2010年4月26日月曜日

センチュリー

精華、神威、摩周、瑞雲。これが何を意味するかを知っている人は相当なマニアだろう。私自身、最近知った。

萌え系アニメのキャラクターにも聞こえるし、旅館の部屋の名前にも聞こえるが、この仰々しい名前はクルマのボディカラーのこと。

日本が誇る“スーパーカー”であるトヨタ・センチュリーの外装色の名称だ。なんか妙に力んだ感じが良い。

http://toyota.jp/century/index.html

ブリリアントシルバーとかドルフィンメタリックとかドイツ車の外装色の名称もお洒落だが、センチュリーは日本の工芸品だ。画数の多い重厚な漢字で色を表現するという発想はアリだろう。

あえて“スーパーカー”と表現したが、何十年変わらない不変のデザイン、専用のV12気筒エンジン、専門の職人が手仕上げする造作などを考えるとやはり普通ではない。

個人的にはちっとも欲しくない。どんなに素晴らしいエンジンだろうと、自分で乗り回すような感じではない。

ドライブという楽しげな言葉が最も似合わないクルマとも言える。高級車なのに見せびらかしたりしたくなる感じとも無縁だ。

なんだか誉めてるんだかケナしてるんだか分からなくなってきた。

純粋に誉めるために書き始めた。というか、センチュリーがある国の格好良さ、日本の矜持みたいなものへの共感だ。

一説によると高度なテクノロジーが投入されたエンジンをセンチュリー専用にしていること自体が、日本のプライドだとか。

レクサスなど海外マーケット向けのクルマに安易にこのエンジン載せない理由は、「アイツラにこんなスゲエエンジンを味合わせるこたあねえよ」といった意識があるんだとか。

本当だったらなかなか面白い。

純国産で完全に国内だけを意識しているから、車内のスイッチ類も表示は日本語ばかり。室内スペースも日本人の体型を意識して、あえてだだっ広くしていないらしい。

日本的という意味では、あの突出しない感じも特筆モノ。誰が見ても存在感は感じる。かといって目立つわけでもなく、同じクルマがアチラコチラで走っている。

ロースロイスやフルサイズアメ車のようなこれみよがしな押し出し感は皆無だ。道行く人が振り返って注目することもない。

「VIPが乗っていそうな大型高級車」というカテゴリーにおいて、ちっとも目立たないという現実は、ある意味日本人が昔から大事にしてきた美意識であり、見方を変えれば「粋」な世界を体現しているように思える。

わが社にもセンチュリーがあって、私もたまに利用する。外から見た印象ほど後部座席が広々という感じではない。

特徴的なのは座面の高さ。長時間乗っていると落ち着かない感じが強まる。変な話、くつろげない。凡人をくつろがせるような設計思想はこのクルマにはないのかもしれない。

ちゃんと座ってないといけない感じ。ふんぞり返って休息するのではなく、移動中もしっかり仕事だけを考えなさいといった雰囲気が漂う。

ある意味、極めて日本的だ。居ずまいを正す窮屈な茶室のような感覚なんだろうか。

考えてみれば、座面の高さは「やんごとなき方々」の需要を考えれば必然なんだろう。ぴしっとした姿勢で外に向かって会釈するにはあの座面と窓サイズの関係に意味があるのだろう。

センチュリーに乗せられて、ホゲホゲとくつろげる人は、きっとホンモノのVIPなんだろう。私にはくつろげない。あの空間でくつろげるような人間にならないといけないと改めて思う。

まあ、そんな特殊なクルマが作り続けられているのだから、やはり日本は風流な国だ。

2 件のコメント:

Tommy さんのコメント...

かねてから同じことを感じていました。
受け売りですがセンチュリーの木目パネル、「屏風継ぎ」という非常に手間のかかった仕上げらしいです。
内外装全て熟練職人による手造り。いいですねぇ…

富豪記者 さんのコメント...

Tommyさま

高級感といってもゴテゴテさせないあたりは、
日本的な品格なんでしょう。

ああいうクルマにはそれなりの存在理由があるんでしょう。