らなかったんだ?という批判もある。心情的には理解できる。感情的には私もそう言いたい。そんな批判の声がもっと殺到するかと思ったが、日本人のおとなしさか、あきらめ精神のせいか、思ったほどそうした動きはない。
「そういう時代だから」という諦観で終わっているのが現状だろう。実際にそれも事実だ。ただ、そこで思考停止しちゃうのもちょっと悲しい。ネットが使えないのが悪い、時代についてこられないのが悪いと一刀両断しちゃうだけでは高齢者だらけの国としてはドライに過ぎるように思う。
ちなみに欧州各国などではそうした残酷な事態を回避するためにユニバーサルアクセス権というものが存在するそうだ。スポーツを一種の公共財として誰もが自由にアクセスできるよう有料放送による独占中継に一定の歯止めをかけている。
サッカーやラグビーのワールドカップやテニスのウィンブルドンなどが特別指定され、大半の国民が無料のテレビ中継を見られる仕組みが担保されている。高齢者ウンヌンというより貧困層対策の意味合いもあるのだろう。
野球のワールドカップと言われるWBCについては米国のメジャーリーグ機構がビミョーに恣意的な運営をしていることが指摘されている。そうした意味で欧州レベルでは特別指定される次元の行事ではないかもしれない。でも、野球を愛する日本人の国民性からすればそうした制度が設けられていること自体がうらやましく思う。
情報格差の犠牲になる階層を守ることはやはり政治の大きな課題だろう。ユニバーサルなんちゃらという制度を90年代には作っていた欧州の姿勢には学ぶ点があるはずだ。
すでにボクシングの世界戦などはネット配信の独壇場だ。大谷翔平レベルの偉人なのに高齢者の多くが井上尚弥の名前すら知らないのはそれも一因だろう。実にもったいない話だと思う。
止まらない時代の流れは今後も続く。WBCにとどまらずオリンピックやプロ野球、甲子園、はたまた大相撲中継など国民的行事ともいえるスポーツだって「無料で見られる」という今の常識が通用しなくなる日が近いかもしれない。
「優良コンテンツは有料」というダジャレみたいな現実も理解できるが、その一方で情報格差に苦労している人たちへのセーフティーネットのような仕組みを考え出す必要もあると思う。
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