2024年1月17日水曜日

絶賛します。「人探し」


すい臓問題がとりあえず落ち着いたようだ。一昨年暮れに見つかったデキモノが悪性腫瘍のリスクがあるということでアレコレ調査?を続けていたのだが、今年始めの超音波内視鏡検査でどうやら悪性のリスクはとりあえず低いという判断に至った。

 



 大きさにしてわずか4ミリのデキモノだが、すい臓の場合、他の部位とは異なりステージ1の癌でも5年生存率が50%程度という厄介な現実がある。さすがの私もちょっとは心配していた。

 

一昨年暮れにデキモノが見つかり、昨年前半に入院して生検を受けて一応良性との結果になったが、変化するリスクもあるとのことで3~4ヶ月ごとに超音波内視鏡で様子を見てきた。

 

で、今回の検査でサイズにも形状にも変化はなく単なる良性のデキモノと判断して大丈夫だろうとの専門医の判断が出た。一応、今後は半年に一度はチェックすることになったが、ひとまずは安心である。

 

平気な顔をして過ごしてきたが、この一年の間、心のどこかに「ひょっとしたらひょっとするぞ」という不安を抱えていた。このモヤモヤから解放されるのは素直に嬉しい。

 

まあ、いつかはどこかに癌が出来て順当に死んでいくわけだから、ほんの少しでもそんな事態への予行演習的な心理状態になれたのは悪いことではない。まだまだ悪あがきを続けて生きていこうと思う。

 

人生の後半戦ともなると、新たなライフイベントに遭遇することもなく大きな変化やチャレンジとも縁遠くなる。いわば何となく平々凡々に日々が過ぎていく。

 

若い頃には当たり前だった日常も歳を取ってくると決して当たり前という言葉で片付けられなくなる。毎日毎日が大事な時間の積み重ねだと実感できるようになってくるわけだ。

 

もちろん、そんなエラそうなことを言っても私自身、日々を悔いなく充実して過ごしているかといえばダメダメである。それはそれはテキトーである。きっといつの日か余命宣告を受ける際には今現在のテキトーな日々を振りかえって後悔しまくると思う。

 

でも、それもまた人生なんだと思う。

 

さてさて、そんな禅問答みたいな話はさておき、ここからが本題。最近感動した話を一つ書く。

 

小学校から高校までの同級生に若くして東大教授になった男がいる。仲良しだったのは小学校の時ぐらいでその後はまったく別な道を突き進んでいった秀才だ。大人になってからは何年か前にメールのやり取りをしたぐらいで付き合いはないのだが、折に触れて彼の活躍を誇らしく感じていた。

 

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2012/02/blog-post_06.html

 

https://fugoh-kisya.blogspot.com/2017/12/blog-post_11.html

 

バリバリの学者さんである彼がいつの間にか「ミステリー作家」という別の顔を持つまでに進化していた。そっち方面では歴史のある小説推理新人賞を受賞した。その作品が昨年暮れに出版されたので早速取り寄せて読んでみた。

 



「人探し」というタイトルの小説である。ミステリー小説というジャンルを普段まったく読まないのだが、旧友が作者であるということを差し引いても非常に面白かった。もっと言えばビックリするほど面白かった。

 

彼の本業は解剖学者である。パンダに隠された7本目の指があったのを世界で初めて見つけたような一種独特な分野で名を馳せている御仁である。年柄年中、動物園から遺体を引き取っては動物の身体の構造を徹底して研究してきた人だ。

 

ミステリー小説という舞台において、そんな研究の成果も“応用”されていた点が実に興味深かった。人間の歩き方の特徴をAIが解析する装置が物語のキモになっておりストーリー自体もハラハラドキドキの展開を見せる。

 

夢中になって物語の世界に入り込んだ。読み終わった感想は「いやはや参りました」という一言だ。「学者さん」に対して私が持つステレオタイプの印象が覆されるほどエンタメ性に秀でた作品だった。

 

それこそ映画化してもヒットしそうな話だと感じた。人づてに作者にそう伝えたものの、主人公の容貌設定が特殊だからなかなか難しいとの返答だった。そこを何とか大幅に割り切って映像化してほしいと思えるほどの作品だった。

 

とにもかくにも50代後半になって本業とはまったく別の小説の世界で新人賞を取って大のオトナを夢中にさせるミステリー作品を書いてしまう。そんな作者の天才ぶりに驚くとともに、そんな人物と幼い頃に同じ学校で同じ授業を受けていた我が身の凡なる現実がちょっと切なくなった。

 

いやいや、あちらが超絶的頭脳の持ち主なだけで、比べること自体が意味がない。そんなことよりせめてこの歳になってからのチャレンジ精神を大いに見習いたいと感じた次第である。

 

小説「人探し」、非常に読み応えのある傑作です。オススメです。





 

 

 

 

 

 

 

 

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