2024年9月13日金曜日

宇能鴻一郎先生


宇能鴻一郎さんが亡くなった。90歳だったそうだ。言わずとしれた官能小説の大家だ。私が若い頃、富島健夫、 川上宗薫と並んでそっちの世界における三大巨匠だった。いや、やはり宇能鴻一郎大先生が抜きん出ていたような気もする。「宇能鴻一郎」という漢字5文字を見るだけで下半身がムズムズした。

https://news.yahoo.co.jp/articles/888f34f1a430042f45ceb1d5806bdbc5f6eec281

 

インターネットなど無い時代、若者がエロを学ぶ教科書は主に男性誌であり、一般の週刊誌や夕刊紙がそれを補足するような感じだった。過激なグラビアには興奮したが、学ぶという点では官能小説に頼った。随分とお世話になった気がする。

 

「あたし、〇〇なんです」といった女性一人称を使った宇能鴻一郎先生の作品は多くの青少年をトリコにした。野球少年が大谷翔平を夢の存在と捉えるのと同様に我々は宇能鴻一郎作品の中に夢を見た。

 

メディアの訃報記事によると先生が官能小説の世界にカジを切ったのは70年代からだという。その後、世の中は経済成長からの浮かれモードに入っていく時代だ。宇能鴻一郎作品は当たりに当たった。右を見ても左を見ても先生の連載小説だらけ。

 

簡潔明瞭、ワクワクする展開、連載という一話が短い世界でも必ず毎度盛り上がる描写が盛り込まれていた。女性一人称という異次元な感じにも興奮した。スケベなのは男ばかりだと考えていた少年の私に新たな女性像を教えてくれた。

 

その後、レンタルビデオが大流行する時代になり活字から動画にエロの教科書は変わっていった。それでもエロ動画の世界で一般的な「女性一人称モノ」はあくまで宇能鴻一郎作品が源流だ。

 


 

たまたま最近、大先生の初期の傑作短編集を読んだので訃報に殊更感じ入った。メディアの扱いが大き目だったことからも一時代を築いた傑物だったことが分かる。元は純文学の人で以外に知られていないが芥川賞作家でもある。

 

芥川賞を受賞した「鯨神」という作品も私が読んだ短編集に収められていた。官能小説のかけらもない江戸時代の捕鯨をめぐる壮大な人間模様が描かれている。60年以上も前の作品だが、情景描写が凄まじく細かく臨場感たっぷりのまさに手に汗握る小説だった。

 

奇しくも「情景描写が凄まじく細かく、臨場感たっぷりの~」と紹介したが、その後の官能小説もいうなればそんな能力が遺憾なく発揮されたのだろう。そりゃあ高校生ぐらいだった私の下半身が暴れるのも当然だ。

 

短編集の表題作である「姫君を食った話」もすこぶる面白かった。官能小説とはちょっと違うが、フェチ的な要素も盛り込まれている。高貴な姫君を守り抜こうとした護衛の侍をめぐる切なくも哀しい歴史物語がベースだ。

 

新宿あたりのもつ焼きで隣り合った謎の僧侶とのやり取りが大昔の姫君と侍の悲恋と交錯する。もつ焼きの解体処理や新鮮な臓物の食感や味わいも物語のキモになる。一種独特の読後感に包まれる名作だ。

 

宇能鴻一郎作品は、アダルトビデオが普及する前のポルノ映画でも存在感を発揮した。「宇能鴻一郎の濡れて立つ」「宇能鴻一郎のむちむちぷりん」などタイトルすべてが「宇能鴻一郎の~」という冠付きだった。


あの冠は一種のお墨付きだった。JISマーク、いや、モンドセレクション金賞、いや、カーオブザイヤー受賞みたいにそれが頭についてれば間違いないみたいな印象を観る側に与えた。例えは不謹慎だが「宮内庁御用達」ぐらいの信頼感につながっていた。

 

私が宇能鴻一郎作品を初めて読んだのはいつだっただろう。おそらく小学校高学年か中学の始め頃だろう。自宅においてあった週刊誌の連載を覗き読みしたのが最初だと思う。間違いなく45年以上も前のことだ。

 

その後、半世紀近くにわたってエロいことばかり考えて生きてきた。大人になってからは宇能先生に続く第二の師匠である全裸家督・村西とおる先生にも影響も受けた。思春期からウン十年、いろえろと変なことに熱中してトライアンドエラーの日々を過ごしてきた。


そしていま、エロの道を語らせたら人後に落ちぬほどのスケベオヤジになった。「西郷どん」の訛り発音である「せごどん」をモジって「性豪どん」などと私を評する友人もいるぐらいのところまで辿り着いた。

 

気づけば宇能大先生が描写していたようなムホムホな場面や行為、はたまたそれを超越したようなヘンテコなことも経験するまでになった。タイムスリップが可能なら全盛期の宇能大先生の元に駆けつけ数多くのネタを提供できるぐらいに成長?したと思う。

 

すべては宇能鴻一郎先生のおかげである。私に痴的好奇心の奥深さを教えてくれた原点の人である。あちらの世界に行っても男性陣に夢を与えてほしい。

 

 

 

 

 

 

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